斑目春樹氏の質疑@国会事故調文字起こし パート4

石橋 ただ、ちょっと細かいことになりますけどもね、あの、このストレステストは、かなり、その、応急的なと言うか、要するに基礎体力を高めるという話ではなくて、たとえば具体的にまあ、大飯3号、4号で言えば、その、基準自身の700ガルのその何倍まで大丈夫だっていう話で、で、これのテストの方法も、あの、まあ今結論として報道なんかされてるのは、700ガルの1.8倍の1260ガルまでは大丈夫ですってことになってますけども、あの、その地震動が大きくなれば、当然それは、地震が大きいわけで、ソースが大きいわけで、従って、その、えー、震動の継続時間とかですね、それからスペクトルとか、周波数成分、そんなのが変わってくるわけで、で、あの、指針類に基づいて、その、安全審査、あるいはバックチェックをする時には、そのへんもきちっと見て、要するにプラントの基礎体力というものは高まっていくわけですよね。

だけど、現在日本で行われてるストレステストは、単に倍率をかけるだけで、やっぱり基礎体力を高めるものではないと思うんですけども、そのへんいかがお考えですか。

斑目 あの、原子力安全委員会が、あの、えー、経済産業大臣宛てに出した文書ではですね、あの、えーと、あの、まさにあの、えー、自らのプラントの弱点を、脆弱性をちゃんと把握して、で、頑健性を高めるような、そういう評価をやってくださいということになっております。それに対してですね、一次評価と二次評価という形でやりますというふうに言ってきたのは、これは原子力安全保安院の方で、で、とりあえずそれでやりますということなので、あの、えー、えー、それでけ、それでやるということ自体は了承してございます。

ただ、あの、最終的な目標は、まさに全体としての頑健性を高めることなんで、あの、どうも原子力安全委員会が存続する間に二次評価の結果を持ってきてくださるような気はだんだんしなくなってきてしまってるんですが、あの、最終的には石橋先生がおっしゃるような形での、あの、ことをやっていただきたいと、あの、原子力安全委員会としては願っているところでございます。

石橋 じゃ、ま、最後に伺いますけども、あの、おとといですか、保安院から大飯3号、4号に関しては、ええと、原子力安全委員会に報告が出たそうですけれども、で、あの、報道によると、班目委員長は、この原子力安全委員会が存続している間にですね、まあ、結論、検討結果を安全委員会としても出したい、とおっしゃったみたいですけど、それは今でもそういうお考えですか。

斑目 あの、やっぱり、えーと、できたら出したいと思ってますけれども、これはあの、原子力安全保安院の方の回答次第ではそうでない場合もあり得るというふうに回答してると思います。

石橋 はい、分かりました。どうもありがとうございました。

黒川委員長 はい、どうぞ。

野村 すいません、何度もご質問で恐縮なんですけど、今のストレステストとその安全指針類との関係について、これは次元の違うものであるということはよく理解できたんですけども、その、もともとその安全審査指針類の中に、あの、仮想事故っていう概念がございますよね。これは起こらない事故という、まあ、ことで、起こった場合に、ま、どのぐらいの放射線量が出るのか等々考えながら、ま、その周辺の避難住民の健康被害との関係で検討していくという考え方だと思うんですが、今回ですね、実際この福島の事故では、仮想事故で想定していた放射線量の何倍の放射線量が出たんでしょうか。

斑目 えーとですね、多分、100倍近く出てるんじゃないかと思いますけど、ちょっとすいません、もっと出てるかもしれませんね。

野村 1000倍…

斑目 1000倍出てるかもしれませんね。すいません、あの、計算ちょっとできないんで、ごめんなさい。

野村 私がまあちょっと間違ってなければ、1000倍ぐらいの。

斑目 じゃあ1000倍だと思います、はい。

野村 1万倍で。

黒川委員長 1万倍ぐらいね。

野村 あ、ごめんなさい。1万倍ですか。

斑目 もう、とにかく、すごいです。全然あの、考えたこともございませんでした。

野村 桁が違ったので、1万倍ですけれども。

斑目 あの、はい。

野村 起こり得ない事故として計算していた放射線量の1万倍も出てしまってるわけなんですが、元々の基準が、とんでもなく計算間違いっていうことではないんでしょうか。そういうことについての、あの、責任っていうのはないんでしょうか。

斑目 あの、とんでもない計算間違いというか、むしろ、逆に、あの、えー、敷地周辺には、あの、被害を及ぼさないということの結果になるように考えられたのが仮想事故だと思わざるを得ない。申し訳ございません。これ、定めた時、私自身、安全委員であったわけでないので、想像ですけれども、このあたりはもう、あの、えー、根本的に反省して、えー、再出発するしかないと思ってます。

野村 今おっしゃったことってのは、結局、1万倍出るっていう計算から始めてしまうと、日本のこの国土の中では住むとこがなくなっちゃうっていうような、そういう計算になっちゃうんですよね、おそらく、距離から行けば。てことは、逆に言うと、このぐらいまで人が住んでもいいというふうに逆算すれば、これしか出ないっていう計算をしたんじゃないかっていうご推察だという理解でよろしいですか。

斑目 その通りです。

黒川委員長 それは多分そういうことなんでしょうね。あの、立地の、あの、指針ということがですね、仮定がどっかでずれてきてしまった。元は多分アメリカと同じルールでやったんだと思いますけど、いくつかの仮定の設定が、えー、しっかり見直さないといけないんじゃないかなと思いますけど。それはやるんですかね。

斑目 あ、あの、大体立地指針なるものが必要なのかどうか、ちょっとよく分からない。というのは、立地指針って、非常に変な構造をしてまして。

黒川委員長 そうですよね。

斑目 基本的なことを考えた後、今度は、あの、色んな詳細設計が済まないと、最終的な解が出てこないという非常に変な構造の指針になってますので、もうちょっと抜本的な見直しが必要なんだろうなと、かとは思ってます。

黒川委員長 そこは専門家として何かありますか、石橋さんか田中先生から何か。あります? いいですか、立地指針の話は。一番最初のひと言。

田中 あの、ひと言。

黒川委員長 専門家だから。

田中 田中と申します。えーとあの、ちょっとベントのことについてちょっと、お伺いしたいと思うんですが。

黒川委員長 いや、今立地指針のことちょっと聞いたんです。1万倍の話。

田中 すいません、ごめんなさい。

黒川委員長 駄目? それ。

田中 いや、すいません。

黒川委員長 誰も言う人いない?

田中 いや、今ちょっと別なことを。

黒川委員長 え? うん、どうぞ。

石橋 あの、確かに、根本的に考え直さなきゃいけないというのを、今の原子力安全委員長がお考えということは、大変心強いわけですけれども、あの、要するに、どういうとこなら建てていい、どういうところなら建ててはいけないんだっていうことが、もっとはっきり分かるように、あの、明快なことをですね、ズバッと決めればいいと思うんですよね。それは、あれ、本当にあの、持って回った、あの、言で、しかもあれは1964年、昭和39年ですよね。ですから、あれが未だに生き延びていて、それの改定を誰も、その、責任がある側が言い出さなかったっていうことが、それが、ある意味では、そういうことが積もり積もって福島の事故が起こってしまったわけですよね。

ですから、まあ、今後もその組織が変わっても、多分ご要職に当たられる可能性が(斑目「いえ」)高いと思いますから、もう、是非お願いします。

斑目 あの、多分その可能性はゼロだと思っています。

黒川委員長 はい。えー、田中さん、ひとつだけ。

田中 すいません。あの、田中です。えーと、ベントのことでちょっと、確認だけちょっとさせていただきたい。あの、ベントってのはやっぱり、放射線物質を出すか出さないかっていう非常に重要な問題だと思いますが、あの、聞き間違いじゃなければ、あの、先ほどのご説明の中で、あの、まずベントのことを思いついたというのが、あの、3月の11日の夜のことだったと思いますけれども、その時にはあの、減圧による注水のことを考えて格納容器の圧力を下げようと思ったというふうにおっしゃったように聞こえましたが、それでよろしいですか。

斑目 はい、そういうふうに考えてたと思います。

田中 ということは、その時は水素発生のことは考えてらっしゃらなかったという意味ですか。

斑目 その時点では、あの、えーとですね、あの、水蒸気がどんどん、どんどん、あの、要するにSR弁から噴いて、

田中 分かりました。

斑目 あの、格納容器の圧力が上がってるもんだと思い込んでました。

田中 ただ、それはあの、水蒸気がSRV(逃がし安全弁)(u)?だと、どうして上がるんでしょうか、その…

斑目 あの、どんどん、どんどん、あの、えーと、えー、噴いて、あの、それで…

田中 濃縮してしまいますよね。

斑目 ええ。ですが、だんだん、格納容器の、えーと、サプレッション・プールの水温が上がってって、それで蒸気発生が起こってるのではないかと推察してました。明らかに間違いでしたけど。

田中 そうするとあの、東京電力がその後考える、あの、夜中に考えて、えー、手動し始める、その、準備をし始める、ベントというのとは、ちょっと意味が違ったベントを考えてはった。

斑目 ええ、その通りです。

田中 ああ、そうですか。

斑目 はい。あの、時間が違いますので。ですからあの、格納容器の実際に圧力が上がり出したのは多分夜中を過ぎてたと思いますけれども、そのあたりから私自身は相当に何か色々、あの、頭の中で色んなことを考えて不安になってたと思います。

田中 そうするとあの、水素は、まだその時には発生してなかったんだけど、えー、という、そういう理解をされておられて、その後、だんだん水素のことが頭の中に巡ってきたという、そんな感じでしょうか。

斑目 うーん、もうちょっとその時、とにかく色んなことを考えてたんで、なんとも言えませんけれども、当然水素が、あの、これは炉心が溶ければ水素が発生するのは、これはもう自明ですから、あの、えーと、水素のことに頭が行かなかったわけでは絶対ありません。ただ、それがどの時点だったかというと、ちょっともうはっきり言えないのが実情です。

田中 もうひとつだけ、すみません。あの、水力学的動荷重の研究、多分なされてると思います。

斑目 はい。

田中 で、今回はその地震動に、地震動と水力学的動荷重が重なるとか、そういうようなイメージは一瞬お持ちになったことはございますか。

斑目 今回に関しては特には無かったですね。そういうことよりも、あの、えー、全電源喪失という話をパッと聞いて、で、そちらの方の対策として、どういうことが打てるのかということにばっかり頭が行っていた、という状況です。

田中 ありがとうございました。

黒川委員長 はい。今ちょっとひとつ思って、その、さっき言った、今石橋先生がおっしゃった、その立地審査指針のところがね、その仮想の事故にしろ、重大事故にしろ、今回は全く想定外じゃないけど、全くレベルが違うわけですよね。だから、そういうところまで戻さないと、今度のさっきおっしゃった新しいその法律を作ろうとしてるってのは、そこまで考えてるんでしょうね。

斑目 あの、要するに、今まで日本ではシビアアクシデントは、これはあの、事業者が自主的に対策打っとけばよくて、規制の対象外だったんです。

黒川委員長 あ、そうなんですか。

斑目 しかし、現実にシビアアクシデントが起こったわけです。従って、これからはシビアアクシデントもちゃんと規制の中に入れますということに、今度の法律改正案はなってるというふうに理解してます。

黒川委員長 あ、事業者の責任。

斑目 いや、違います。今度は規制も、あの、ちゃんと関与する。

黒川委員長 今までは事業者の責任だったんですか。

斑目 ええ。

黒川委員長 はあん。

斑目 ですからあの、非常に変なことが起こってまして、あの、多分、あの、田中先生詳しいと思いますが、あの、えー、たとえばベントのための配管というのは、これは、あの、施設公認の対象にすらなってないんです。

黒川委員長 それはまあそうですわ。それは、最近ですよね。もっと後の話ですよね。

斑目 ええと、あの、今も多分なってないんです。で、あの、根本的に見直さなきゃいけないところです。

黒川委員長 分かりました。ありがとうございました。その次に、それでは、健康被害問題について、崎山委員と横山委員にお願いしますね。

崎山 委員の崎山です。よろしくお願い致します。えーと、安全委員会では、あの、住民の、あの、健康被害の防止について、どの程度の優先順位で、あの、考えられていたんでしたでしょうか。

斑目 どの程度のと、まあ、とにかく住民の健康被害を起こさないこと、もうそれはもう第一優先順位だというふうに考えております。

崎山 第一。それで、そのためには、どういう、あの、施策っていうか、指示をなさったんですか。

斑目 えーと、あの、たとえば住民避難の話はですね、これはあの、私がしたのかどうか本当によく分からない形で行われています。しかしあの、3キロ、10キロ、20キロという形で行われている。これが第一点ですね。

で、あとはですね、原子力安全委員会というのは、こういうその、えー、事故が起こった後は、あの、基本的に助言機関ということになります。それで、原子力災害対策本部の方から、色々な、あの、技術的な質問事項がやってきます。で、それに対して、あの、どんどん、どんどん回答してるということをやっています。

で、えー、その中にはですね、えー、たとえば、あの、ヨウ素剤なんかの服用についての質問も多分あったはずですし、それからあの、えー、たとえばあの、えー、スクリーニングって言って、あの、色々放射性物質で汚れてる人をどう対応したらいいかというような質問もあったでしょうし、そういうようなたくさんの質問に、次から次へと答えていた。これがあの、えー、原子力安全委員会の対応でございます。

崎山 ヨウ素剤の配布ということについて、あの、助言なさったわけですね。

斑目 はい、してると思います。

崎山 で、それは、あの、末端までちゃんと届いたんですか。

斑目 あの、未だもって、あの、えーと、原子力安全保安院の方に問い合わせてますけれども、回答がございません。えーと、原子力安全委員会としてはですね、あの、やっぱりあの、えー、そういうあの、緊急時助言組織の、えー、鈴木元先生が、あの、ヨウ素剤を服用させなさいよという助言を与えてるらしいんですが、それがどっかで消えてしまっているという…

崎山 それはどうしてなんでしょうか。

斑目 原子力安全委員会の方でも分かりません。申し訳ございません。

崎山 で、あの、そういうシステムですね、あの、えー、避難所で渡すと、そういうようなシステム自体の問題っていうことには、あの、ならないんでしょうか。

斑目 あの、まさにおっしゃる通りで、あの、えー、こういう時に、えー、えー、ヨウ素剤を、あの、えー、一度集まってもらって渡すなんていうのは、あの、机上の空論に過ぎなかったと思っております。で、そういう意味ではですね、あの、少なくとも、あの、えー、発電所の方の状況が差し迫った時に、すぐ逃げていただくような範囲の方には、各戸配布をあらかじめしておくとかですね、そういうようなことも含めて現在の防災指針なんかの見直しをやってるとこでございます。

崎山 見直しをやってると。

斑目 はい。

崎山 あの、一番初めに、その、安全委員会、ヨウ素検討会議でも、そういう、あの、案は出ていたはずなんですけども、あの、すぐ消えてしまったっていう感じ、あの、私はヨウ素剤検討委員会で、あの、傍聴してたことがあるんですけれども。

斑目 ええと、いつの? いつのですか。

崎山 一番初めのヨウ素剤検討委員会。

斑目 ヨウ素剤検討委員会というのは、安全委員会の方のですか。

崎山 安全委員会が。

斑目 の?

崎山 ええ。

斑目 医療分科会でしょうか。

崎山 ええ、そうです。

斑目 いや、消えてないと思います、各戸配布。

崎山 いえ、あの、その時は消えて、今、今各戸配布してませんよね。

斑目 はい、今してません。

崎山 で、それからですね、あの、えー、4月11日に、あの、安全委員会は、あの、100ミリシーベルトは、あの、健康への影響はないというふうにしていました。で、あの、衆議院の科学イノベーションの委員会で、あの、安全委員の、安全委員会の委員が、あの、100ミリシーベルトで被曝すると、まあ生涯、あの、0.55%のガン死率が上乗せになるということをおっしゃいました。で、あの、4月の時点の、あの、見解で、と、あの、それを5月に変えて、それで、10月の修正っていうこと、あの、ホームページでですね、修正してあるわけですけれども、こういう、あの、基準のアドバイスというのは、どなたがなさってるんでしょうか。

斑目 えーと、あの、基本的には原子力安全委員会では、隅先生が、あの、えー、えー、その分野の専門家ということになってございますが、当然その後ろには、あの、多くの、あの、専門委員の方がついて、えー、書いてございます。そういうふうな文書を作成してございます。

崎山 原子力安全委員会の中の専門委員がそういうことを考えてらっしゃるという。

斑目 ええ、原子力安全委員会、あの、えーと、専門委員っていうのは、えー、ほかに職業を持ってらっしゃる方ですが、そういう方に、あの、えー、一緒になって考えていただいているというのが実情でございます。

崎山 で、それじゃ、えーと、4月の時点のその、えー、ガン、えー、発ガンはないというような、その、見解というのは、過小評価だったっていうことですよね、そうすると。

斑目 4月の時点でガンの発生がないと言った発言が…

崎山 「健康への影響はない」ということは、あの、ホームページにあったわけですけど。

斑目 あ、すいません、私ちゃんと把握してないんですけれども、もしそういうのがあったとしたら、当然それは間違いだと思います。

崎山 で、あの、今度、労働者の被曝のことに関してですけれども、あの、東電の幹部から、その、労働者の、あの、放射線作業従事者ですね、それの、あの、線量限度を、あの、100ミリから250ミリシーベルトに上げるということを相談されて、250ミリシーベルトに上げられましたね。その根拠はどういう…

斑目 えーと、あの、根拠は、これはあの、えーと、ICRPの勧告によりますと、あの、えー、こういう非常事態の場合にはですね、あの、500ミリシーベルトから1000ミリシーベルトというのが、あの、えー、基準になってございます。で、さらには志願者については上限なしというルールを適用してる国もございます。で、あの、私がやったことと言いますか、原子力安全委員会というのは結局助言組織ですから、あの、そういうふうな東電からの申し出に対して、えー、それに対してはICRPなどではこういうふうになってますということを説明して、あの、実際の、あの、省令改正等々は、これは、あの、規制行政庁の方で行われたもんだというふうに理解してます。

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