オイルショック再び?エジプトで何が起きているのか

世界から注目を集めているエジプト情勢。
エジプトで一体何が起きているのか?

そんなエジプト情勢について理解を深めたい方におすすめの書き起こし、
独立総合研究所社長青山繁晴さんのエジプト情勢解説の書き起こしです。

YouTube動画
青山繁晴 ニュースの見方 Feb 02
(中西一清スタミナラジオ 「ニュースの見方」より)

 

ナレーター:
ニュースの見方です。

キャスター:
さぁ、水曜日は独立総合研究所の青山繁晴さんです。青山さん、おはようございます。

青山氏:
おはようございます。

キャスター:
エジプトのムバラク大統領、9月に予定されている大統領選挙に出馬せず、退陣の意向という速報が入ってきてます。

青山氏:
はい。まぁ、退陣の意向とは言いながらですね、要するに、逆に言えば、まだ半年以上やるということです・・・から、このムバラクさん、あの、大統領選挙の不出馬の表明で済むとは思えないですね。

キャスター:
思えないですね。

青山氏:
あの、何とか時間稼ぎをして、えー、ムバラクさん、自分が殺されないように、するということと、何とか影響力を残したい、という焦りから、こういう会見になったんですが、事態が掴めていないと思いますね。

キャスター:
あーやっぱりねぇ。

青山氏:
っで、このエジプトの動き、もともとチュニジアの独裁政権が倒れたところから始まったんですけども、あのこれは今年2011年で、21世紀になって10年ちょっと過ぎたわけですけど、間違いなく今世紀最大の出来事です。

キャスター:
うーん。

青山氏:
今世紀最大というだけじゃなくて、本当は、第2次世界大戦後の世界を支えてきた根幹が崩れるということであり、

キャスター:
ほー。

青山氏:
もっと言うとですね、あの今の中東世界の在り方というのが、あの皆さんご存知の「アラビアのローレンス」、あの映画に、映画になってアカデミー賞7部門を取ったという、僕も大好きな映画なんですが、要するに第2次世界大戦当時から、ずーっと作られてきた、あの油とガスの出る地域は、あー、独裁政権にしておいて、えー、世界が都合よく、その資源を利用できるという体制が、全部崩れていくということなんですね。

キャスター:
あー、ということは、混乱が押し寄せてくるということですか?

青山氏:
えぇ、これは、まぁ、未曾有の事態ですね。あの端的には、ひとつは、まさかとは思うオイルショックの再来ということも、ないではないですね。

キャスター:
もう、既に原油が値上がりしていますよね?相当・・・

青山氏:
そうです。1バレル、バレルというのは、ひと樽ですけども、ひと樽、もう100ドル近くになっているんでぇ、かつて150ドル近くまで行ったことがあるんですが、あの~場合によっては、それを易々と超えて行くかもしれませんねぇ。そうすると例えば、この寒い冬に灯油の値段が突然上がったり、そういうこともありえますし、それから、あの日本の企業活動にも、重大な影響を与える・・・・

キャスター:
そうですよねぇ~

青山氏:
それから、原子力とか新エネルギーとか、色々と脱石油のエネルギーが模索されてて、随分、石油や天然ガス以外の比重もあがってるんですけど、まだまだ本当は、石油漬けの世界ですね。それが切り替わらないうちに、あのぉ、供給のシステムが崩れるということですから、これはやっぱり、日本の政治が混乱して、あのぉ、おかしいねっていうだけじゃなくて、今までの世界っていうのが、本当に音を立てて崩れていくということなんですね。

キャスター:
ですよねぇ。

青山氏:
えーっと、今の具体的なことを申しますとね、あのぉ、ムバラク大統領は、本当は次男坊に世襲をさせたかった。

キャスター:
らしいですねぇ。えぇ。

青山氏:
で、もともとはアメリカは、それに批判的だったんですけども、あのぉ、今回の騒ぎで、ムバラク大統領は、スレーマンさんて言うですね、情報長官、つまりは、そのぉ、秘密警察の元締めのような人を副大統領にしまして、えー、その人が前面に今、出てるんですけど、このぉ、この意味はですねぇ、ムバラク大統領が、アメリカに対して、あんたも俺たちと一緒にやってきたじゃないかと・・・

キャスター:
おぉ~

青山氏:
というのは、スレーマン情報長官というのは、イスラエルとも手を組んで、それからアメリカとも手を組んで、イスラム原理主義を徹底的に弾圧するってことをやってきたわけですねぇ。

キャスター:
はい。

青山氏:
だから、仲間じゃないかと、それを急に裏切るのかというメッセージなんですが、あのオバマさん、比較的、やっぱ決断の早い人でぇ、あの、それに乗らないで、えー、ムバラク大統領はもう交代だっていうのを、表でも裏でも、エジプトに伝えたわけですね。

キャスター:
うん。

青山氏:
ただそのぉ~、アメリカも、そうやって、決断はしたけれども、ムバラク体制は捨てるという決断はしたけれども、じゃあ、どうするかっていう手は、全然見つかってないんですよ。

キャスター:
はい。はいはいはい。

青山氏:
っていうのも、アメリカ~、あのぉ、ちょっと前まではですね、こういう民主化運動が起きたら基本的に支持をして、選挙やりましょうってことで、やってきたんですね。

キャスター:
えぇ。

青山氏:
あのイラクでも、まぁ、酷い戦争をやったあとに、選挙をやるということで、何年もやってきたんですがぁ、その結果、そのぉ、イラクは別としてですね、例えばパレスチナなどで選挙をやると、イスラム原理主義が勝っちゃうんですね。

キャスター:
そうなんですよねぇ。

青山氏:
ええ。

キャスター:
そこが怖いですよねぇ。

青山氏:
そうです。それで、エジプトは、あの、非常にこう、イスラム原理主義から遠い、まぁ、観光地の穏健な国っていう見方が強いですけども、本当はイスラム原理主義のふるさとみたいな面もあって、あそこにムスリム同胞団、ムスリムっていうのはイスラム教徒という意味ですねぇ、同胞ってのは、あの胎から同胞ですねぇ、これは意味は、そのイスラム教徒はみんな同じ仲間じゃないかっていうことで、あの、あんまりテロ活動とかはやってないんですけれども、でも、イスラム原理主義なんですね。

キャスター:
あのウサマ・ビン=ラディンの出身もエジプトでしたか?たしかね・・・違いましたっけ?

青山氏:
え?いや、ウサマ・ビン=ラディンは、もともとサウジですけれども、エジプトのこういう勢力とも、深い関係はあると言われています。で、このぉ~、ムスリム同胞団は、今、非合法になってるんです。あのムバラクが、ムバラク大統領が非合法化したんですがぁ、しかし、そのぉ、僕はカイロを歩いたときに、スラム街に行ってみたんですね。

キャスター:
え・・・

青山氏:
じゃ、僕は世界どこにスラム街、必ず行くんですがぁ、このカイロのスラム街ほど酷いとこ、見たことないです。

キャスター:
ほぉ~

青山氏:
あの、人間がこんな暮らしをしなきゃいけないのかと、あの、そもそも、あの、行ってはいけないと禁じられたんですけれども、腕時計とか全部、はずしまして、ボロボロの服を着て、歩いてみたんですがぁ、あの、このスラム街に、例のナイル川も流れてきてるんですが、あの私たちのイメージのナイルと違って、スラム街の中のナイルは、あの、もうホントに真っ黒のようなドロドロの流れで、あの、このエジプトの貧困ってのは、すさまじいものがあるわけです。本当は。

キャスター:
我々が観光で行くエジプトとは、全く違うという・・・・

青山氏:
全く違う。あの観光客は、このスラム街に入ってはいけません。で、こういうスラム街の人々を、裏から支えてきたのが、ムスリム同胞団であって、で、もしアメリカが選挙をやるとしたら、スラム街の住民に選挙権を与えないといけませんね。民主主義の原則から言って、そういう人にも選挙権が与えられるわけですから、そうすると選挙をやると、ムスリム同胞団が前面に出てくることになりますねぇ。

キャスター:
えぇ。

青山氏:
で、このムスリム同胞団っていうのは、実は、えー、エジプトと国境を接しているっていうのは、イスラエルですけど、イスラエルはどこで接しているかというと、ガザ地区で接してるんですねぇ。ガザ地区ってパレスチナ人の自治区ですね。で、そこのハマースっていう、あの、強いテロ・・・テロ組織っていうか過激組織がいるってことは、ご存知じゃないですか。このハマースが元々、ムスリム同胞団がベースになってるわけです。

キャスター:
へぇ・・・

青山氏:
したがって、この選挙をやって、ムスリム同胞団が出てくるっていうのは、イスラエルが絶対に認めるわけにはいかないんですね。で、イスラエルっていうのは、アメリカの金融とかメディアを、ユダヤ人脈で握ってますから、したがって、アメリカは要は、この選挙になかなか踏み切れないですね。ということは、世界が打つ手がないってことなんですよね。

キャスター:
ですよねぇ。

青山氏:
だから、ムバラクさんが中途半端な会見したのも、まぁ、実は、分かるところもあってですねぇ、じゃあ、自分が退陣した後、どうなるんだと、

キャスター:
ですよねぇ、ええ、ええ。

青山氏:
で、え、エルバラダイさんていう、そのIAEA、国際原子力機関に居た人が、私が、私がと、言ってますがぁ、あの、このひと、全然信用されてないですねぇ。だって・・・・

キャスター:
そうらしいですねぇ。

青山氏:
環境の悪い中東を逃げて、ジュネーブに居たわけですから・・・・、したがって、そのぉ、この混乱のひとつの特徴は、混乱した後の処方箋がないっていう

キャスター:
先が全く見えない・・・

青山氏:
はい、えぇ、だから、21世紀の今後の世界を象徴する出来事だと思いますねぇ。

キャスター:
ほぉ。

青山氏:
だから、まぁ、余計に日本の政治のような、そのぉ、内向きで混乱してるって状況がいかに、困ったことかとも言えるんですけども、まぁ、最後に申せばですねぇ、この動きをじっと見てるひとつの大きな国は、中国ですねぇ。

キャスター:
ぅおぉぉ。

青山氏:
で、中国は、インターネットで独裁体制が崩されるってことを非常に警戒してきました。あの、その意味で、既に中東から色々と勉強してきたんですけど、彼らは。あの今回の事態もぉ、情報活動が活発にして、インターネットによる体制転覆っていうのを防ぐにはどうしたら良いかっていうのを研究しているようです。

キャスター:
ですよね。

青山氏:
ただし、えー、ただし、これはいずれ中国にも、その、インターネットによる体制破壊の波っていうのは、来ないわけじゃないと思いますね。

キャスター:
そうですかねぇ?

青山氏:
はい。

キャスター:
しかし、先が全く見通せないというのは非常に、あのぉ、経済の面でも、あのぉ、非常に悪い影響が出てくるという感じはしますよね。

青山氏:
そうです。はい。

キャスター:
ありがとうございました。

青山氏:
はい。

キャスター:
独立総合研究所の青山繁晴さんでした。

(了)

special thanks!
本記事は@CAPBKKさんの記事をもとに転載させていただきました。
有難うございました!

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