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Skype創業者が語る「起業家精神とビジネスの秘訣」Part1

スカイプ創業者ニクラス・ゼンストローム氏の講演
「起業家精神とビジネスの秘訣」の書き起こしです。

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聞き間違い、わからなかったところ等ありますがご容赦ください。
(ご指摘歓迎いたします)

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司会:
今日のゲストは、ニクラス・ゼンストロームさんということで、既に説明するまでもなく、皆さんSkype等のソフトウエアを使って、それを創業した人だということは周知のことだと思います。

簡単に、いろいろな業績をもたれている方なので、掻い摘んで紹介させていただきますと、2001年にP2Pファイル共有ソフトの「Kazaa」を開発して、その「kazaa」を社名にCEOに就任されました。その後、2002年から同じくP2Pの技術を応用したインターネットのIP電話サービスですね「Skype」、これを開発されて大成功を修められると。その後、2007年には新たにインターネットテレビ配信システムの「Joost」を立ち上げて共同会長に就任されておられます。

最近では投資会社の「ATOMICO」を経営されていて、これもまた皆さんご存知だと思うのですが、「Last.fm」ですとか「fon」、それから「Technorati」と呼ばれる、大きな成功を修めている新興の企業15社以上に投資をされておられます。

ビジネス以外にも近年は気候変動や人権、社会起業家精神に対する慈善援助を目的とした「Zennstrom Philanthropies」という組織を創設されて慈善活動にも積極的に取り組まれていらっしゃいます。

今日はですね。日本に何度か来られているそうですが、日本の大学を訪問されるのは初ということで、逆にいうと皆さんの質疑の盛り上がりが日本の大学生の印象を決めるということで、プレッシャーを与える訳ではないですけれど、ぜひおもいきって元気よく質問を投げかけてもらえればという風に思います。

それでは早速これから、ゼンストロームさんお招きしたいと思います。ゼンストロームさん、よろしくお願いします。

(拍手)

ニクラス:
みなさん、どうもお招きいただいてありがとうございました。
日本には何回もビジネスのパートナーとの関係もありまして来日しているのですけれども、今回皆様とお話今日できることをとても嬉しく思っております。今日は起業家として成功するためには何をすればいいかということをお話に参りました。

皆さんの多くは、起業家は学校を卒業していないで会社を興したのであるという風に思われているかと思うのですけれども、実はそれは違いまして、成功した起業家の中には大学に行かなかった人ももちろんいるのですけれども、また何人もが自分の転職は会社を興すことであるということに気付くのに随分時間がかかったというようなタイプの人もいるわけです。

私自身は2つの学位をもっておりまして、1つは経営、もう1つはエンジニアリング、コンピュータ科学のフィジックス関係でございます。科学系であります。私は「Tele2」というノルウェーの電気通信会社に10年勤めまして、それから起業家としての旅を始めました。どちらの方法で、つまり学校を卒業してから、もしくは若くて、起業家になる道というのはいろいろあるわけでありまして、若くても歳をとっていても素晴らしい起業家というものはいるものなわけです。

例えば「Facebook」のCEOでありますマーク・ザッカーバーグ氏を思い出していただければと思います。彼はハーバードを辞めて「Facebook」を立ち上げたわけで、まだ彼は20代前半で会社を興したわけですが、私の場合は30代半ばで会社を興しました。

では、私の話をもう少し詳しくさせていただきたいと思います。
私が立ち上げた最初の会社は「kazaa」といいまして、非常に精巧した音楽ファイルの共有ソフトを設計した会社でございます。が、ビジネス的には残念ながら成功できず、実際のところ音楽業界、映画業界を相手取りまして世界中で5年間も訴訟をすることに至りました。

でもこの失敗から私は多くのことを学びました。例えば、あまり大きな資金が無くても世界規模のサービスを提供できるのだということとか、人と違う考え方をすれば、また形に捉われないそんな発想をすれば大きな影響を周りの人に与えることができるのだ。こういうことを学びました。もうひとつ学んだことがございまして、起業をするということは単に仕事をするということに留まらないということであります。とにかくビジネスに打ち込む必要がありますから、ひとつのライフスタイルとも言えると思います。でもとてもやりがいのあるものだと思います。

この経験から学んだことで一番貴重だったのは、例え成功の匂いがしても、私の場合はこの会社では初めの会社では金銭的には成功できなかった。この経験によりまして、より貪欲になって、なんとしてでも成功しよう、成功を手に入れようと思えたことです。

「Skype」では沢山お金を儲けようということではなくて、本当にまわりに影響を与えたいという気持ちがとても大きく、これによりまして世界中の皆さんがコミュニケーションをとりあうスタイルというものが変わればいいなという風に思って立ち上げました。
大きなマーケットを目指しまして、1兆ドル規模の業界を視野に入れて考え方を根本から変えていけるようなソフトウェア技術を開発したわけですが、その結果、高品質の電話を、また後日テレビ電話を、ほとんど無料で提供できるようなそういったサービスができる会社になったわけです。Skypeユーザ同士が無料で電話ができるとか、国際電話の料金を90%も割引できるようなバイラルソフトウェアを使うことによって、とても革新的な、イノベーティブなビジネスモデルを構築することができました。

何も私だけが失敗から学んだわけではございませんで、この失敗から学ぶというのは何も新しいことでも何でもないわけです。
20世紀のビジネスマンの象徴でありますウォルトディズニーさん。彼は数々失敗を繰り返し、またそれによって大打撃を受けたのですけれども、その度に大きく成長し、そしてカムバックを果たしています。成功を修めた最初のキャラクターの権利を失ったり、次にアートスタッフのほとんどを労使交渉の末、失ったりもしました。でもそういった失敗・挫折の度に状況を徹底的に分析して、そして更なるリスクをとって、また学んだことを生かして、そして会社をより強いもの、強固なものにするために邁進したのです。

このような事例は沢山あるのです。でも実のところ逆境を糧にして更に先に押し進んだということなしに、サクセスストーリーというのが出来上がっているということはほとんどありません。ヘンリー・フォード氏の有名な発言があります。「失敗は単にまた再度始めるチャンスなのだということ。でもその2回目、次はより賢く始めるのだ」というものです。

ほとんどの場合言えることなのですけど、少なくとも私の場合はそうなのですけれども、失敗は成功に欠くことのできない要素だという風に考えています。失敗したからといって恥じることではありませんし、その失敗から学べばいいことなのです。皆さんも夢やアイディアを持っていらっしゃると思いますし、また驚くほどのエネルギーに満ち溢れていらっしゃいます。そしてリスクをとることもできるのです。失敗するかもしれませんけども、それでもいいじゃないですか。それによってより賢くなってまた強くなってもっと成功に貪欲になりましょう。

申し上げていますように、リスクをとると失敗の可能性が生じるわけです。でもそれを言い訳に使って全くリスクをとらない人というのも確かに存在します。でも、今日私の目指すところは、皆さんがこの講演を聴き終わってひとつだけ何かを持ち帰っていただくことなのですが、それができるのであれば、ぜひ最低でも自分の夢の実現のために何かやってみようかなと思ってお帰りいただくことでありまして、それが例え失敗に終わってもいいやとも思って帰っていただければなと思います。つまりその、「やってみよう」というその気持ちが、つまり「リスクをとってもいいや」というその気持ちが、唯一世界経済を苦境から救えるものかもしれないという風に思っているからです。

次の「Google」が日本から、あるいはどこかアジア太平洋地域から出てこない理由はありません。日本はインフラも整備されていますし、またテクノロジーの素晴らしい歴史も有していらっしゃいます。でも日本人もヨーロッパ人も失敗を恐れていると思います。だからアメリカが随分有利な立場にあると言えると思います。アメリカ人はビジネスを次の段階へと導く力を持っているという風に思います。数千万ドルの規模の会社で留めようとはしないで、その次へ次へという風にアメリカ人は考えますので、だからたぶん10億ドル規模以上の大きな会社のほとんどがアメリカの会社なのかもしれません。

では、少し話しが戻りますけれども世界経済の現状について検証してみたいと思います。何かが変わらなければいけないというのは絶対に言えると思います。先進国は財政的に窮地にたたされています。日本の公的債務はGDPの100%をここ何年も越えてしまっています。途上国はその一方で全般的にいい状態でありまして、公的債務の平均残高はGDPの40%程度ということで、長年経済学者が持続可能と言っていたレベルに達しております。

でも、この窮地から世界をどうやって救えばいいのでしょうか。では一番重要で持続可能な形で、このひどい状態から我々が這い上がるにはどうすればいいでしょうか。私は成長だと思います。成長あるのみだという風に思っています。成長というのは実質的な成長、いわゆるリアルな成長でありまして本業の成長、誘起的な売り上げ増というものを指しております。この力強い推進力のみで長期的にGDP成長が実現できるという風に思っております。

早く本業で成長するには、どの分野が一番適しているのかというとテクノロジーの業界だといえます。世界中の人の半分以上が携帯電話を持っていますし、4分の1以上が今やインターネットにアクセスできます。テクノロジーの会社は伝統的な会社よりも、もっと効率の良いコスト構造で仕事が可能なのです。更にテクノロジーは社会の他の分野の成長を可能にするということも言えると思います。いわゆる本当にキャタリスト、触媒的な機能をもっているという風に思います。ブロードバンドと「Skype」を使えば、例えば小さな会社でも世界中のお客様ととても低コストで連絡を取り合う、通信し合うことができます。

「トヨタ」「IKEA」「Google」といった会社の創業者は、他の会社も沢山あると思うのですけれども、いわゆるイノベーション、革新と形を変えた新しいビジネスモデル、この2つを掛け合わせまして世界で大きな変革を起こしたと言えると思います。この先駆者的なビジネスというのは持続可能な比較優位性をもたらしただけではなく、株主に対して天文学的な金額の利益をもたらしています。同時に政府に対しては新たな税収の道を与え、最終的には効率的でコスト効率の良いソリューションというものをお客様にもたらしています。

では最近の革新的なイノベーティブな一番いい事例をご紹介しましょう。
「Google」から説明するのが最適だと思います。「Google」はここ10年間で売り上げゼロから250億ドルの会社へと成長しました。直接的な雇用を何万人規模で創出しましたし、間接的な仕事はそれ以上創り出していると思います。そしてその過程で何百億という税収を叩き出しています。テクノロジー分野以外で起業をして、毎日何億人もの人のコミュニケーションの仕方を変えられる分野があるでしょうか。

「Skype」は、国際電話サービスの事業会社として世界最大です。国際電話8本に1本は「Skype」経由なのです。「Facebook」や「Twitter」を見てください。オンラインでの交流の方法を根底から変えたのがこの会社だと思います。テクノロジーの世界は早いスピードで変化をしています。規模を拡大して、そしてマーケットに非常に大きな影響をもたらしています。
「Skype」もかつては従来のweb1.0の会社、第一世代の会社である「eBay」とか「AOL」よりも早く成長していたのですけれども、今は「Jenga」とか「グルーポン」といった新しいインターネット会社がありまして、もっともっと早いスピードで成長し続けています。つまりアイディアがあれば2~3年で10億ドル規模のビジネスになるという可能性を秘めているのが今の時代だと思います。

起業家は大きなリスクをとって、そして夢にかけてみる。未だかつてないチャンスが今こそ到来しているという風に私は思っています。私たちはこういった起業家の皆さんを後押しして、より大きく考え大胆になっていただきたいという風に思っています。
もちろん、世界を変えるような企業1社につき、何百もしくは何千ものそこまでいけなかった会社とか駄目になってしまった会社というのもあるのは事実です。失敗は健全なことであるということも忘れてはならないと思うのです。ビジネスは、現状や不可能と思われている領域へ入っていこうというとしていることを示しているわけですから、ひとつ確かなのは、やってみないと成功もできないということが言えると思います。

この部屋にいらっしゃる多くの皆さんは、今後どのような仕事に就こうかなという風に考えていらっしゃるのではないでしょうか。いい会社は一番いい人をとりたがります。でも覚えておいていただきたいのは、誰も「起業家になりませんか?」という風にして就職先を斡旋してくれるということはありません。有名な会社が競って雇ってくれようとしている中、起業家になろうという風に思うというのはまともじゃない選択肢だという風に思うかもしれませんけれども、でもせめて考慮にいれてみたらいかがでしょうか。

もし起業家になったとしても最初は失敗するかもしれませんが、それでもいいのではないでしょうか。先ほども申し上げましたけれども、失敗をするということとリスクをとるということはアメリカの風土では容認されています。この風土があるからこそ、世界を変えるようなテクノロジーの会社が過去20年間で世界のどの国よりも多くアメリカで立ち上がって、そして成功しているのかもしれません。
でも、世界はどんどん小さくなってきていますので、アメリカの重要性というのが相対的に薄れてきています。中国とかインドとかブラジルとか、こういった世界のそうそうたる新興国は先見の目をもってインフラ整備とか政策を推し進めています。攻めの姿勢で自国の起業家を育てて、海外から優秀な人材も受け入れようとして、そういった将来図というものを描いているわけです。もしこういった国が失敗とかリスクとかを許容するようになれば、次世代の世界を変えるようなビジネスが全てこういった場所から発信されるのかもしれません。もちろん日本も同じようなことをしなければならないと思います。
イノベーションの競争が始まり、それによって将来の世界の力関係が決まっていくはずです。この競争の中で成功するということは、神から与えられた権利などそんなものを持っている人は誰もいません。

では、素晴らしい企業を興すためには何から始めればいいのでしょうか。一番大切な要素は、賢くそして熱意がある人で、しかもアイディアを目標達成まで追及していこうという風に献身的に働いてくれる人、こういう人たちを集めるということです。実際どの会社にとっても人材は一番大切な資産という風に言えると思います。こういった活力とか力強さがあるかというのを、私がテクノロジー投資会社を今もって「ATOMICO」という会社ですが、「ATOMICO」としてはそこを重視して会社を見ています。
もし皆さんが起業をしたいという風に思っていらっしゃるのであれば、ぜひ時間をつかっていいチームメンバーを集めてください。一人で会社を興すというのは稀なことです。

最高の起業家は大きな野心を持っていて野心的に考えます。世界を変えたいという風に思って、その過程でたくさんのお金を儲けるわけですが、「イケア」の創業者のイングヴァル・カンプラドさん、この人がいい例だと思います。もちろん他にも沢山こういった人はいるのですけれども、成功してお金を儲けることというのは別に悪ではないのです。素晴らしい革新がもたらしたこと、それを成功した会社をつくった、それを受けてつくったからこそ得られた自然な結果が利益なわけですから、むしろ奨励されるべきだと私は思っています。

賢くまた熱意のある人たちに加えて、早く大きくなりたいという企業は大きな市場のチャンスを捉えていく必要がございます。普通は消費者とか企業が苦しんでいるところに目をつけて、その問題を解決する何か策・ソリューションを提示するという形をとるといいと思います。マーケットがなければビジネスというものはそもそも成り立ちません。

最後に、会社はまたとないユニークな製品とかテクノロジーもしくは革新的なビジネスモデルというものが必要になってきます。これによって真の持続可能な、また比較優位性を保てるような形でビジネスをしていかないといけないわけで、いわゆる追随的な『me too ビジネス(聞き取れず)』、そういったビジネスモデルですとなかなか成功はできないと思います。

全ての今申し上げたような要素が揃ったとしても、成功する会社には適当な投資家の援助が必要だと思います。では投資家に対して起業家は何を期待すれば良いのでしょうか。まずは何よりも投資家にはお金を持っていてもらわないと困りますね。お金は木になりません。でも素晴らしいアイディアを持った素晴らしい人たちのためにその資金を使おうと思っている人はいるわけで、資金というのは沢山あります。

2つ目のとても大事な要素としましては、創業者といわゆる起業家と投資家は事業目的とかビジョンとかを共有しなければなりません。もし一方が世界を変えたいという風に思っていたとしても、他方が2千万ユーロで事業から撤退すればいいやという風に考えていたならば、この先問題が生じてきてしまいます。あなたの為、ご自身の為のいい投資家というものを見つける必要があると思います。全ての投資家が同じというわけにはいきませんし、自分に合う相手をぜひ探していただきたいと思います。ここで忘れてはいけないのは、素晴らしい起業家だけが実際ビジネスが構築できるということ。良い投資家というのは、いい形でその企業に価値を与えることができるということであります。一方、悪い投資家というのは素晴らしい企業があったとしても、それを駄目にするということしかしません。

纏めに入らせていただきますが、世界で最も豊かな国は今苦境に立っています。全ての国は政府の債務レベルが高い。そして、そこからでも私たちは学ばなければならないと思います。あちらこちらで起こるべきこと、これから起こるべきことは3つありますので、これから説明します。

まず第1点目ですが、新の本業の成長に集中することです。特にテクノロジー的に革新的な企業というものを優先していくといいと思うのですが、税負担の増大とか公共投資の削減というのは、この債務問題の長期的な解決策にはならないと思います。

2つ目のポイントですが、政府と社会双方が会社を興して大きくしやすい、そういった環境をつくってあげるべきです。そして、もっと大きな変化を起こす革新的なことを推奨するべき、そういった姿勢を持つべきだと思います。イノベーションは長期的な債務を支払うために必要不可欠なものだと思いますが、もっと大事なのは、そのイノベーションこそが社会の継続的発展の基礎であるということです。

また3点目ですが、最も優秀で貪欲な起業家にリスクをとってもらう。そして場合によっては頻繁に起こるかもしれませんが、失敗をしてもそれを奨励するということをしなければならないと思います。これによって世の中を大きく変える次世代のビジネスが育つという風に考えています。誰もどこにいようとも現状に満足している場合ではないと思います。皆さん自身が自分の将来を切り開いていかなければならないと思います。そのやり方ですが、イノベーションを奨励して、また起業の際にはリスクをとっていく、これが大事だと思います。

そして皆さんは過去10年の失敗から学ぶことが幸いにでもできる立場におられます。イノベーションが起こらなかったからこそ、日本の経済はこの10年打撃を受けています。このように振り返ることができるというのは、ある意味恵まれているとも言えると思います。

最初の部分で、皆さんにこの教室を出る時、皆さんが失敗するかもしれないけど自分の夢にちょっとかけてみようかなと思ってくださればいいなと、これが今日の私の目的だという風に申し上げました。でも、皆さんがみんな生まれつきリスクをとるタイプの人間ではないというのも事実ですし、皆さん生まれつきの起業家、全員がそうであるという風なことも絶対にないわけです。実際に皆が起業家いわゆるリスクテイカーになれるわけでもありません。でも、ここにいらっしゃる皆さんの何人かが、とりあえず自分の夢にかけてみようかなという風にちょっとでも思ってくださればいいなという風に今思っておりますし、そして、実際にそれを実現させるために、何人かの皆さんがもう動いていてくださればさらに嬉しいなという風に思っております。

ご清聴ありがとうございました。

司会:
どうもありがとうございました。
ゼンストロームさんから非常に含蓄のある深みのあるお話を頂戴できたと思います。

冒頭に申し上げたように、せっかくの機会ですから、これから皆さんとゼンストロームさんとインタラクティブにQ&Aを始めたいと思います。遠慮なくどなたからでも、どんな質問でも結構だと思います。どうぞ手を挙げて。
はい、女性。マイクの担当者が皆さんのところにマイクを持っていきます。最初に所属とお名前を言って、それから質問をください。

学生:
タイから来た学生であります。シンプルに質問を提示させていただきたいと思います。
ほとんどの人が失敗から学ぶということ、学ばなければならないということはもう認識していると思うのですけれども、大事なのはどういう風に学ぶか何を学ぶかというHOWの部分だと思います。
ですからお願いしたいのは、ご自身が経験からどのようなことを学ばれたか、その辺について言及していただけますでしょうか。

ニクラス:
ご質問ありがとうございました。
1つ私の事例で、「Kazaa」という初めの会社を立ち上げたときの経験についてお話したいと思います。当時は私どもがこういったビジネスをやる際には、エンターテイメント業界のどこかの会社とパートナーシップを組んで仕事をしなければいけないということを知りませんで、それをしませんでした。ただただ早く成長したいというところばかりに目がいっておりました。でも、毎回自分で自己分析をするということはとても大事です。自分を批判する、見つめる、そして何が学べるか、そこのところもご自身で考えられるのがとても大事だと思います。

司会:
ありがとうございます。
質問を受ける前にひとつ言い忘れたことがありまして、今日は会場にはほとんど学生で埋まっていると思うのですが、中には社会人の方と、それからプレスの方も一部入っています。
今日は申し訳ないのですけど学生の質問を優先してとらせていただきますので、社会人の方ちょっとご遠慮いただければと思います。

学生:
素晴らしいスピーチをありがとうございました。慶応大学2年生のタケウチと申します。
ひとつご質問をさせてください。先ほどご経歴の中で、まずは30代半ばまでは会社にお勤めでいらっしゃったという風におっしゃっておられました。そしてそれをお辞めになって「Kazaa」を立ち上げられたということですが、何故そういった決断に至られたのでしょうか。何年もお仕事をなさっていて、そのキャリアがあった訳ですけれども、何かきっかけがあってご自身に何かの変化があって起業をしようと思われたのか、その辺の経緯を教えていただけますか。

ニクラス:
私の場合は、この会社員をしていた経験で気が付いたことがありました。
会社の為、もしくは他人の為に働いている自分というのがそこにいまして、何か自分の為に、もしくは自分の仲間の為に仕事がしたいなあという風に思うようになりました。そして自分の夢を実現したいなあという風に思うようになったからです。

司会:
他にいかがでしょうか。

学生:
慶応3年のキタガワと申します。
3つほど質問をさせていただきたいのですけど、1つ目は、ニクラスさんの場合はエグジットとかを目的に起業をされたわけではなくて、技術とかサービスを皆に使ってもらいたいという思いで始めたと思うのですけど、P2Pとかって始めていくと悪い面もいっぱい見えてくると思っていて、そういう悪い面が見えてきた中でどうやってそのモチベーションを保ったというか、何故この技術の可能性をずっと信じきれたのかなというところをお伺いしたいのと、2点目は、さっき日本からイノベーションが出てくる可能性があるという話だったのですけど、アントレとかって技術とかアイディアとか以外にもファイナンスがすごい大事かなと思っていて、そうやって考えたときにちょっと日本のVCとかがいけていない、いけていないというのはパフォーマンスがどんどん落ちているし、且つあまり見る目がないとか、そもそもエグジットできる環境ではないという色んな構造的な問題があると思うのですけど、そこら辺はどう考えているのかというのかどうやったら良くなるのかなと思っていらっしゃるのかということと、最後は今ファンドを運営していらっしゃると思うのですけど、ファンドを運営するときに、そのイノベーションを伸ばすためにやっていると思うのですけど、どうしてもファンドレイジングをしてきた人たちにとリターンを返さなければいけないというときに、どうしてもイノベーションをとるのかお金をとるのかと迫られるときがあると思うのですけど、二クラスさんの場合はどちらをとられますか。

ニクラス:
まず1つ目の質問ですけれども、創業者というのはとにかく信じていかなければいけない、自分のやっていることをやっぱり信じてそこでぶれない様にしなければいけないと思います。自分自身もそうですし、また周りの人たちをもやる気を喚起していくというのはとても大事だと思います。疑いたくなるときもありますけど、とにかく前を見て、自分及び周りの人を信じる方向に向けるということが大事だと思います。

「Kazaa」に関しましては、ある時点でビジネスとして持続可能であるということはちょっとこれは無理かなという風に思いまして、それが明らかであったものですから、じゃあということで、同じそのP2Pテクノロジーというものを使って、では別の会社をつくろうという形で道を選びました。

最後のご質問は確か、イノベーションかその利益、お金の部分かという話だったと思うのですけれど、我々はビジネスとして投資をやっているわけですから、その投資先を見ていく際に、イノベーションのみを見ているわけではございません。むしろビジネスとして今後ポテンシャルがあるか、成功が潜在的に可能なのかというところを見て判断をしています。でも投資としましては、こうした投資リスクが当然ございますのでポートフォリオというものを組んでおりまして、現在私どもは35社に投資をしております。その中で成功する会社ももちろんあるでしょうが、失敗に終わる会社も出てくると思います。

あとは日本のベンチャーキャピタルの話をされておりましたが、小さいという風におっしゃっていましたが、おっしゃる通りだと私も思います。ですからアメリカのベンチャーキャピタルのようにちゃんときちっとした形で出来あがっている訳でもないし、最近ヨーロッパではもっともっとという形でこのベンチャーキャピタルが出てきていますが、日本は必ずしもそうではないと私も思います。
とはいいましても、成功しているネットの会社というものはあるわけで、例えば日本でも「楽天」という成功者がいると思います。ヨーロッパで我々が「Skype」を立ち上げた際に、その成功を見て沢山のヨーロッパベースで国際的なこういったベンチャーキャピタルが起業というものがうまくいくのであるということを多くの人が思ったと思います。ですから日本でも時間がかかるかもしれませんが、プラスの方向でいい方向に、このベンチャーキャピタルの市場というものが発展していくのではないかという風に思っています。正しい適切な会社であれば、またそうした起業家が興した会社であれば資金調達も必ずしやうまくいくと思います。

司会:
ありがとうございます。はい続けていきたいと思います。他の方いらっしゃいますか。

Part2「Skype創業者が語る「起業家精神とビジネスの秘訣」Part2」に続く

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