ソフトバンク孫正義社長による「新30年ビジョン」 Part2

[30年後の世界]

30年後の話をこれから話します。

そんなもの全部知ってる、退屈な話だ、そんなこと当たり前だ。
皆さん思うかもしれない。思わないかもしれない。

ここから30年後の非常に退屈な話を、ごくごく当たり前のささいなことを聞いていただきたい。

[30年後のトランジスタ、メモリ、通信速度]

30年後、コンピュータのチップの数は、人間の脳の10万倍になる。

ワンチップの能力。先ほど申しました100年後には1垓(ガイ)倍。
30年後には人間の脳細胞を2018年には追いつくかもしれない。

そこから追いついて追い越してどのくらいまで越えるかというと、30年後に10万倍になる。
やだなあ、俺の10万倍か。
ワンチップでですよ。

しかもそのチップは通信しあうわけです。ものすごい速度で。
今日現在の100万倍のメモリ容量で、300万倍の通信速度で通信できるようになる。

(CPUトランジスタ数)100万倍。
(メモリ容量)100万倍。
(通信速度)300万倍。

もしかしたら10万倍かもしれない。
もしかしたら人間の脳のたった1万倍かもしれない。

でも1万倍でも皆さんすごいとおもいませんか。

[3万円端末に保存可能なコンテンツ]

そうなるとどうなるんだ?
(今年)iPhone4が出ました。30年後に、iPhone34がでます。

3万円くらいのiPhoneに何曲曲がはいるか?
5000億曲はいる。
そんなにいらんぞ。

何年分の新聞の情報が入るか? 手元に。
3億5000年分の新聞が入る。

動画にしても3万年分はいるぞ。
そんなに見きらん。生きている間に。

あり余るほどの情報が、3万円くらいの、月々980円の定額で得られる。そういう時代がくるかもしれない。
もしこれが仮に10分の1だとしても、あるいは100分の1だとしても、言いたいことは同じ。

[クラウドから1秒でDL可能なコンテンツ]

このスピードだと1秒間に音楽でいえば何曲ダウンロードできるか。1秒間で300万曲。
手元に何億曲あっても、それでも足りない、新曲が出たぞー、となったら1秒間に300万曲もリフレッシュできる。

新聞だと1秒間2000年分、あらたに入れられる。
1秒間で世界中で発行されている新聞・雑誌・書籍が全部入れられる。

それくらいの時代がくる。30年で。

ソフトバンクはじめて30年たった。
あっという間でした。
あっという間にまた30年が来る。

この30年で人々のライフスタイルはおそろしく変わる。

[無限大のストレージ、クラウド、ネットワークがライフスタイフを劇的に変える]

実質的に無限大の情報を入れられる、人工の知識、人工の知恵をいれられる、格納できる容量のストレージができる。
無限大のクラウドができる。
超高速のネットワークがつながる。

そうすると、その時代に紙の新聞なんてほぼ100%ありえない。
紙の雑誌、書籍、ほぼ100%ありえない。
CDで音楽をトラックで運ぶなんて、ほぼ100%、1000%ありえないということです。

情報って、いままで僕はデジタル情報革命と言ってました。
アナログの情報なんてやる人は誰もいない。
情報というのはもうデジタルが当たり前。
だから今日私が繰り返し申し上げているところに、デジタル情報革命とあえて言わなくなりました。

これから30年後、300年後の人々にとって、デジタルなんてわざわざつけなくても情報革命は情報革命なんです。

[あらゆるものがクラウドと融合]

あらゆる電化製品、電化製品だけでなくスニーカーにも、メガネにも、脳型コンピューター、30年後にはまだ脳型にはなってないかもしれませんけども、処理速度の速い、記憶容量、スピード、通信速度をもったチップが、あらゆる電化製品にはいる。
あるいはメガネにも靴にもはいる。
靴に入ると健康管理してくれる。
「あと53歩あるきなさい」と言ってくれる靴がうまれる

ありとあらゆるものがしかもクラウド、クラウドというのはインターネットの上にある大型コンピューター。

[字幕式翻訳メガネ]

メガネも自動翻訳の字幕が出るようになる。
外人の女の子が泣き喚いて叫んでいる。なんて言ってるんだろう?
二ヶ国語同時に耳で聞くよりは、目で字幕、洋画を見るときに字幕がでますね。ああいう感じでメガネに字幕が出る。

相手がしゃべっている言葉を翻訳してくれて字幕が出る。そういうふうになるかもしれない。

ちなみにこれは特許を出してます。
字幕式翻訳メガネ。

[教育]

教育はもちろん、徹底的に変わります。

[医療]

医療も徹底的に変わるでしょう。

紙のカルテに書いていくなんてのはありえない。
紙ほど非合理的なものはない。非効率的なものはない。
不親切なものはない。
コストが高いものはない。

[ワークスタイル]

仕事のしかたも徹底的に変わっていく。

[見る感動の進化]

見る感動も、今日現在の見る感動と、30年後まったく違ったものになっていく。

[学ぶ感動の進化]

学ぶ感動。
さきほど申し上げたとおり教育は徹底的にかわる。

[出会う感動の進化]

出会う感動。
バーチャルリアリティから、いずれARに進化する。

[遊ぶ感動の進化]

遊ぶ感動。
これもどんどん変わる。

[クラウドを人類最大の資産に]

そのときにはクラウドが人類最大の資産になるだろう。
クラウドに徹底的に人類のあらゆる知恵と知識、そして人工知能の知識・知恵、それがどんどん蓄積されていく。

[最先端のテクノロジー、最も優れたビジネスモデル]

そういう中でソフトバンクは何か1つのものを出すのではない。
特定のチップのメーカーであるとか、1つの特定のサービス、ビジネスモデルの会社ではない。

我々は人類が持っている最もすぐれたテクノロジー、最もすぐれたビジネスモデルが世界中に生まれてくる、彼らと一緒になって、彼らを同志としてやっていきたい。

ちょっとイメージをあらわしたビデオをつくってみました。
見てください

[Information Revolution]
(イメージビデオ“Information Revolution”)

————

人間には
悲しみを和らげる知恵がある
太古の時代から人は
さまざまな方法を試してきた
宗教や
哲学や芸術の力で
けれどいま
わたしたちは叶えつつある
悲しみの新しい和らげ方を
そして喜びの膨らませ方を
それが
情報革命だ
information revolution
ひとりの想いは、みんなの想いとなり
みんなの声が、ひとりのために届く
遠く離れた気持ちと気持ちを
人とモノを
つぎつぎに結びつけてゆくのだ
あなたに暗い夜が訪れても
地球の反対側にいる誰かが
朝の光を届けてくれる
北で生まれたひらめきは
南で生まれた絶望を救い
東で生まれた技術は
西で生まれたあきらめを希望へと変える
人とモノと想いは
いつでもどこでも引き合ってゆくだろう
「運命の出会い」がいくつも生まれ
ひとりひとりが
ひとりじゃないのだと知る
情報テクノロジーは、出会いを生み出し
人間を自由にする力だ
国境も、年齢も、人種も、言語も、
時間も、空間も超えて
私たちは信じている
この力が不治の病をなくし
教育から退屈をなくし
この世界から戦争をなくすだろうと
どこまでも進化するテクノロジーと
いつまでも変化しない愛
そのふたつが
いまここにそろっているのだから
情報革命で人々を幸せに

[情報革命で人々を幸せに]

————

「情報革命で人々を幸せに」
このたった1行であります。

さきほどから繰り返し申し上げております。
そのような世界をつくっていきたい。

どうやってソフトバンクグループがそれを実現していくのか。

ここから戦略にはいっていきたいと思います。

[戦略] [事を成す]

戦略であります。

さきほどから申し上げておりますように、私はサイエンスフィクション(SF)の映画監督になりたいわけではありません。
小説家になりたいわけではありません。
評論家になりたいわけでもありません。

私は事業家です。
事を成したい。

事を成したい。
何の事をなしたいのか。
情報革命で人々を幸せにしたい。
その事を成したい。

[世界の人々から最も必要とされる企業になりたい]

世界の人々から最も愛される、最も必要とされる、なくてはならない、人々を幸せにするそんな会社になりたい。

ちょっと過去を見てみます。

[時価総額ランキング(100年前、30年前、現在)]

100年前、全世界で、1位から10位まで、最も時価総額の大きかった会社を調べてみました。
鉄道会社が4社、そして鉄(USスチール)、石油・石炭、銀行が2つ。こういうような状況であります。
これは約100年前。順位は若干上下はあったとしても、言いたいことは、鉄道だとか鉄だとか、オイルとかそういうものです。

30年前。
IBM、エクソンだとか、AT&T。
日本の銀行が2つもある。懐かしい。今はどこにいったんだろう。

現在は、中国の会社が続々とはいってますし、アップル、マイクロソフトも入っております。

それぞれの会社はなぜトップ10にいるのか。
それはその時代に、その時代の人々が、最も必要としていた会社。最も必要としていた資源を提供していた会社。そういうことではないかと思います。

そういう意味で我々は、30年後に少なくとも世界の人々が最も必要とするテクノロジーだとかサービスだとか、そういうものを提供する会社にソフトバンクグループはなりたい。

今日は株主の皆様がほとんどですから、株主の皆様にとってはちょっとだけ関心がある、30年後のソフトバンクの株価っていくらだ?

今日現在、2兆5000億から2兆7000億の間です。

30年後に世界の人々が最も必要とするトップ10の会社になろうとすると、30年後のトップ10の会社の時価総額ってどのくらいだろう?
10番目くらいの会社。
いろいろ推定値を出している。

そうするとだいたい200兆円ぐらいになってなきゃいけないんじゃないか。

[30年後、世界トップ10へ 時価総額200兆円規模]

つまりソフトバンクが30年後に人々のトップ10の必要とされる会社になるには、少なくとも200兆円くらいにはなってないといけない。

いま2.5兆円とか2.7兆円ですから、70倍とか80倍になる。
1株の価値がですね。

売るのやめとこう。

(笑い)

孫の代まで。
もし本当にこれが実現できるなら、あわてて売らないほうがいいかもしれません。

私はやるつもりです。
だいたい今までやると言ったことはたいがいやってきております。

今日は大ぼらですから、あんまり日記に書かない。

(笑い)

証拠を残さないで。

でもやると心に決めたことは、短期のことはちょっとずれたりしますが、長期の願いごとでやると決めてやれなかったことはほとんどなかった。自分で自負しております。

いろんな山あり谷あり
ですからこれは大ぼらですけども、本気の大ぼらです。

いい加減な大ぼらではない。
本気でやるつもりの大ぼらです。

どうやってそのトップ10を実現させるか。

[事業領域] [ソフトバンクの事業領域は情報産業]

事業領域。

我々の領域は何をやるのかということですが、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、情報革命ただ一本。
創業1日目から変わってません。

ソフトバンクは何をやるのか。情報革命。その一本です。
30年後も300年後もその一本です。
この一本です。

情報革命であります。

[特定のテクノロジー、特定のビジネスモデルにこだわらない]

特定のチップを作るとか、ソフトだとか、特定のテクノロジー、特定のビジネスモデルは、300年間変わらずもつというのはなかなかないと思います。

30年もつものはあります。
300年たつとみんな代替わりしています。
あまり特定の1つにこだわりすぎると、成長しない。

ソフトバンクの一番のお家芸は、こだわらない。ということであります。

特定の技術だとか、特定のビジネスモデルにこだわらない。

ただ1つこだわるのは、情報革命。
そして、人々を幸せにする、そのことだけです。

[技術、ハードは時代とともに変化]

過去の30年間も続々とテクノロジー、道具は変わりました。
ソフトバンクはこだわらない。

[世界中の最も優れた企業とライフスタイルを革新する]

世界で最も優れた企業と、ともにライフスタイルを革新する。

パートナーシップ戦略。
すぐれた叡智の、すぐれたエネルギーの同志たちと、一緒にパートナーでやっていく。

[300年成長する企業へ]

そして300年間成長していける、300年間滅びないで成長していく。

[地球の歴史は46億年]

地球の歴史を調べました。
46億年。
46億年の間に、約1000億の種(しゅ)が生まれたと言われている。
そのうちの生き残っているのが1億種。

[5大絶滅危機]

5大危機がありました。
そのうちの3つは隕石。96%とか、82%の種が絶滅した。

[ソフトバンクの5大転機]

ソフトバンクにも5大危機があった。
生き延びてきた。5大転機であります。

[種の存続率]

さきほどの種ですね、種はどんどん絶滅していくわけですが、生き残っているのは0.1%。46億年の中で。
99.9%が絶滅した。

[会社の存続率(30年)]

会社はどうかというと、30年間で生き残っている会社は、実は0.02%。調べました。
99.98%が途中で行き倒れた。
ラーメン屋さん、印刷屋さん、いろいろありますけど、親父さんがつくった会社。

99.98%が30年間で存続できなかった。
これは実績です。

30年間ソフトバンクが5回の転機を超えて生き残ったというだけで、もうすでに奇跡なのかもしれません。

[300年成長し続ける企業のDNA設計]

我々は30年だけでなく300年間生き残って、なおかつ繁栄し続ける組織を作りたい。

孫正義は何を発明したか。たった1つあげるならば。
チップではなく、ソフトではなく、ハードでもなくて、300年間成長し続けるかもしれない組織構造を発明した。

[戦略的シナジーグループへ]

会社を、グループを、息絶えない、進化し続ける、そういうグループ構造を発明した。
会社体としては初めて。
戦略的シナジーグループである。

[競争力、戦略]

20世紀の会社、組織というのは、大量生産。大量販売。安さ、技術を競争する。

[ブランド、進化のスピード]

ブランドはシングルブランドで、大きければ大きいほうがいい。

[組織、意思決定]

会社組織はピラミッド型。中央集権。

[マネジメント、出資比率]

私はそれをWeb型組織、分権、超高速スピード意志決定。
管理型・支配型ではなくて、自立・分散協調型にしたい。

出資比率だって、51%持って初めて自分の会社だ、という思いを持たない。
100%子会社なら自分の会社。そうでなかったら自分の会社ではない、という意識を持たない。

[技術戦略の方向性]

20%から40%ぐらいの資本提携をした、同志的結合の集団を作りたい。
パートナー戦略。

[資本的結合×同志的結合]

同志的結合というのは、資本的結合として20%から40%の持ち株比率。アリババにしろタオバオにしろ、レンレンのOPIにしろグループ会社ありますけども、20%から40%でいい。
支配しなくてもいいじゃないか。
支配しようとするから中央集権になる。中央集権だから、それがボトルネックになって大企業病になる。

[戦略的シナジーグループイメージ図]

私がイメージしている組織体の図はこういうことです。

[自立×分散×協調]

戦略的シナジーグループがどんどん分散・分権型で、自立している。
分散型で、そして協調しあう。

だからこそ自己進化する。自己増殖する。

誰か中央集権を持ってコントロールするのではない。

ソフトバンクというのはただの投資会社だ。よくこれを理解していただけないほとんどの人にそういう非難を受けます。

私はいずれあなたがたも理解する時が来るでしょう。300年以内には。
そういうふうに腹の中で思っております。

[グループ5000社に]

30年以内に5000社くらいにしたい。
自立・分散協調型の戦略的シナジーグループを。

今日現在約800社です。
本当に数えたのか?
嘘でも800です。

(笑い)

ちゃんと数えた。ちゃんと数えて800です。
これを5000社にしたい。

[人生50ヵ年計画] [人生50ヵ年計画2]

私は19歳のときに人生50ヵ年計画というものを作りました。
20代で名乗りを上げる。自分の業界に名乗りを上げる。会社を興す。
30代で軍資金を貯める。1000億2000億という規模の軍資金を貯める。
40代でひと勝負かける。1兆2兆と数える規模の勝負をする。
50代である程度完成させる。モデルを完成させる。
60代で継承する。

この5つのステージの50ヵ年計画を19歳のときに作りました。

[60代 次の世代に事業を継承する] いま52歳。
60代になったら次の経営陣にバトンを渡さなければならない。ある意味ソフトバンクの最大の危機はそこにあるのかもしれません。

突然その日を迎えるのではなくて、準備をしたい。

[ソフトバンクアカデミア]

来月、開校いたします。
ソフトバンクアカデミア。

[アカデミアの語源]

アカデミアの語源はプラトンが紀元前約400年ぐらいに作った学校であります。
何の目的で作ったかというと、その当時の統治者、王様ですね。あるいは将軍。
そういう統治者、次世代の統治者を育成するために作られた学校でありまして、哲学を中心にプラトンが教えました。

真の統治者になるためには、数学を覚えるとか、科学を覚える以上に大切なのは、哲学だ。

[ソフトバンクアカデミア、2010年7月開校]

ソフトバンクの次の時代を担う統治者、経営陣を育てたい。
それがソフトバンクアカデミア。

[後継者育成、実戦、最重要職務]

一言でいえば孫正義の後継者を育成します。

事業部長とか部長を育成するための一般的な会社でいう社員教育の場ではありません。
社員教育プログラムはほかにもいっぱいあります。ソフトバンクに。

初めて後継者育成のための学校を作ります。
目的はただ1つ。
「孫正義2.0」を作る。

もちろん一人で達成できないかもしれないし、リスクがあってもいけないので、300人の生徒を入れる。将来の可能性のある人物。
そのうちの30人くらいは外からも招きたい。
将来の「孫正義2.0」。

さっきなんかね、来てた人。
(会場にいる人に向かって)名前なんでしたっけ? ノムラさん? 候補になれるかもしれない。

(笑い)

30名は外からの後継者候補を入れる。
270名はソフトバンクグループからの後継者候補。
私自身が毎週行います。
毎週水曜日の夕方5時から、夜まで。
私自身が初代校長先生としてソフトバンクアカデミアを責任を持って運営します。

後継者を1ヶ月2ヶ月で育てるのではなくて、10数年かけて、直接私がきつく指導して、競争させて、後継者育成プログラムを作ります。

[ソフトバンクバリュー]

たとえば。例をあげます。
ソフトバンクバリューとして、後継者にはこんなことを学んでもらいます。

[21世紀のプラトンアカデミーに]

ということで21世紀の統治者育成のためのアカデミー、プラトンアカデミーに相当するものを作りたい。

[ソフトバンク新30年ビジョン]

これが、ソフトバンクの新30年ビジョン。

[最先端のテクノロジー、最も優れたビジネスモデル]

もう一度繰り返します。
最先端のテクノロジーでありさえすれば、同志的結合で外からどんどん仲間を増やして、最も優れたビジネスモデルがあれば、ソフトバンクの社員がゼロから作らなくても、同じ志を共有する仲間であれば、アリババとかタオバオがいい例ですが、ヤフージャパンもそうです。同志的結合をどんどん増やしていく。

[情報革命で人々を幸せに]

ただ一つのために。繰り返します。
情報革命で人々を幸せに。

[アインシュタイン]

アインシュタインも言っております。

人は他人のために存在する。
何よりもまず、
その人の笑顔や喜びが
そのまま自分の幸せである
ひとたちのために。
そして、共感という絆で結ばれている
無数にいる見知らぬ人たちのために。

無数にいる見知らぬ人たちのために、人は存在している。

[マザー・テレサ]

マザーテレサも言っております。

この世で一番大きな苦しみは、
独りぼっちで、
誰からも必要とされず、
愛されていない人々の
苦しみです。

それがもっとも苦しみである。
孤独で誰からも必要とされない。

[孫正義社長の祖母]

最後に、見慣れないおばちゃんの写真。

私にとっては大切な大切な人物であります。
14歳で日本に渡ってきた。14歳で結婚しました。相手は37歳。私のおじいさん。
彼女は私のおばあちゃんであります。

途中で戦争も体験しました。
生きていくのがやっと。
泥水をすすって、飢えから子どもたちを守って、せいいっぱいという状況。

日本にいて、韓国の国籍で、言葉もカタコトで、知り合いも頼る人もいなくて、14歳で渡ってきた。つらいですよね。わからない何も。
14歳ってまだ娘ですよ。中学生です。
一人で見知らぬ国にやってきた。
つらかったと思います。

[祖母の画像の前の孫社長]

私の父、私の母、父はもう中学のときに家族を経済的に支えて、一生懸命仕事をしました。

大変苦しい苦しい生活の中で這い上がってきて、ヤミの焼酎をつくった。豚を育てた。なんとか生きてきた。

そんな中で私が生まれた。1957年。
私が生まれた頃にはすでに少しは生きていける、トタン屋根のボロボロの部落の家に住んでましたけどね。

私の戸籍は佐賀県鳥栖市五軒道路無番地と書いてある。
無番地ならわざわざ無番地って書かなきゃいいのに。
不法住居ですから。自分たちの土地ではなくて、国鉄の線路脇の空き地にトタン屋根で板を貼って住んでるわけですから、正式に戸籍を認めるわけにはいかない。
ということだったんだと思います。
無番地で生まれました。

私が今でも覚えていますが、3、4歳の頃、おばあちゃん可愛がってくれました。毎日散歩につれていってくれた。
父と母は一生懸命に、本当に一生懸命に仕事しておりましたので、いつも留守ですね。
私を子守してくれたのはおばあちゃん。毎日おばあちゃんが「正義や、散歩いくぞー!」
僕は喜んでおばあちゃんについていく。

おばあちゃんが散歩行くぞーというときはリヤカーですね。
リヤカーに乗って、しがみついていく。
あんまり言いたくないですが、今でも覚えている。
リヤカーが黒っぽいんですね。すべるんです、ぬるぬるして。
そのリヤカーはドラム缶を半分に切って3つ4つ積んであって、そこに飼っている豚のえさを、残飯をですね、鳥栖の駅前の近所の食堂から残飯をもらって、それを集めて豚のえさにして育ててる。

私は小さいからわからない。ただリヤカーに乗って楽しく行ける。ただなんとなくぬるぬるして、なんか腐ったような臭いがして、雨上がりのでこぼこ道で、水溜りですべったら落ちて死ぬなあ、と思いながら、「しっかりつかまっとけよー」ついていってるわけです。

おばあちゃん大好きでした。
その日は忘れられない。

大人になって今見るとリヤカーなんて乗りたくない。恥ずかしい。でもその頃は子どもだから別につらいということはなくて、楽しかった。

そのあと少し物心ついてくると、あれほど好きだったおばあちゃんが、大嫌いになった。
なぜ嫌いかといったら、おばあちゃんイコールキムチ、キムチイコール韓国。
そうするとそれにまつわるさまざまな、生きていくのにつらいことがあるんですよね。
あまり例をあげたくないけど。やっぱりつらいこといっぱいある。

そうするとやっぱり息を潜めるように、隠れるようにして日本名で生きているわけですね。
ですからなおさらそれがコンプレックスになってる。

あれほど好きだったおばあちゃんが、大嫌いになった。
避けて通る。そういうふうになった。

そんなときに、私の父が吐血をして入院した。
家族の危機ですね。
1歳年上の兄は高校中退して、泣き暮らしている母を支えて、家計の収入を支えて、父の入院費、家計のサポートをする母も一生懸命仕事する。

僕にとってはもう突然降って湧いたような家族の危機ですね。
なんとしても這い上がらないといけない。どうやって這い上がるか。

私は事業家になろうと、そのときに腹をくくったんですね。

一時的な解決策ではなくて、家族を支えられる事業を興すぞ。
中学生のときに腹をくくりました。

そのとき、「竜馬がゆく」を読んだんですね。
目からウロコでした。
いじいじぐずぐず言ってた自分が情けない。
人種だとかなんだとか、そういうつまんないことで悩んでたということ自体が、ちっぽけな人間だったなと気づいた。

そこで事業家を志して、アメリカに行こう、アメリカに渡ろう。
言ってみれば脱藩のようなものだ。

母は泣きました。友だちも先生も、全員とめました。
ばあちゃんが心配するぞ、行くな。泣いて泣いて泣いて泣いて暮らしました。
母は毎日泣いてました。
「行くな、そんなわけのわからない怖いところに行くな。行ったら帰ってこれんようになる」
僕は振り切って、俺はアメリカに行って、事業家になる何かタマを見つけてくる。そこで何かつかんで、日本に帰ってきて事業を興す。
絶対に家族を支えてみせる。

親戚のおじさんとかおばちゃんには言われました。イトコにも言われました。
「正義、お前はなんて冷たいヤツだ! 父親が血を吐いて、生きるか死ぬかのところでさ迷ってるときに、お前の父を置いて、一人でアメリカに行くんか。お前のエゴのために行くんか」
言われました。

私は言い返しました。

「そんなんじゃない、家族を支えたいから行くんだ。
もうひとつついでに言っとくなら、今まで自分が悩んできた国籍だとか、人種だとか、同じように悩んでいる人たちがいっぱいおる。
俺は立派な事業家になってみせて、孫正義の名前で、みんな人間は一緒だ。証明してみせる!」

心に誓ったんです。

[泣きそうな孫社長]

その決意をしてから、ばあちゃんに言いました。
ばあちゃんごめんね、あんなに優しくしてくれて愛してくれたばあちゃんを、俺は大嫌いだと言ってしまった。

ばあちゃん、俺を韓国に連れて行ってくれ。
アメリカに行く前に、自分が忌み嫌ってきた先祖の国を見てみたい。韓国につれていってくれ。

ばあちゃんと一緒に二人で二週間ぐらい韓国をまわりました。
ばあちゃん喜んでくれた。
「正義、一緒に韓国いってくれるか。やっと韓国に行ってみようという気になったと。」

二人だけで韓国に渡りました。
小さな村で電気もきてない。やせ細った土地だから人間もちっちゃい。ローソクの中で迎える食卓。
でもみんな、暗いローソクの中で、真っ黒い歯がニッコリ笑ってましたよ。
一生懸命迎えてくれた。
ばあちゃんは僕らの古着のツギハギのズボンだとかセーターを、親戚のイトコのみんなかき集めて大きな風呂敷に詰めて、繕いだらけの服を持っていって、その村の子どもたちにお土産として渡した。

もらう子どもたちは満面の笑みで「ありがとう。日本の洋服はきれいだ」
ばあちゃんからもらうものを受け取って、ばあちゃんのそのときの笑顔が忘れられない。

人様のおかげだ。どんなに苦しいことがあっても、どんなに辛いことがあっても、誰かが助けてくれた。人様のおかげだ。
だから絶対人を恨んだらいかんばい。人様のおかげやけん。

[孫社長2]

私は会社をはじめて2年で大病をわずらって入院しました。
もう死ぬと思いました。

お金じゃない。地位でも名誉でもない。
ばあちゃんがやったような喜んでもらえる、ボロキレでもよろこんでもらえる。
そういうことに貢献できたら幸せだ。

入院したときになおさら思いました。つくづく思いました。

[女の子]

会ったこともない、見たこともない、名前も知らない、カンボジアかどっかの小さな女の子が、泥んこの顔で、りんご1個もらって「ありがとう」。
何か我々ができることをして、誰に感謝してもいいかわからない状況で、心の中で「ありがとう」と。

そういう貢献できれば幸せだ。

[女の子の画像の前の孫社長]

名前も知らない、たった一人の子どもに喜んでもらいたい。

がんばります。よろしくお願いします。

(イメージビデオ“We”)

[We=SoftBank] [Information Revolution 情報革命で人々を幸せに]

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