オラクルCEOのラリー・エリソンと、ピクサーのエド・キャットムルが語る、「スティーブ・ジョブズ」の本当の姿

インタビュアー:エド、君がピクサーで彼ととても近く働いていた時の、スティーブのキャリアについて話してください。なぜ彼はあんなに成功したのでしょうか?

エド・キャットムル:おそらく彼はアップルを追い出されてからの26年間、とても特徴的な時期を過ごしました。最初の段階では彼の評判は悪く、誤解を受けていました。しかし私は彼がその間違いから学んでいたことに気づきました。最後の数年の私が知るスティーブはとても親切で、ほかの人にとても思いやりを持っていました。彼がウォルト・ディズニーのサンドロと交渉したとき、とても強力なパートナーシップや、公平性が感じられました。
初めはそのような感じはありませんでしたが、彼は素早くそれを身に付けたのです。

あなたは限界を試すとき、試す人もいますよね、彼は一番最初にあることをやったんです。貴方は限界を超えようとするとき、一体何をしますか?
よく社長さんたちが言う言葉を使いませんか?
“従業員は私の最も大切な財産であり、文化はとてつもなく重要です”と。

しかしスティーブは、ビルを建てました。
そしてそのビルは私が今まで見た中で最高の労働環境でした。

インタビュアー:ピクサーの?

エド:ピクサーのです。そしてそれはスティーブの設計で、とても文化的だったのです。彼は考えたのだと思います。従業員が最高で、文化も最高という意味ですね。そしてそれを環境に反映させたんです。
普通の社長さんとやることが違うんです。同じ言葉は使わないのです。

ラリー・エリソン:彼は一つのことに集中したり、細かい点に気配りできる点においては、私が今まで見た中で一番すごかったです。見れば彼の自己主張の強さが分かる。彼は少しコントロール・フリークでした。

インタビュアー:そうなの?

ラリー:少しね。それに彼はあらゆる点において関わりたがった。ユーザーに対する点に関しては、例えばi-podです。あらゆる非常に細かい点まで彼はとことんこだわった。

エジソンはこう言っていましたよね。「1%の閃きと99%の努力だ。」
スティーブは努力の神だよ。信じられないくらいに働く人でした。彼は知性があるだけでなく、馬力があった。そしてそれを利用していたよ。全部の課題を解決するまでは疲れ知らずだったね。そんな人は今までに見たことはありません。

インタビュアー:何か彼の集中力には人と違うところはありましたか?コントロール・フリークだったところとか、ほかには?

ラリー:ピクサーでの話をしましょう。スティーブは僕の25年来の友人だった。君も彼とはそのぐらいの年月友人なのかな。彼との最初の出会いはとても面白かったよ。ウッドサイドでご近所同士だったんだ。彼のクジャクが僕の家の敷地に入ってきて、僕を起こしたんだ。友情の始まりって感じじゃない。

(会場、笑い)

ガールフレンドが彼にクジャクをプレゼントしたんだ。
僕が文句を言いに行ったら、「君もあの鳥が嫌いなんだね」って言ったよ。

(会場、笑い)

彼は問題を先送りしないだけでなく、何日でも徹夜しますね。そして今から会おうよって電話が来るんだ。よく会ってたからね。彼は君の家に行ってたように、僕の家にもよく来ていたよ。
でも僕にトイ・ストーリーをまた見せるなら僕は行かないよって言ってやった。

僕は73もの異なるバージョンのトイ・ストーリーを見たんだ。新しいバージョンが、前見たやつより4%問題点が改善されているのはわかってた。でももう僕は見ないぞ。影の動きの違いなんて、わからないよ。でもそれがスティーブ。完璧になるまでやるんだ。

そして一旦完璧になると、少し休憩してまた次の問題へと取り掛かる。でも解決するまでは、取りつかれたようにとにかく集中して仕事をいました。ホント狂ったようにすごかった。それがスティーブですね。

アイディアはよかった。たくさんのアイディアを持っていたよ。

インタビュアー:沢山あったんですね?

ラリー:沢山ありました。そしてそれを製品に反映させるのです。それは信じられないくらい大変なことです。しかしスティーブは反映させていました。いつも彼のではありませんが。
しかし彼はいいアイディアは製品に反映させるでしょう。我々の業界において彼のような人はいない。

ヘンリー・フォードは車を発明してくれました。安く、一般的でアメリカ人が買えるようにしてくれました。スティーブはいいアイディアを製品に取組み素晴らしい製品を完成させました。

エド:私は人々はスティーブを理解していないと思います。スティーブは物語の語り手です。

インタビュアー:物語の語り手?

エド:彼は物語の語り手です。良い語り手は、物語を創り出します。
彼は語り手の要素を持っていました。そして何か新しい企てを考えそしてチャレンジしていました。
スティーブは思いついたらすぐ実行するんです。
まずみんなに打ち明けます。スティーブのアイディアを聞いた人の中にはかなり驚く人もいます。
でも彼は反応を期待していました。
もし誰かが彼に反論し違うことを実施し、それがだめだったらもう一度そこに戻ってやり直していました。
最初は知識の面からいってもアップルとは違い大変だったと思います。それは明らかでした。彼も自分で気づいていました。

でも彼はその情熱を理解し、とても賢明でした。彼は違いを知っていました。
彼はいつ自分が参加すればいいのかわかっていました。それは彼だからわかるのです。
そして彼は我々をサポートしなければいけないことも。なぜなら彼は違いを知っていたからです。
だから彼は全く異なる二つの分野で成功したのだと思います。

インタビュアー:“物語の語り手“という点についてもっとお伺いしたいです。アップルにも当てはまりますか?

ラリー:さっき言ったことを強調しておきたいのですが、スティーブは討論を好んでいたと思います。スティーブはそのアイディアがいい物であれば自分のでなくても人のものでも良かったんだ。
スティーブはいいアイディアを持つ人を絶対的に欲しがっていたよ。とても頭のいい男だったでしょう。
人々は彼を説得できなければならなかった。彼が誰かがある分野において自分より秀でていると思ったら、彼は聞く耳を持っていた。彼は本当に聞き上手ですね。

エド:彼が他人の意見を覆すのは驚きだね。彼は議論好きなんだ、そうしなければならない。でも彼は誰かに言い返してほしいんです。
彼が尊敬しないタイプは、自分の意見をもって、それを強く押し通すということをしない人ですね。

彼はとても閃きのある、カリスマ性を持ったリーダーだった。人々は彼のカリスマ性を信じてチームに居続けた。なぜなら彼のチームがやっていることはとても重要だからです。

マッキントッシュは今のところ昔のウインドウズよりとても優れているんじゃないかな。その他の要素がなかったから勝てなかったけど。スティーブが学んでいく姿を見て、彼にはそういう遺伝子があった、その点に関しては僕も同意するよ。

でも彼はアップルに戻ってくるまでの間に別の技も身に着けて、そしてアップルではすべてをコントロールすることができたんだ。もうその他の部門においても弱さを持っていなかったから、その限界を超えることができたんだと思う。

私は彼が職を失ったのは、取締役会と十分な話し合いを持たなかったからだと思います。わたしも彼は自分で自分の身を危険にさらしてしまったと思います。なぜなら彼は自分の業績に頼り切っていたからです。どんなに素晴らしいことをやったかに。
彼は自分は他の人とは置き換えることができない存在であることをアップルの社員に認めてほしかったのでしょう。

インタビュアー:貴方はスティーブの仕事の業績、仕事の功績などを見本としたい人たちにどのようなアドバイスをしますか?どうしたらいいか教えてくれませんか?このスタジオにいる人達にでもいいし、このビデオを見ている人にでもいいです。

エド:スティーブをコピーするには、まず表面から始めるね。概念としてスティーブをコピーすることは間違っているから。
その理由の一つとしては、人はみんなユニークなものだから、彼をまねしようとしても、それは彼の一部でしかないしそれでは上手くはいかないよ。
そして彼はホントに独特だったから、彼のようになろうとすることは、、、

インタビュアー:どういう意味ですか?

エド:どのように考えるか、限界を探るのか、保守的な考え方に自分自身を縛り付けるか、には基本的な原則があると思います。そして何かから目をそむける方法もね。
スティーブにはその能力があった。ほとんどの人にはないと思います。彼らの自身の考えで活動することができる。どのように問題を解決して、どのように自己開示していくのか。
そして彼らは素晴らしい結果を残すんだ。

ラリー:スティーブはコピーできないよ。
自分自身にいくつかの基本的な質問をしてみるとします。もしあなたが彼のような人だったら。
要するに、もし仕事で未解決の問題があったら、あなたは他のことを考えるでしょう。

もしあなたが自分がスティーブみたいかどうか知りたかったら、簡単です。あなたは仕事においてこれらの深刻な問題について以外は考えることができない、またはそれしか考えられない。そして解決するまでは徹底的に取り組む。そして次の問題に進んでも解決するまであきらめない。
解決するまであきらめない。
その粘り強く、衝動的な人格が、この驚くようなそして粘り強く衝動的な人格は、成功者には珍しくないことですが。粘り強く生真面目な人格が、スティーブの特異な天才さと、合体すると、それが美的センスさ。建物についてさっきも話したように彼は建築設計が好きでした。彼はアマチュアの設計士でした。彼は製品の設計が大好きだった、彼は、、、

インタビュアー:彼はエンジニアだったはずでは?プログラマーではなく。

ラリー:彼はプログラマーではなかったですね。そして僕はご存じのとおりプログラマーさ。
ただ彼には十分な知識があった。内部のことにはね。製品の内部についてはマイクロプロセッサ、OSなどそれらの技術に関してはとても素晴らしい知識を持っていました。

とても賢い男だった。学ぶのが早いのです。プロのプログラマーではなかったけどね。しかし彼のシステム全体に対する理解は、製造過程を一から始めることを可能にしました。システム全体に関してはね。どうやって組み立てるとか。
もしあなたが、彼のような美的センスと粘り強さを兼ね備えていたら、それは彼の創造性に富んだところですが、そうしたら君は次のスティーブ・ジョブズだ。

インタビュアー:それが判定方法ということですね。

ラリー:簡単ですね。

インタビュアー:要するに自分自身が判定基準を満たすほかにいい方法はないということですか?

ラリー:いやいや多くの学ぶべきことはありますよ。しかし、スティーブの後になろうとすることは、
要するにそれは、「どうしたらいいんだろう。ピカソみたいに描きたいな。どうしたらいい?もっと赤い色を使うべき?」と言っているのと同じことなんです。

アップルは世界で最も価値のある会社になった。
そしてそれはスティーブのゴールの一つでさえなかった。
彼はお金持ちになろうとしていなかった。
彼は有名になろうともしていなかったし、権力を持とうとも考えていなかった
彼は創造する過程に魅せられてそして美しい物を作ることにただただ集中していただけなのです。

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