【書き起こし】ニコニコ生激論『民主主義2.1(夏)~代議制の拡張可能性について~』その1

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【書き起こし】ニコニコ生激論『民主主義2.1(夏)~代議制の拡張可能性について~』その1

カテゴリー: ニコニコ生放送

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2010年5月22日にニコニコ生放送で行われた「朝までニコニコ生激論」を書き起こしました。

朝までニコニコ生激論「民主主義2.1(夏)~代議制の拡張可能性について~」

●番組概要
【番組名】「朝までニコニコ生激論」テーマ『民主主義2.1(夏)~代議制の拡張可能性について~』
【日時】5月21日(金)24時00分~

【出演者】※敬称略
司会:
東浩紀(批評家/東京工業大学世界文明センター特任教授)

パネラー:
猪瀬直樹(作家、東京都副知事)
鈴木寛(文部科学副大臣、参議院議員)
吉田徹(政治学者、北大法学研究科准教授)
堀江貴文(株式会社ライブドア元代表取締役CEO)
津田大介(メディアジャーナリスト)
鈴木健(東京大学特任研究員<情報科学>、ウェブ学会準備委員会委員)
濱野智史(ネット研究者、日本技芸リサーチャー、『アーキテクチャの生態系』著者)

このニコ生がニコニコ動画に4分割してアップされており、ここではそれを書き起こしています。動画(1本約56分)ごとにエントリーを分割しています。

●動画はこちら
朝までニコニコ生激論 「民主主義 2.1 (夏)」 1/4

●目次
ニコニコ生激論『民主主義2.1(夏)~代議制の拡張可能性について~』その1(ここ)
ニコニコ生激論『民主主義2.1(夏)~代議制の拡張可能性について~』その2
ニコニコ生激論『民主主義2.1(夏)~代議制の拡張可能性について~』その3

聞き間違い、わからなかったところ等ありますがご容赦ください。

東:
こんにちは。東浩紀です。朝までニコニコ生激論第2回「民主主義2.1(夏)~代議制の拡張可能性について~」というヘンテコな討議を、これから始めたいと思います。
前回のこの討論会はベーシック・インカムを題材にしてやっていまして、今はUstreamとかニコニコ動画とかで、無数の討論会がいっぱい出てきているわけですが、この討論会としては、その中で差別化も図るべく、一見すごく抽象的でなかなか実現不可能のように見えるんだけれども、その実、僕たちの現実とか政治と深く関係しているようなことについて、その実現可能性は取りあえず横に置いておいて、一種空理空論を、けれども現実とのつながりを意識しながらしよう、という趣旨の討論会です。

今回は、今度の参院選からネット選挙が部分的に解禁になることも踏まえながら、ネットを使って、新しい民主主義、新しい代議制ってどういうふうに実現できるだろうかってことを一つ軸としながら、また他方で、アメリカで最近話題に、それこそバズワードになっているガバメント2.0(政府2.0)みたいな話、あとはオープンガバメントの議論などもまた織り込みつつ、ネットを使って僕たちの社会をどうやって運用していくのかっていうことについて議論したいと思います。

何で今回こういうことを発案したかっていうことの背景に、実はこの企画自体はそれよりも前にあったんですが、この4月に僕は朝日新聞の論壇時評をやることになりました。朝日新聞の論壇時評というのは論壇合評会というのがあって、何人もの識者を交えて、今月の論壇者の中でどれが注目論文かということを、3時間4時間で議論するという会があるんです。

僕はそういう場に参加したのは初めてだったので、1回目だったので、当然4月の『文藝春秋』とかを見ると、新党ブームですから、「たちあがれ日本」をはじめとしてさまざまな党が、いろんなマニフェストを出しているわけです。マニフェストというか宣言を出している。それを結構読み込んでいって、当然4月はまず新党の話を取り上げなきゃいけないのかなと思って行ったら、新党の「し」の字も出ないで会議が終わってしまった。これは深刻な話だと思ってですね。

つまり、一見新党ブームがある。何かこう、どんどん自民党が崩壊し始めている、新しい政党が出てきたというので、テレビや新聞は沸いているんですが、マスコミの中核の中核、朝日新聞の論壇合評会で、みんな新党についてもうしらけちゃってる。これは、政治不信といってもかなり深刻なところまで来ている。今度参院選もありますが、投票率がどうなるか、僕には全然分からないですけど、去年のあの秋、政権交代で見せた国民的熱狂っていうのは、いつの間にかかなり冷めてしまっていて、しかもそれは、民主党とか自民党っていう党への信頼が落ちたってことだけじゃなくて、何かもう「選挙とかって駄目なんじゃないか」みたいなところまで行っちゃってるのかな、というような気もしたんです。

そういう状況だっていうことを前提として、今日は、もう1回新しく政治に対する信頼、もっと広く、自分たちで自分たちを統治するって一体何か、ということにまで話を広げてできたらなと思っております。
じゃあ、早速パネラーの紹介です。運営さん、よろしくお願いします。

運営:
はい。それでは、本日お越しいただいているパネラーの方々をご紹介したいと思います。作家、東京都副知事、猪瀬直樹さん。

猪瀬:
よろしく。どうも。

運営:
続きまして、東京大学特任研究員、鈴木健(すずき・けん)さん。

鈴木健:
よろしくお願いします。

運営:
メディアジャーナリスト、津田大介さん。

津田:
よろしくお願いします。

運営:
文部科学副大臣、参議院議員、鈴木寛(すずき・かん)さん。

鈴木寛:
よろしくお願いします。

運営:
政治学者、北大法学研究科准教授の吉田徹さん。

吉田:
よろしくお願いします。

運営:
株式会社ライブドア元代表取締役CEO、堀江貴文さん。

堀江:
よろしくお願いします。

運営:
ネット研究者、日本技芸リサーチャーの濱野智史さん。

濱野:
よろしくお願いします。

東:
というわけでパネラーの紹介も終わり、早速議論をゆるゆると始めていきたいんですが。もしかして、ご覧になっている方はご存じかもしれませんが、僕はこのところあんまり寝ていない状態で、今日はいつもに比べて司会のパフォーマンスが落ちているかもしれませんが、少しご容赦ください。頑張ります。

これから3時間頑張っていきたいところなんですが、まず、最初にガツンと鈴木健さんのほうから、非常にある種抽象的で実験的な政治の在り方について、ハンガリーとスウェーデンの事例を引きながらレクチャーしていただきますので、それを受けて、みんなで討論をスタートしたいと思います。じゃあ鈴木健さん、よろしくお願いします。

鈴木健:
じゃあ、パワーポイントを出していただけますか。
今日は最初に、政党というものがネットの力で変わっちゃうんじゃないかというお話を、実際に世界に直接民主主義を実現した政党がいくつかあって、その動向を紹介しながら、最もラディカルに政党を否定している姿なんですけども、これを紹介しながら、皆さんの議論のたたき台になったらいいなと思っています。
次のページお願いします。
このグラフは、過去の……

東:
ちょっと見にくいですね。

鈴木健:
一番上の青いグラフを見ていただきたいんですけど。一番上の青い線が、過去の無党派層の支持率の推移なんですけど。大体1970年代とかは30%前後なんですけども、90年代からだんだん上がってきて。

猪瀬:
薄い青か?

鈴木健:
そうですね。薄い青です。一番上のやつです。

猪瀬:
表を見てるときに字なんか書いてちゃ駄目だよ、みんな。落ち着いて見る癖がないと駄目だよな。すぐ書き込みをしようとするからね。

――(不明):
いや。そういうもんだと思います。

――:
これ、そういうもの?

――:
そういうものなんです、これは。

東:
それを言うと、みんな喜んでどんどん書き込むので、この際もうとにかく。

――:
じゃあ、無視して。

東:
あ、これヤバい。

――:
余計見にくくなってる。

猪瀬:
水色の線が大事だってことだろ? 取りあえずな。

鈴木健:
水色の線なんですけども、2003年で57%。2006年は46%まで下がっているんですけども、今年の3月のデータだと、もう既に55%にまた戻ってしまっています。つまり、日本人の半分以上の方は、もう支持政党を持っていないというのが、かなり定着している。

猪瀬:
その濃いブルーの線は何だ?

鈴木健:
濃いブルーの線は、自民党の支持率です。

猪瀬:
その境目の、ぐっと入れ替わったところは何年ですか。

鈴木健:
88年ですね。冷戦終了した直後の。

猪瀬:
その辺だな。

鈴木健:
こういうふうに支持政党を持たない人たちが増えているわけでして、これは政治不信の一つの形だと思うんです。そういう中で、インターネットで政治が変わるんじゃないかという淡い期待が、最近ネットユーザーの中では出てきているわけです。

一つはツイッターと政治ということで、ツイッター議員がたくさん出てきて、直接政治家と市民がコミュニケーションを取ったりということが始まっている。
それから、ツイッターが使えるかどうかはちょっと課題なんですけども、7月参議院選挙でネット選挙が解禁される。こういった動きを受けて、ネットの力で政治が変わるんじゃないかって淡い期待が、少しずつ少しずつ芽生えている。
そこで、より本質的な意味で、ネットの力で政治が変わらないかということを、今日は考えたいと思います。

世界の動向として出てきている一つのバズワードが、オープン・ガバメント、もしくはガバメント2.0というキーワードです。アメリカではオバマが政権を取って、政府の在り方自体をITやネットの力を使って変えていこうという動きが出てきています。

この画面に出ているのが、ガバメント2.0エキスポといって、津田さんが来週行くらしいんですが、Web2.0を提唱したティム・オライリーが主催しているカンファレンスで、シリコンバレーではなくてワシントンで行われるわけです。
実際このカンファレンスだけじゃなくて、ワシントンに行くとほぼ毎日のように、オープン・ガバメント関係のカンファレンスやワークショップが開かれている状況に、アメリカではなっています。

具体的にどういうことをやろうとしているかっていうと、政府の情報を徹底的に公開してしまう。例えばお金の流れであるとか、そういうことも徹底的に公開してしまう。
それだけじゃなくて、国民が政治的な意思決定をするときに関与していく、というようなことをコミュニケーションしていって、政策に直接意見を言ったりとかアイディアを言ったりとか参加が出来るような民主主義。
それからそれだけじゃなくて、ティム・オライリーなんか言っているのは、もっとラディカルに政府というのは単にプラットフォームになれば良い、つまり政府が政策を行うのではなくて、民間の市民とか企業が政策を実際に行うときにそれをサポートするのが政府なんだ。政府というのは単なるそういうプラットフォームになれば良い、具体的な政策はやる必要なんか無いんだというところまで議論が言っているわけです。

で、一方でこれは行政の話なんですけども、選挙の話でも非常にラディカルな動きがいくつか出ていて、ひとつはハンガリーにインターネット民主党という政党があるんですね。これは去年の年末にスラッシュドットで取り上げられて日本でも結構話題になったのですが、2004年に作られた直接民主主義を実現する政党なんですね。これ政党なんですけども、特定の政策を持たないんです。
で、じゃ何をやるかというと国会で10議席の獲得を目標としています。その獲得した議席をネットで市民が直接投票して、その結果の通りに国会で投票を配分する。
例えば、例で言うとネット投票で賛成が60%、反対が40%だったとすると、6票と4票にそれぞれ賛成と反対を実際の議会で投票することを目指しています。だから議員自体は、まったく政策的意見を持つ必要が無いわけで、まぁなんというか媒介人という形で関わると、だから3ヶ月交代で議員をやってしまおうというアイディアです。
ただ、この政党はですね、言っているだけでまだ議席を獲得していません。設立自体は2004年なんですけども。

ところがですね、色々調べたんですけども、Demoex(デモエックス)というスウェーデンの地方政党があるんですね、これは実際に議席を獲得しているんですね。結党は2002年なんですけども、これはストックホルム。スウェーデンの首都・ストックホルムの郊外にVallentuna(バレントゥナ)という街があって、そこで1議席を獲得しています。バレントゥナに住む16歳以上の住民がネットを通じて投票することが出来ます。
で、議論はスウェーデン語が使えれば世界中の人が参加できるので、僕もユーザーアカウントを持っているんですけども、スウェーデン語は使えないんですけども、どういう風なシステムになっているかというと、まずどういうことを議論するか絞り込むプロセスがあって、その後にそれに対して実践、ディスカッションを市民の中で行う、最後にその投票というのを行うんですけども、その投票は実際の議会の1日前に行うんですね。で、そこで前日で決まった結果の過半数を超えたほうを議会で投票するということをやっています。これが実際の画面なんですけども、こんな感じで、ちょっとスウェーデン語でわかりにくいんですけども、なんかアジェンダがあって、それに対してYESとNOが選べるという、ディスカッションをしている、という感じのウェブサイトになってます。

この次のページなんですけども、Demoexの歴史なんですけども、これ始まりは面白くて、2000年に、今から10年前に、とある高校で地方自治体が、“ITと民主主義”というテーマでイベントをやったんですね。そこで生徒の間で議論が沸騰してしまって、哲学の先生の助けもあって、一部の学生が結党を決意してですね、大学生になっちゃったんですけども、90年代前半から同様の動きをやろうとしていた人に相談してソフトを提供してもらって、実際にはじめたと。今のシステムはそれを使っていなくて、drupalというオープンソースのCMSをベースに作っているんですけども、当時は19歳の大学生で2002年の地方選挙で1.7%、まぁ、261票なんですけど、それで当選しました。2006年でも再選されて2.9%、ちょっとずつ増えています。
バレントゥナというのは2万人くらいの小さな街で、ちょっと僕、スウェーデン人の知り合いに話しを聞いたんですけどもスウェーデンのそういう小さい街とかは、基本的に町議会の議員とかもう報酬は無報酬でボランティアでやっているような、そういう感じの雰囲気です。全部で41議席あるんですけどもそのうちの1議席を持っているというふうな形になっています。哲学的には、もう哲学の先生がサポートしているんですけども、ポパーの「開かれた社会」に準拠してやっています。

このDemoexとか今のインターネット民主党以外にも世界には、直接民主主義を実現しようという政党がいくつかあります。ちょっと見にくいんですけども、チェコスロバキアとかフィンランドとか、スウェーデンには国政レベルでトライしている政党が一個あって、イギリスにも5つ、ニュージーランドにも1個あると。ということがわかっています。
日本にもですね、最近、年末くらいから動きがあってですね、インターネット民主党のニュースが流れてから、いま二つくらいのグループが、実際に結党しようとして動き始めています。ひとつはDemoexとかインターネット民主党ともコンタクトを取り始めているようです。

次のページなんですけども、これ日本で実現するとしたら、とちょっと仮定なんですけども例えば地方議会で定員数が多い52議席ある世田谷区議会を考えると有権者数は68万人いるんですけど、3192票で当選出来るわけですね、ま、だいたい有権者の0.5%以下。それから投票者数の10%くらいのちょっとの投票で当選することができます。国会なら、参議院選挙の比例区が一番可能性が高いと思うんですけども、これですと2006年の参院選のデータだと107万票獲得すれば1議席取ることができる、ということになっています。
多分どっかの小さな区議会とかで、町議会でやるのがたぶん一番最初は早いのかもしれませんけども、国レベルでも、多分ここにいる人たちのツイッターのフォロワー集めるだけで半分くらいいくんじゃないかと(笑)

津田:
民主党とか自民党とかどっかの政党に所属して全国比例区出ると20~30万票くらいとれば議席は取れるという話。自分でやるとなると100万票くらい必要ということですか?

鈴木健:
そうですね。これは比例区の部分だけなので、ドント式でわけるときのミニマムの一番最後に入ってくる人の投票(数)がそれくらいだったということです。
実際に実現したとしてどんなことが想定されるのか、ちょっと考えてみたんですけども、ひとつは国民の声が直接議会で投票に反映されるというのはひとつ大きいですよね。

二つ目がですね、これ次のページ出してもらえますか?
議会という場で投票という形で意思が反映されるわけですね。実際に議員さんが国会なり町議会なりに行って一票を投じるということは間違いなくリアルにその場に居るわけですから議員さんに影響を与えられないわけが無い。
国民の意思、市民の意思はこうなんだということが議会の場で繁栄されるので、他の政党が無視できなくなる間接的効果もあるだろう。
それから今起きているような国民の政治への閉塞感がいったんは少なくとも緩和されて、参加意識が芽生えるようになる可能性があるだろう。
それからですね、もしもですね、これが一票とか一議席だけじゃなくて結構な議席を稼ぐと恐らく既存政党と連立を組みようがないわけですよね、政策的な意見がないわけだから、政権取りようが無いわけですよ。ですから不安定化する。ハングパーラメント(注:どの政党も議席の過半数をとれない状況)になってしまうわけですよね。もしくはそれ以外の政党で大連立組むしかなくなってしまう。

そういうふうな効果があるかと思うのですが、そもそも民主主義、直接民主主義って、ちょっと次のページを出して欲しいんですけども、直接民主主義って色んな問題があるといわれていて、具体的にはまず1つは実施コストが高いわけですね。1億人が一箇所の場所に集めて投票するなんてあり得ないわけですよね。どっかの広場に集まっても100万人くらいしか集まらないですよね。1億人集まって投票するなんてムリだと。
それを例えば集まらなくてもバラバラの場所で投票してもコストが高すぎるわけです。
ところが、これに関してだけはインターネットを使えばものすごくローコストで出来ると、解消済みだ、というわけなんですけども。

そもそも直接民主制というものが批判されている、問題があると思われている、他の問題はどうなんだ。例えば市民の無関心。実際直接投票できるんだけれども、ものすごく投票率が低い。例えば0.1%しか投票しない。これって民意を反映していることになっているのかというような話。
それから、直接民主主義が本当に実現しちゃって、たくさんの議席をこの政党が取ったら政治的な決断が下せない。みんな議論ばっかりして結論が出なくなっちゃう。
結論が出たのだけれども、その出た結論が必ずしも良くないということが起こる可能性もある。
結論が出た。良い結論だった。ところが実際にそれを最後まで責任を持ってやろうとする人がいなかったりするので、実際に行政に落ちてオペレーションするときにやろうと思ったことが実現できない。つまり政策実行がされない、というふうな問題というのが起こるだろう。
それからポピュリズムの危険性というのが当然指摘されることですし、それから直接民主制だと大多数の人の意見が反映されるので今よりもマイノリティの意見が保護されづらくなるのではないか、という話。
それから直接民主制だと4年に一回投票すればいいのではなくて毎日投票しなきゃいけないわけですよね。今、国会議員のかたもいらっしゃいますけども、忙しい。とにかく毎日毎日議案に対して投票するというのは、とても調べたり勉強したり投票するのは大変だ、と。だから時間を持っている人が有利でそういう人の意見が反映されやすい。よっぽどのお金持ちかすごいいいとこか、そういう人の意見が反映されやすくなるんじゃないか、と考えられる。

こういう問題というのはネットを使って解決するかというのはまだわかっていない。この辺の問題なんかをひとつのたたき台として皆さんに議論していただければいいかな、というふうに思います。

東:
はい。どうもありがとうございます。どこから話をはじめようかなと思うんですが、今の話を聞いて吉田さんどうですか?
その前に吉田さんをユーザーのかたに紹介したいんですが、吉田さん「二大政党制批判論」(正式書名『二大政党制批判論 もうひとつのデモクラシーへ 』光文社新書 )というので、まさに今の二大政党制というのが、ちょうど、これが新書が出たときが政権交代の直後くらいでしたっけ?

吉田:
直後ですね。

東:
で、それで、二大政党制ということで、ようやく日本でも本格的な民主主義が始まったといわれていたんだけど、「そんなことは全然ないぞ」と。
むしろ二大政党制だというと、ここで言われているのは例えばコンビニがなんで隣にあるかという話で、二つ競合しているコンビニがバラバラのところに立地するか、というとそんなことしない。結局同じところに立地する。
それと同じように二大政党制というのは、結局みんな同じ政策をするようになる、同じような政策を提案するようになるだけの話で、実は多様性が失われていくんだ。もっと別の形の民主主義がありうるんじゃないか、という話をされていて、その話とつなげる形で例えば今のような提案をどう思われるのかな、とお話いただければな、と思います。

吉田:
その二大政党制の話をしていきたいと思うのですが、その前に、いま鈴木さんの説明でひとつすごく素朴な疑問があるんですが、なぜ直接民主制をめざす政党が、議会に議員を送ろうとしているかと。それって定義上反するわけですよね。

鈴木健:
そうですよね。だからまあ、ある種トリックというか、つまりその政党とかっていうのを、実は否定しているわけですよね、存在理由を。

吉田:
はい。なぜ政党をつくるか、ですよね。

鈴木健:
だからそれは、自覚的にやっているんです。

吉田:
はい。

鈴木健:
だから、今の、憲法改正するっていうのはまあ無理じゃないですか。簡単にはいかないですよね。その中で部分的に直接市民制を実現できないか、というひとつの手段として、政党っていう抜け穴っていうか、それを使っているという、そいういうことです。

吉田:
目標は直接民主制にあると、そのための手段という訳ですね。

鈴木健:
そうです。

吉田:
わかりました。まあ、後でその話を、あの出来れば続けたいのですが、単純にですね、二大政党制の問題というのをこれ図で示しましたけれども、基本的に有権者っていうのがですね、その、あっ、マジック下さい。
(示した図の線色が薄く画面で確認できない)逆?こうですか?

――:
いやー見えないでしょう。太いペンか何か

吉田:
太い赤ペンを。
要はですね、有権者っていうのはものすごく極端に右寄りな人とか、極端に左寄りな有権者っていうのは居ないんですよね、あの、世論調査を実際見てみるとですね、右つまり保守、それから左、革新の間で「あなたはどこら辺にご自身を位置づけられてますか」という世論調査やると、大体みんな「真ん中です」っていう風にですね、1から5のスケールでいうと、大体2から3くらいなんですよ、皆大体。つまり皆基本的には、中庸な考え方をしている。これが基本的に、有権者のですね、配置になってるんです。分布。これだと映りますかね。映りますね。
この下が、下がこれが有権者の分布だと思ってください。そうするとこれが、問題は選挙制度ということと関係して来るんですが、基本的に小選挙区、つまり、ひとつの選挙区でひとりしか通らない様なですね、こう選挙制度を採っているいると、政党はどういう風に行動するかというと、真ん中寄ってくるんですね。真ん中寄ってくる。つまり、そこが一番、層が厚いわけですね、有権者の層が一番厚いので。

猪瀬:
15年くらい前にその話してくれたら良かったんだよね(笑)。

吉田:
いやだから、これは、90年代のですね、政治改革の時に小選挙区制を導入して、それで、派閥を無くしてですね、で、そうすればまあ、政治は良くなるんだと散々こう喧伝された訳ですね。
「そんな簡単な話では無いだろう」と私は思って、政権交替する以前からですね、そういうことをずっと言っていた訳ですけれども、こうするとつまりですね、選挙に勝つためにはですね、真ん中のこれ、中位投票者っていうんですけれども、真ん中に居る有権者を中位投票者という風にいうんですけれども、そこからの支持を得なければ、まあ選挙では、勝てない。そうすると、まあ右の政党であろうが、例えば自民党であろうが、民主党の、仮に左の政党だとして、左の政党であろうが、真ん中に寄って来るんですね。お互い真ん中に寄って来ることによってしか、勝てないっていうことですね。
そうすると、逆説的にどういうことになるか。これは、政策で論争をして、選挙で戦う事がない。むしろ、相手がですね、失敗するスキャンダルであるとか、あるいは、郵政民営化であるとか、あるいは政権交代といった、こうスローガンをアピールすることで、それが流通して、そして、それによって皆有権者は、一票を投じるという、そういう状況になる。これが、現下の二大政党制の一番の問題になって、

東:
これ、ひとつ質問なんですけれど、そういうタイプの議論っていうのは、政治学の領域においては、結構スタンダードな議論としてあるわけですか、もう。

吉田:
教科書には必ず載ってますね。これあの、中位投票者理論っていう、ダウンズっていう、もともと先程、いま東さんおっしゃったように経済学、まあ産業集積とかですね、そういうところのホテリングという人が言い始めたことで。
政治学の議論はそっからこう話を借りてきて、政策的位置においての政党は、似たような、先程のコンビニと似たような行動を採るんだ、っていうようなことを。

東:
逆にね、もしそれが政治学においてスタンダードな議論なんだとしたら、その昨年の、まあその政権交代に至るまでとにかく「二大政党制は善なんだ」というかですね、「二大政党制こそが民主主義の成熟の形なんだ」という話が、ここまで流布してたのは、一体何故なんですか、逆に。

吉田:
何故ですかね、僕は、それは今までの自民党政治に対する単なる反動でしかなかったと思うんですね。
自民党政治がどうだったのかというと、いや派閥が居るでしょ、派閥のドンが居るでしょ、族議員がいるでしょと。なぜ彼らが生まれて、そいういう族議員が生まれるのか、あるいはそこで、汚職という物が生じるのか。それは中選挙区が悪いんだという議論になっていったんですね。

東:
うん。

吉田:
つまり当時良く言われたのは、その選挙区の中で3割の得票さえあれば議席が取れちゃうと、いう風に言われた、喧伝されたんですよね。そこで、汚職で捕まった議員でも、当選すれば「ミソギが終わった」と言われて、そのまんま議席を維持し続けると。
これをなんとかしなきゃあいけないという議論が93年の細川内閣の時ですけれども、あるいはその前に、宮沢さんがですね「いや選挙・政治改革やるんです」って言って結局出来ずに辞任に追い込まれる訳ですけれども、あと細川政権になって、そして選挙制度改革が実現するわけですよね。
そうすれば「クリーンになる」という風にいわれたわけですよね。それは、中選挙区を無くせば、小選挙区制を基本的にベースとするような選挙制度にすれば、クリーンな政治になるんだと、いう風にいわれた訳ですけれども、まあ実際そうではなかった。

東:
今国民感情みたいなものは、政権交代した事によってまあ、自民党じゃ無くなったし、まあじゃあ今その吉田さんの分析ではようやく日本人は、その、二大政党制の夢から覚めたといった所なんですかね。

吉田:
うんうん、そうですね、実際世論調査をやると有権者は、大体6割から7割の有権者がですね、「自民党と民主党に違いはない」と。

東:
うん。

吉田:
実はこの答えは、こないだの選挙の前にやった世論調査で出てるんですよ。ということはどういうことか。有権者は決して民主党の政策が良いと思って投票したわけではない訳ですね。やはり聞いてみると、これは選挙前に聞いてみると、例えば子供手当であるとかあるいは高速道路無料化であるとか、そういった政策を「支持します」と言った有権者も、これ2割から3割くらいしかいない訳ですね。じゃあ何故民主党に政権が預けられたか。それは今までの自民党が嫌だ、とりあえず替えてみましょう、という程度の、実は期待感だったんではないかという。

猪瀬:
だから政権交代してみてから、「吉田さんの言っていることは成程正しい」っていう風に実感がある訳で、政権交代の前だったら、「まあそんな事言ってるけどなあ」っていう風には思ったかも知れないね。

吉田:
そうでしょうね、そうでしょうね。

東:
今日は本当は、「文部科学副大臣」鈴木寛ではなく、「情報社会の研究者」鈴木寛をお呼びしたという話にはなっているんですが、しかし今のような話が振られて、鈴木寛氏に話を聞かない訳にも行かないと思いますので。
今のような、つまり、国民は結局民主党を選んだのでは無くて、政策は変わらなかったんだけれども、一種イメージで選んだに過ぎず、今は政権交代への夢や二大政党制からの夢からもう冷めきってるんだっていう見方に対しては、どうですか。

鈴木寛:
二大政党なのかどうなのかの前にですね、やっぱり長期政権を変えたい、あるいは変える仕組みをどう入れるかという事が課題だったと思うんですね。二大政党制・小選挙区導入という。それは別に理論的にはですよ、大統領制でも良かったし、あるいは理論的には、僕は、比例でもちゃんとした、一票の格差が実現されていればですね、政権交代は起こった訳で、ただ一番あの時手っ取り早かった、長期政権を変えるという方法が、二大政党制・小選挙区制を導入するというソリューションで、結局長期政権が終わったという事が、これまでのところですよね。
でその時に、政策は変わっていて、政策が変わっていてって何かというと、利益配分構造が変わっている訳ですよ。明らかに。その正に、公共事業で政官業直でという、その利益配分の構造の仕組みっていうのが変わって、今後どいういう風になって行くのかというのが、今問われている訳ですよね。

吉田:
まあまだ、政権交代してからですね、まだ評価するには、実は僕個人的に早いと思ってるんですね。まだ1年、1年少なくともやってもらわないと、その成果を検証するのに早いと思うんですが、少なくとも、先程言った事を含めてあれなんですが、政権交代そのものが自己目的化してたんですよね、言ってみれば。
これは、戦後日本は「政権交代のない民主主義」と言われてですね、果たしてそれで本当に民主主義と言われるかどうかと、欧米の政治学者からもずっと言われていたわけですよね。

猪瀬:
それは、やっぱり小沢さんのあれですよ。自己目的化して。

吉田:
もちろん。で、もうひとつ、

猪瀬:
それはそれとして、いい悪いじゃなくて、彼はそのためにずっと生きているわけで。

吉田:
もちろん。そういう小沢ファクターというのがあるんですが、もうひとつ小選挙区制と、それから二大政党制と、それから政権交代というセットなんですが、これがいい結果をもたらすと言われたのが、大きな政策的確信をですね、これは導き出すからだ、というような期待があったわけですね。

例えば、こないだ総選挙があったイギリスですけれども、イギリスというのは、サッチャーですね、1979年。サッチャーの保守党政権が出てくるわけですけれども。そのときのサッチャーの保守党というのは、真ん中に寄るんじゃなくて、むしろ、保守党の場合は右に寄るんですね。右によって、いわゆる遠心的競合というのをやるんですが。
保守党は右にどんどんですね、政策を振っていく。それに対して、労働党は左にどんどん政策を振っていく、というような形で、社会のダイナミズムと政策の革新性を担保していったわけです。

ところが、今の日本はそうなってない。なぜなら、これは民主党がだらしないし、鳩山さんのリーダーシップに問題があるだろうし、党内の党首と幹事長との連携がうまくいってないっていう党内組織の問題によってくるんだろうと。

堀江:
それはなんで党内組織はそうなっちゃうんですか、日本では。

吉田:
それは民主党の問題だと思います。日本ではというより。

堀江:
それは民主党が悪いの?

吉田:
民主党が、まあなんでしょうね、やはり政権交代というキャッチフレーズというか目的が、

堀江:
ちょっといいですか。疑問なんですけど、なんで鳩山さんは首相になるんですか?

吉田:
なぜ、なる……?

堀江:
だって、みんななんか、鳩山さんなんかだめじゃない? ってみんな思ってるわけじゃないですか、今。結構国民全員思ってるような感じじゃないですか。

猪瀬:
たまたま、選挙に勝ったときに代表だったからだよ。

堀江:
そうなんですけど……

猪瀬:
そのときに小沢さんが代表だったじゃない

堀江:
そうそう。

猪瀬:
その前はだれだったけ?

堀江:
前原さんですよ。僕のせいで負けたんですよ、それは。メール問題で。

猪瀬:
たまたま民主党は、代表だった人が総理大臣になる順番のときに、政権交代のときに鳩山さんだったっていうことなんです。

吉田:
堀江さんの質問に簡単に答えると、つまり、政権交代。まあ民主党というのはそもそも自民党から出てきたものですよね。

堀江:
ええそうですよね。

吉田:
菅さんもそう……

堀江:
菅さんは違うでしょう?

吉田:
菅さんは違うけど、鳩山さんもそうだし、基本的に自民党から分派してきたわけですね。そのあと、社会党からちょっと、あそこからこっちから、あるいは新生党が……

堀江:
でも、だって、最初に金出したのは鳩山ブラザーズなわけでしょ。

吉田:
そう。そうです。

堀江:
邦夫さんと由起夫さんなわけでしょ。

吉田:
つまり、民主党が野党のとき言われてたのって、「寄せ集めですね」ってよく言われてたわけですよ。

堀江:
ええ。

吉田:
それが弱点だったわけですね。

堀江:
はい。

吉田:
ところが、その弱点をカバーしてみんな一致団結して、なんのために頑張ったかというと、政権交代だったんですよ。

堀江:
小沢さんが党首になって、僕、選挙勝てるなって思ったんですよ。僕、拘置所の中にいたんですけど、小沢さん党首になったから、これたぶん民主党勝つな、次はって思ったんですよ。前原さんじゃ無理だろうけど、っと思ったんですけど。

吉田:
もともとこれは寄せ集めで、政権交代という目的のために一枚岩になっていたのに、政権取っちゃったから、またみんな違う方を向くようになったわけですよ。バラバラに。

鈴木寛:
ちょっと一言だけ言っておきたいんだけど。寄せ集めでできたんだけれども、まあ私も九年国会議員やってますけど、もともと民主党で、民主党議員をずっとやってる。
これ、ネイティブ民主党って言ってるんですけど。今や、実は民主党の数で言えば、ネイティブ民主党が圧倒的なんですよ。上の方の人たちだけ、元なんとかっていうのを引きずっている。
だから、「民主党は」って言わないで、「民主党の上の方は」は寄せ集めで、と。だけど今は、民主党ネイティブがだいぶ多くなってるけど、そこの世代抗争に……

吉田:
いや、僕は……(聞き取れず)さんとか、
鈴木さんは尊敬してるんですけど……

堀江:
なんで世代抗争に勝てないんですか、民主党って。だって、ネイティブの人の方が多いわけじゃないですか。前原さんってネイティブなんですか?

鈴木寛:
前原さんは違いますよ。

堀江:
前原さんも違うんですか。ネイティブの人で一番今力のある人って誰なんですか。

鈴木寛:
一人に断定はできないね。

堀江:
だから、ダメなんじゃないですか?

鈴木寛:
だから、途中だってことですよ。

堀江:
どうやったら力を持てるんですか。鳩山さんって金出したってことで力を持ってるんですか。

吉田:
選挙に弱いからですよ、つまり。

堀江:
えっ、選挙に弱いから強いの?

吉田:
ネイティブの人たちは。

堀江:
ああ、ネイティブは選挙に弱いからダメなんだ。

東:
ちょっといいですか。すごく緊迫しててこれはいい感じなんじゃないかと思って、ずっと僕いま黙ってたんですが。

堀江:
はい。

東:
しかし、これは結構、ありがちな政局の話になっていて……

堀江:
え、そうですか?

東:
いや、いいんですけど。この間民主党に投票した人たちの期待みたいなものっていうのは、こういう政局とはまったく違う話で、ダイレクトに自分たちの声が、市民の声が民主党に届くみたいなことを期待した人たちもいたと思うんですよ。
だから例えば、事業仕分けのとき、あれは今回のよりも、そらのさんが中継した方が盛り上がってるっていうのは、ちょっといささか皮肉なことではあれ、あういう事業仕分けみたいなものを、国民が喝采した。
つまり結局、党の中で誰が強いんだとか、これは派閥でどうだとか、世代でどうだとかという話、それ全体に対するうんざり観みたいなものを、みんな民主党に託したはずなのに、以外と今ふたを開けてみると、似たような話がまた出てきてしまっている、ということに失望があると思うんですね。

猪瀬:
ちょっといいですか。ちょっとそれに絡む、というか関連することなんだけど。
鈴木さんちょっとね、ネイティブ民主党の話も含めて、僕、さっきの鈴木さんの言ったこと、鈴健さんと鈴寛さんの言ったこと両方絡んでくるんですけど。
つまり、ある程度、政策を作るときには、プロフェッショナルみたいなものが必要なわけですよね。それで、鈴寛さんの方へ行くんだけど、要するに民主党は、自民党には部会というのがあって、民主党も部門会、まあ政調会ですよね、そこで活発な議論をするっていうことがあれば、たぶん僕は、民主党は今みたいな状態になってなかったと思うんだよね。
つまり、それこそネイティブの人たちがなぜ下から上がれないのかというのも、そこで侃々諤々、部門会で、つまり部門会というのは、例えば高速道路だったら高速道路の会、あるいは子供手当だったら子供手当の部門があると。役所に対応してますけどね。厚生労働省とか国土交通省とか、文部科学省とか、それらに対応した部会ってあるわけですよ。
昔、自民党がやってて族議員ばかりになってたんだけど、でも族議員は知識があった。それは、役人から聞いてて。それで、民主党は族議員にならない部門会という、部会というね、政策調査会を……政策調査会でいいのか? 政務調査会?

鈴木寛:
政策調査会。

猪瀬:
まあ、自民党が政務調査会で民主党は政策調査会で、短くすると政調会で一緒なんだが。要するにそういうものをきちんとやって、それこそそこにインターネットが絡んでくるような形にしていけば、本当は僕は、民主党はもっと活性化したんじゃないかと思うし、高速道路の議論だって中途半端なまま、小沢さんがこう言った、前原さんがこう言ったっていう風に動いていっちゃうけど、本当は自民党の部会は、要するに隠したりしてたんだよね。閉じたりしてて。
でもオープンに、民主党の部門会というか政調会をやったら、ひとつひとつ。そうしたら、かなり時間を、外に、インターネットとかもはいれるし、それからどんどん外に出て行くし。そうすると、話がどんどんどんどん動いていくのが分かるじゃない。
突然2000円以上がタダだとか、突然無料がどうだとか、なにがどうなったかとか、突然出てくるわけよ。民主党ってのは。ただ、それが見えないから。
自民党もよかったわけではない。族議員になったりとか、あるいは見えなかったという部分はあったけれども、長い時間議論していたのは事実で、それはしょっちゅう新聞にも載って、議論の過程が分かったんだよね。そこのところじゃないかと。

吉田:
ちょっと追い打ちをかけるようで恐縮なんですが。マニフェスト選挙ということがずいぶん喧伝されたわけですよね。マニフェストに基づいて有権者はどの政党に一票入れるかを決めしょうという風に、マスコミあるいは知識人、識者といわれる人を中心に言われた。
ところがですね、マニフェストというのはイギリス政治から入ってきたものですけど、イギリスの場合のマニフェストっていうのは、左派政党である労働党であればなおさらなんですが、3年、4年かけて、いろいろ、市民団体であるとかNPO(民間非営利団体)であるとか、あるいはそういった消費者団体等含めて、いろんな形でひざを詰めて長期にかけてマニフェストを作るんですよ。
ところが、この間の選挙もそうだし、今度の参院選の過程は、僕は詳しく見てないんですけども、「この論点だったら選挙に勝てるか勝てないか」というところから、トップダウンでマニフェストを作るんですね。だから、選挙至上主義みたいな話になって……

猪瀬:
そうなんです。それでね、麻生さんがあんまりダメなんで、急に転がり込んで来ちゃったから、あまり準備できてなかった。

吉田:
本来的なマニフェストというのは……

鈴木寛:
ちょっと待って。いい? ちょっとそれを30秒だけ言うとね、強いって言ってるけど、そこも議論を分けるべきだと思う。
要するに政党っていうのは、政策作りの話と、選挙と、大きく言って2つやってるわけですよ。
オールドジェネレーションは選挙については強いというか、いろいろなインフルエンスを持っている。だけどネイティブは政策については、ほどんどイニシアティブを取ってますよ。
で、そうでないところだけがときどき報じられるけども、それは選挙がらみの話のときだけ、選挙を仕切っている人が政策作りに介入してくることがときどきある。だけど、ほとんどの政策はネイティブがだいたい仕切ってるって話。

猪瀬:
それが見えないじゃない。見えないということは、いないってことなのよ。

鈴木寛:
だけど、それはね、要するに、少なくとも政策会議の議事録は全部オープンにしてます。あと、発信力が弱いっていうのは、それはまさに今日の話につながる。

猪瀬:
でもやめちゃったじゃない。政調会を。部門会を。

鈴木寛:
いや、それは、例えば文部科学省なんかは政策会議ってのは毎週やってますよ。それの議事録は全部公表されてます。

猪瀬:
それはだけど、上から降りてきた方針についてやってるわけでしょ?

鈴木寛:
いや違いますよ。それはだって、申し訳ないけど僕は、文部科学政策については、それは完全に私が仕切らせてもらっているし、それから……

猪瀬:
だからあなたが降ろしているわけでしょ。つまりね、あなたは今、副大臣だから、上から、つまり下の、民主党の若い人たちに、文部科学副大臣として降ろしてる立場なんだよね。

鈴木寛:
例えば、いわゆる政策公募みたいなものを聞いているし、それから懇談会みたいなものもやっているから、そこはまあ、それぞれのなんていうか、編集の仕方というか、ホスティングの仕方ということ。それから、もうひとつマニフェストについて、これもケース・バイ・ケースなんですよ。
例えば、民主党の医療政策なんかは、5年間くらい現場のお医者さんとメールを、延べで言うと何十万通交換して、民主党の医療マニフェストだけ異常に分厚いんですよ。これはそういうきちっとした現場からの積み上げでやっている部分もある。
それから教育についてもですね、2004年くらいから教育基本法の原案とか、コミュニティスクールなんてのは、まあ僕はもともとコミュニティスクールを慶応(注;鈴木寛氏は慶応義塾大学環境情報学部助教授)のときに唱えましたけど、要するにコミュニティスクールで行くっていう積み上げをしている部分もあるし、そうでない部分もあるので、そこは今、途上で……

吉田:
積み上げをしているところが、鈴木さんのような、いわゆるネイティブの民主党の議員さんがやってるところなんですよ。そうじゃなくて、例えば、それこそ税制であるとか、あるいは農業政策であるとか、あるいは自民党的な足場を作っていったところでは、まだそこまでインフルエンシャルなところがないわけですね。

鈴木寛:
そうそう、だからそれは混在しているというのが、たぶん、内閣を見てもそうだと思いますよ。だから、環境なんかも、例えば福山(福山哲郎 外務副大臣・参議院議員)なんかがずっと彼は市民活動、NGOのころからやってきている、と。
まあ、今はそういう途中にあるということだけ、申し上げておきたいと思います。

東:
それで、ちょうど政策の。今、選挙の話と政策の話の二つあると。
で、今日は二つともネットがどう変えるかって話をすることになっているので、どうも話が行ったり来たりしてしまうんですが、今ちょうど政策の話になって、さっき猪瀬さんから、政策のプロフェッショナル、プロフェッショナルが政策を作る、その過程をオープン化するということが大事なんだってお話があったんで、それに近い試みを、今、鈴木寛さん自身が「熟議カケアイ」というサイトでおやりになっていると思うので、その紹介を今していただくといいのかなと思います。

鈴木寛:
そうですね。じゃあ、サイトを出してください。
で、これはもともと僕が議員になる前からずっとやりたいことだったんですけれども。

東:
サイト、出ますか?(スタッフに)

鈴木寛:
要は、先ほども鈴健さんからもお話がありましたけど、「政府はプラットフォーム」だっていうのは、実は僕は個人的にはかなり近い認識を持っていて、それから政治家とかね、あるいは役人というのは、ポリシーライターというより、ポリシーエディターだという風に……

東:
ちょっと待ってください。出ないみたいですね、サイトが。サイト出ないですか、運営さん。調整中ですか。

鈴木寛:
別に出なくても大丈夫です。
それでね、そういう風な考え方を持っています。それと、本来政策というのは、そういう、僕はシンクネットみたいな言い方してるんですけども。要するに、プロの人たちが、そして現場の人たちと。だから、プロだけの専門知だけでもダメだし、やっぱり現場の、現場知とか暗黙知とか、これが両方うまく、それこそ編集されて政策形成プロセスがうまくちゃんとマネージされて、そこで熟議、熟慮し、議論することを積み重ねながら、だいたい、そのコミュニティーによって、ちゃんと当事者たちが、当事者はいろんな当事者がいるんだけど、当事者たちが議論をして、そうすると、だいたい収まるところに収まると。
こういう状態が私はいいと思っているんですね。それで、だいたい8割くらいは、そこで出てきた結論というものをきちっと政府が実行すると。
で、残り2割くらいは若干、説が分かれてしまう話っていうのはあるでしょう。
そのときには、最後はそのときの編集者である議長が決めます、みたいなところで、説が分かれている、A説、B説だったら、民主党政権のときはA説で、自民党政権はB説、みたいな、それぐらいのことでいくのがいいだろうと。
結局、編集長とか議長って、実は、ある意味ではものすごい権力っていうか、パワーを持っているわけですよね。
で、そこでの編集方針とか、編集のやり方とかっていうことはとっても大事なことなので、それ如何で、同じメンツの同じ……

(サイトの映像が映る)

東:
えっと、これは僕が説明するより、鈴寛さんが。

鈴木寛:
はいはい。これは「熟議カケアイ」というもので、文部科学省のホームページからリンク張ってて、飛べます。これは文部科学省のプロジェクトです。
4月17日にスタートしたんですけれども、これはリアルの熟議とネットの熟議の両方で成り立っているんですけれども、約半年くらい、いろんな準備を重ねてきて、構想をしたのは、それこそ10年以上前なんですけど。鈴健さんたちと一緒にそういう議論をしたんですが。

猪瀬:
分かりやすいケーススタディを言ってくれるといいんだけどな、今やっていることの。

鈴木寛:
まず、この一ヶ月は「教員の質」というものをどうしたらいいか、というテーマについて。1000人くらいの人が登録してます。
1000人の内訳を言うと教員が三分の一くらい、保護者とか学校ボランティアが三分の一くらいで、教育委員会の人とか教育学者とか教育の評論家とかそういう人たちが三分の一くらい。
という人たちが、4月17日に200人くらい集まって議論を始めたんですけども、その後1000人くらいに増えて、毎日ネット上で議論を積み重ねている。
それに対して、見ている人が賛成だとか反対だとか、そういうコメントをつけながら……

猪瀬:
積み重ねはどういう風に整理されていくのかな。

鈴木寛:
これはツリー的にですね。これは慶応のときに、藤沢電子会議室といって、コメントに対してコメントをつけるみたいな……

東:
(サイトの画面を見ながら)今、この画面をスクロールして。今、画面に戻って。で、これ、ツリー状にも表示できるはずですね。

鈴木寛:
ああいう形でね。コメントに対してコメントしていくっていう。で、また新しいコメントをしたいときには、こういう感じに、なっているんですけれども。
これをひと月やってみました。
そうすると、結局、今まで中央教育審議会っていうと、どうしてもサプライ(供給)サイド、それこそ教員の団体だとか大学教授だとか、そういう人たちばかりの声になっちゃうんですけれども、なかなか現場でかかわっている人たちの声というのは、吸い上げにくいってことになってきたんだけど。
やっぱり現場の人はですね、割と、僕が見ると「絶対そうだよね」「絶対そう思ってるよね」という話が、ちゃんと出てきて、そういう一人一人は小さな声だけど、集まって大きな、まさに集合知というか、そういうのが吸い上げられるっていうのが、できたと。
これを今後は中央教育審議会とかそういうところに投げて、議論をしていこうと。

東:
鈴寛さん、これ先ほどちょっとお話を聞いたんですが、確かユーザー数が1000人強。で、参加資格がないけれどもユーザー数が1000人強というのは、ちょっとネットの感覚からすると少ないかな、という感じもするんですけど、そこらへんはどうお考えですか。

鈴木寛:
まあ、これから増えていってほしいな、と思っていますけれども。

堀江:
今のままだと、たぶん増えないんじゃないですか。だって、あまり周知されてないし。今はもうなんか、ちょっとサーバー落ちちゃったみたいです。

東:
今、ちょっとサーバー落ちてます。視聴者が見に行って、アクセスが集中して落ちちゃった。

東:
1000人か2000人アクセスするとサーバーが落ちるんじゃないのかな。

堀江:
そう、サーバーがちょっと弱いな、みたいな。

東:
これはちょっと重要なところで。つまり、一方において、こういうサイトをやる以上、炎上とか祭りとかになるのは避けたいっていう思惑が、たぶんあり。
だから、結局ユーザー数が1000人くらいだから、おそらく鈴寛さんとしてはかなり熟議ができているという実感もおありなんだと思うんだけれども、もし、大衆の意見をネットから直接となってくると、これはおそらく一桁二桁あげなくてはいけないわけですよね。そこらへんのバランスというか……

鈴木寛:
だから、もちろん、いろんなサイトがもうすでにあるわけですよね。で、ここの特徴っていうのは、まさに熟議をちゃんとやるということと、一応、見ている人はYESだとかNOだとかっていう軽いコメント、レスポンスはできるようになっていて、だいたい40万ページビューくらいがひと月に。

堀江:
まあ、こういうのがやれるようになったというのは、すごい一歩だと思いますよ。

猪瀬:
試行中ということだな。まあ、だいたい分かったよ。

鈴木寛:
そうそう、試行中。とにかく炎上しないようにという中でどうやって積み重ねていくか、っていう話。

吉田:
直接民主制の話をするときにね、先ほど鈴木健さんが最初プレゼンテーションされた、物理的な問題というのは確かに、ネットがあればある程度克服できるんだけれども。やっぱり数の問題ってあるんですよ。
つまり、1000人、ある程度知識を持ってて、かっこ付きですけど「良識的な人」で成り立つ空間と、そこに数千人あるいは数千万人が入ってくると、同じような質というものが、もしかしたら維持できないかもしれない。
っていうところは、やはりトレードオフになってるっていうのは、確認しておかなければいけないと思う。

堀江:
でも、どうせほら、議論とかみんな、そんなに積極的には参加しないでしょう、
だって。みんな忙しいとか……

吉田:
だから、それだったら、直接民主制にならないわけよ。意味がない。

堀江:
そんなことないじゃないですか。だってそれは最初に「熟議カケアイ」みたいな結構難しい言葉で議論するサイトがあって、そこに参加する人たちはリテラシーもあるし、頭も良くないといけないかもしれないし、わかんない頭悪い人も来るかも知れないけど、そこでやる人ってある程度時間もあって、それに興味がある人達がやるわけですよね。
やった結果に対してこんな感じの議論になってるけど、あんたはYESなの?NOなの?みたいなところはYES・NOならババッと選べますよね。

吉田:
でもそれは現状の、いわゆるテクノクラシーですよね?

堀江:
いや、そうじゃないでしょ。だって直接に選べるじゃないですか。

吉田:
あるいは、専門家支配と何が違うんですか? それは。

堀江:
結果に対して、議論にも勿論参加する資格は与えられているし、YES・NOに対して選ぶ権利も入ってるんじゃないですか。それ違うのかな。
今はだって、参加する資格もないじゃないですか。そのなんとか制度審議会とか選ばれない、委員に選ばれないと参加できない。

猪瀬:
今の鈴寛さんのは審議会委員じゃなくても緩く参加できるって話だよね。で、全然関係ない人は来なくて良いわけで、やっぱり利害関係者が集まってるわけで、その利害関係者というのはこれまではサプライサイドだけだったり、あるいは組合サイドというか労働組合サイドだけだったり…

鈴木寛:
それもサプライ。

猪瀬:
それもサプライだよね。だから現場の学校の先生がこう思うとか、こう経験があるといったことを伝えたい。

鈴木寛:
保護者あるいはボランティアがね。だからここはほとんど……

猪瀬:
そういう話。だからある種の利害関係者なんですよ。当然それで良いわけなんです。

鈴木寛:
そうです。

猪瀬:
関心ないやつなんかが来たってしょうがないわけだから。

鈴木寛:
これは当事者が…

猪瀬:
利害関係者を広く集められるやり方だということが…

吉田:
でもそれは直接民主制とは言わないし。

鈴木健:
いやいや、だから幾つかあって、政策を作りあげるというプロセスは別に一千万人でやる必要は無いわけですよ。ある程度サンプリングされていればいいわけだから、一万人十万人ぐらいいればいいわけですよ知識としては。
ディスカッションスペースとして一万人五万人ぐらいが上限なのか知れないけども、でも他にみんながどういうことを考えているかを知るってことに関しては、例えばツイッターでみんながつぶやいているものを統計的な処理して理解するって世論調査仕方だって開発されてるわけだし、そういうやり方だって良いわけですよね。
最後にそれを実際に議会で議決するかどうかっていうときにもう一個、直接民主が出てくるわけですよ。直接民主主義ってのは…

吉田:
国民投票がいいわけだ。

堀江:
国民投票と直接民主制ってなんか違うんですか?

吉田:
直接民主制的な意思決定の仕方が国民投票とは言えます。

堀江:
ですよね。だから国民投票を定期的にやる仕組みは作れるわけじゃないですか。

吉田:
国民投票法もできたわけだし。

鈴木寛:
もう一つ言うとね、政策作りと選挙というか、それの決定ていうかオーソライズ、民主的オーソライズっていうことを分けるって話をしてるんだけども、もうひとつは別の、これはSFC(慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス)の曽根さんなんかが一生懸命やっていることなんだけども、「Deliberative polling」と言うのがあるんですね。
これは要するにどうするかというと、選挙人名簿からランダムに抽出するんですよ。まさに裁判員制度みたいな感じでね。
その人達にいきなり色々なことを聞くと、まったく情報を知らない段階で聞きます。その後一泊二日とか二泊三日がまぁ一応○○○○、そこまでしなくてもですね、色々みんなで議論をしてみると、あるいはそこで色んな材料を提供しながら議論をしてみて、そしてその後にもう一回世論調査みたいなことをしてみると、その中でみんなが学習して考えも深まって、これもある種、熟議プロセスを入れてるんだけど、熟議プロセス経た後にもう一回ランダムで集められた人たちがどう思いますかみたいな世論調査ってのもあって、そうことも合わせて使うことによって直接民主主義的要素っていうものを色々と挑戦していくプロセスってことなんじゃないかな。

東:
あの、僕、司会なんですけども、ちょっとだけ言っていいですか?
しかも僕はさっきから運営側からそろそろ別のことをやれって、これは言ってはいけないことなんですけども。
僕やっぱりネットの使い方二つあると思ってて、一つは熟議を強化するってことです。ただこれは当然そのー、人数に限界がありますね。
だから例えば政策を決定するには一千万人でやる必要ないってのはさっきの鈴健さんの言ってることは非常に正しくて、ある程度クローズなんだけど、ある程度オープンにした数千人単位の審議会みたいなものをおそらく一個は考えるべきだろうと思うんです。
もう一個、ネットの使い方っていうのは、数千万人単位の無意識をある意味吸い上げる装置として非常に優れていると思っていて、それこそたとえばツイッター上でどういう言葉が呟かれているか、どういう言葉に対して反応があるのかっていうのを分析していく、データマイニングしてくだけで、恐らくかなり人々の意思は吸い上げられる。この二つを分けるってことが、技術的に可能になった……

(その2に続く)

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