記者:
現政権に限らないんですけれども、「政治的リーダーの不在」というのが、かなり不信感の根っこにあるように思うんですけれども、今の日本の現状の中で「政治的リーダーシップ」を考えたときに、どういう点が足りなかったのか、どういうリーダーシップが今求められているのか、ちょっと概念的な質問なんですけれども、お聞かせ願えますか。
橋下市長:
「リーダーシップは仕組みによって規定される」というのが僕の持論ですから、議院内閣制では無理ですよ。400人も500人も国会議員を束ねながら、そして常に選挙があり、そんな不安定な状況で、陣頭指揮とれるかっていったら、無理です。
僕は4年間の任期があり、そして議院内閣制ではないですから、そこまで議会に対して気を遣う必要はなく、やっぱり議員さんとの付き合い、議員さんから信任を受けようと思ったら、有権者の皆さんに信任を受けるのとは全く別のいろんな政治活動が必要になってきますからね。僕は直接有権者の皆さんから信任を受けてる。4年にいっぺんの選挙でいい。そして有権者の皆さんとはそんなにべったりウェットな関係を持たなくても、自分の主張さえ理解してもらえれば、信任してくれると。
しかしこれが、議員さんの間での信任ということになれば、365日の付き合いをしなければならないわけですね。これじゃあね、リーダーシップなんて発揮できるわけないですね。だからこれ仕組みが悪いっていう、それだけだと思いますけどね。
今の日本の議院内閣制の仕組みだったら誰がリーダーになったって同じですよ。
記者:
真に(国政の中で)リーダーシップをきかせようとすれば、首相公選制に変えるしかないということですかね。そうすると、根本的な憲法改正というのが必要になりますけど、そこまで機が熟さないといけないと思われているんでしょうか。
橋下市長:
ただ、みんなの党さんが首相公選制の法案を、今考えてくれてます。憲法改正しなくても。参考の投票、国民投票という形で、憲法改正しなくても、という案を出されるらしいですから、技術的にはそういうことも可能なんでしょうね。あとは、政治グループをつくる時に、同じような政策と言いますか、同じような価値観を持ったグループになるかどうか、その1点だと思いますけどね。
同じような価値観を持ったグループになったとしても、小選挙区制で、「選挙がすべてじゃない」とかいろいろ言われますけども、民主主義の世の中で、「じゃあ選挙以外でどうやったらものごとを決めれるんですか」となったら、選挙しかないわけですよ。ものすごい重要なわけですよ。ある種投票によって決定権を渡すわけですからね。
だから、「どうやって代表を選ぶか」なんてのは一番重要なのに、日本では選挙がものすごい軽く扱われてきたものですから、選挙制度なんて本当にボロボロですよ。非論理的な、各議員が当選することだけを目的としたシステムになってます。
だって今の制度考えてみてくださいよ。首相が仮に誕生してもですよ、全国の国会議員は、全然その首相の力なんて関係ないわけですよ。自分は自分で通ってくるわけでしょ。僕はこの公選職の立場に立って良く分かりましたけれども、最後は自分が通るかどうかが一番重要なわけですよね。だから別に首相の力で通ったわけじゃないっていう思いがある、そういうメンバーが集まってる人間の集団の中で、リーダーなんか誕生するわけないじゃないですか。
本当に政治が機能するようにするためには、党の内部的な統治のルールをしっかりする。イギリスの政党なんていうのは、公認権とかそういうのを執行部に持たせて、選挙区を鞍替えさせるなんていうのを平気で執行部がやるわけですよ。
だからね、話し合いも重要だし、コンセンサス・合意をとるのも本当に重要なんだけれども、多様な価値観を認めて、多様な価値観に基づく議論を認めれば認めるほど、「決定する仕組み」っていうのは絶対に必要なんですよね。
日本っていうのは、「みんなで議論しましょう」「多様な価値観を認め合いましょう」多様性多様性って言って、決定できる仕組みを否定し続けてきたので、誰もリーダーシップを発揮できないという状況になってます。だから、今首相公選制という形までダイレクトにいかなくても、僕は首相公選制があれば一番リーダーシップを発揮できるとは思うんですけどもそこまでいかなくても、政党のルールを、内部統治のルールをきっちり定めれば、機能するかも分からないですね。執行部というところが公認権を持ち、組織の中でしっかり「誰がリーダーで、誰がメンバーなのか」ということを制度上しっかり作るということが重要だと思いますよ。
今、維新の会は、かなりそういう形になってますよね。議論はして、議論はするけれども最後は多数決で決めるとかね。執行部が決めたことは、基本的にそれは決定権にするとか。そのあたりをしっかり組み立ててるんで、なんとか議員さんグループもひとつにまとまってるのかな、と思ってます。