[対談:家入一真×鶴田浩之①] 面白いWebサービスづくりの基本は、「拝借」と「熟成」の掛け合わせにアリ

―― 今回の対談テーマは「新しいアイデアをどう生み、どうサービスにするか」ということなんですが、お2人には共通して次々と新しいアイデアを生んできたイメージがあります。どんなスタイルで日々仕事に取り組んでいるのでしょう?

家入 鶴田くんはとにかく行動が速いよね。『prayforjapan』の時は驚いたよ。

鶴田 きっかけは本当に身近なところにありました。 ブログにも書いてるんですけど、3・11の時は自動車免許取得の合宿で仲間と(栃木県の)那須にいて、そこで震災を体験したんです。停電中の一時避難所で、Twitterだけが唯一の情報チャンネルで、いろいろな情報が飛び交う中、海外から寄せられている応援メッセージの数に圧倒されて。「この動きを可視化できるWebサイトを作りたい」と思って、2時間後にはサイトを公開しました。

家入 へぇー。

鶴田 その後アクセスが集中した時には、サーバをレンタルしていたpaperboy&co.の方にめちゃめちゃお世話になりました。

家入 あの大震災の直後にそういう視点で物事をとらえられるところとか、すぐにアイデアを実行できちゃうところがすごいんだと思う。僕の場合、自分自身は全然アイデアマンじゃないし。

鶴田 えっ、そうなんですか? じゃあ家入さんはどうやってサービスづくりの発想を膨らませるんですか?

家入 例えば普通に飲みの席とかでも、いろんな人が思いつきで話をするでしょ。「こういうサービスがあれば良いのに」とか、「こんなことができたら絶対ヒットするよな」とか。でも、たいての場合、言い出しっぺはそういうアイデアを形にしよう、なんて考えてない。僕はそういうのをパクって生きてきた(笑)。鶴田くんはどうなの?

鶴田 僕、実は発想から実現できそうなアイデアにしていくまで、2週間とか2カ月とか、長いときは2年間かけてじっくり”熟成”させるタイプなんです。それで、自分の中で何となく全体像がイメージできてくる、ある”域値”に達したら、そこから先は家入さんと同じです。人と話したり、アウトプットを重ねながらアイデアを膨らませていきます。

「ポリシーのあるパクり」が目新しいサービスを生む

家入 そうなんだね。僕は基本的に思いつきとパクりで生きてるからなぁ。

鶴田 (笑)。『CAMPFIRE』もそのパターンなんですか?

家入 あれは飲みの席でパクったわけじゃないけどね。アメリカに『Kickstarter(キックスターター)』という資金調達のためのソーシャルサービスがあって、あれを見つけたのがきっかけ。

鶴田 あのサービスは確かに新しかったですよね。

家入 1円ずつでもいいから、ネットを通じて世界中の人に支援をしてもらい、パトロンになってもらおう、という発想を知った時には「これはっ!」って思ったね。ただ、そこで考えたのは「もっと日本人の価値観やカルチャー、感性に合うサービスにしたらどうなるんだろう」ってこと。それで、なら日本人のオレが作っちゃおうと。

鶴田 家入さんが作ってきたものって、「人を応援するサービス」が多いですよね。レンタルサーバの『ロリポップ!』もそうでしたし。僕が中学生のころからWebの世界に入れたのは、『ロリポップ!』:のおかげなんです。学生はお金がないですから、お小遣いでサーバをレンタルできるこのサービスがなければ、何も作れなかったはずです。

家入 僕、もともとは絵描き志望だったんだよね。でも学生の時に分かっちゃったの。「オレ、才能ねーな」って。だったら、クリエイティブ分野で頑張ってる人を応援する側に回ろうと。だから、そういうサービスが多いんだと思うよ。paperboy&co.でも、「Webで何か面白いことしたい」って人に向けて、「じゃあ安く用意するから活用してよ」という気持ちで『ロリポップ!』をスタートしたんだ。

鶴田 「場所は用意するから使っていいよ」という発想って、ここ(注:この取材は家入氏がオーナーを務める渋谷『ON THE CORNER』で行われた)とか、カフェ事業でも一緒ですよね?

家入 そうそう。そうなんだよ。

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