2011.08.26 日本「再創造」 – 小宮山宏

それでは小宮山参考人より、意見陳述をまずお願いを申し上げたいと思います。
小宮山参考人。

(間)ありがとうございます。そこのパワーポイントのスクリーンと同じものが、お手元に配布されてございます。この、どちらでもお願いしたい。

私は日本の「再創造」ということを、提案しておりまして、今後日本の進むべき道、そのためにどういうイノベーションが必要なのか、というような形で考えてございます。
スライドを送って下さい。

なぜ日本でイノベーションが起きないのか

なぜ、日本はイノベーションということでは、非常に遅れていると思います。イノベーションが起きない。なぜ起きないかと言いますと、科学技術が社会で実験されて、そのうちの良いものが社会を変革していくというのが、新しいイノベーションであります。ここが途上国と先進国との違うところ、先進国は新しい科学技術を社会で実験することが必要で、それによってイノベーションが起こります。途上国には「坂の上の雲を目指して、社会を変えていけばいい」という明確な差があるわけです。

この、先進国になった時のやり方が日本はできていない。どこがというと、科学技術の問題よりは、はるかに社会実験ができない、というところの方に大きなところがあるわけで、この答というのは、一番わかりやすいのは、規制緩和ということになるかと思います。先ほど東北の話が出てございましたが、最後の私の結論は、東北で思い切った規制緩和で、新しい社会を作るということをしていって、それを日本のイノベーションにつなげるべきだというのが、私の本日の、主要な論点に最後はなります。

もう一つは、現状があって、ビジョンがございます。どういうところに向かいたいと。実は、これ途上国ですとビジョンに向かって進むというのが非常に楽なんですね。ほとんど何もないわけですから、作ればいいわけです。
しかし先進国というのは、特に日本に代表されるように非常にしっかりした社会というのがあるわけです。その時には移行プロセスの議論も、同時に極めて重要でありまして、ビジョンも欠落してるんですが、特にこの移行プロセスの議論に関しては、ほとんどやられていないというところ、大きな問題かと思います。
次をお願いいたします。

20世紀の延長戦だけでは再生は無理

20世紀の延長戦だけで再生は無理だという、この議論はですね、とかく現実の…、私も今日、参考人として述べさせていただいておりますけれども、今、力を持っている企業、例えば。そういうところに、聞いただけではですね、将来は見えません。これは、20世紀の延長戦と私は呼んでおりますが、20世紀に成功した形で商売をしているわけです。それは例えば、エネルギー・資源という言い方でいうと、エネルギー・資源の供給を増やして経済成長をする。これは1973年、オイルショックの年までは、明確にGDPの成長とですね、エネルギーの消費量というのは1:1。だんせいじ1:1で成長率しております。そこからパタッと。例えばグーグルが一つ日本にできたと。10兆円のGDPが増えますけれども、エネルギー消費は増えないわけです。こういう、エネルギーとGDPとが1:1でなくなった。これは非常に大きな論点であります。

21世紀はどうかというと、効率化によってエネルギー・資源の消費を減らして、経済成長をするというのが、21世紀のエネルギー・資源政策ということであろうと思います。こういう思いに至った背景を、少し説明させていただきます。
次お願いいたします。

2050年人工物は飽和する

私は、人工物の飽和ということを、年来申し上げておりますが、おそらく2050年あたりで、世界中で、人工物がほぼ飽和に至る。この意味は、例えばこの自動車です。自動車は、日本では、一人あたり0.45台、まあだいたい二人に一台ですね。二人に一台までみんな持っていきます。上の日本からドイツまでを見ていただきますと、二人に一台。人口でもう保有台数が決まるんですね。

これが非常に大きな点で、この時、ポジティブな面とネガティブな面がある。

ネガティブな面は、アメリカの自動車の販売台数、日本の自動車の販売台数は飽和します。日本は5,800万台の自動車があって、12年で廃車になります。そうすると、5,800万÷12。一年500万台というのが、毎年廃棄されて毎年売れていくわけです。ですから、日本の国内需要というのは500万台なんです。自動車に関しては。これを「人口で飽和する需要」という。これが、日本、アメリカ、ヨーロッパ、いずれも内需の飽和ということに、何ていうんでしょう、苦しんでいると申しますか、その基本的な背景。

ただし、ポジティブな面があります。それは新車を作る資源、例えばレアアースとかですね、鉄とか。そういった物は廃車される物の中に含んでいるということです。つまり、メタルに関するなんですが、リサイクル社会を作れば、資源は天然資源は要らなくなる時代が2050年ごろにやって来る。これは元々天然資源を持たない日本にとっては、もっとも良い社会であります。つまり人類はですね、永久に地下から金属を掘り出すという必要はないのです。捨てていけば別ですよ。それが、人工物の飽和という極めて重要な背景。
次をお願いいたします。

人口一人当たりセメント生産量

それでは、アメリカ…、あのう今、世界は中国の需要、もちろん中国だけではございませんが、先進国になろうとしている人たちの需要によって、経済が引っ張られているというのは、皆さんご存知の通りでございます。そうすると中国が一体いつ頃飽和するかというのは、極めて知りたいところで、私もいろんな指標から調べております。結論は意外と飽和は早い、ということです。

これはセメントの生産量です。縦軸は一人当たり何トンのセメントを生産しているかというのを、年別に取っていったもの。そうすると下の面積がですね、各国、トータルとして今まで何トン、セメントを一人当たり入れたかということです。一番下の緑がアメリカです。アメリカは一人16トンのセメントを国土に投入しています。一人当たりですね。3億人の人口がいますから、3億×16トン、48億トンのセメントを、アメリカに高速道路としてあるいは空港として、塗ると、アメリカの今のインフラが出来上がったということです。で、同じようにフランスが、その上の黒ですが、フランス22トン。日本は29トンです。国の、山が急なんでダムが多いとかですね少ないとか、そういった国情の違いはございますが、大体一人当たり20トン、入れると先進国の今の必要なインフラは出来るというふうに見ることができます。次は急速に伸びている青が、中国でございまして、これは一人当たりですので、昨年中国は世界のセメント生産量の55%を作っております。そして去年まで2010年までに、中国が投入した量が既に一人当たり14トンになります。さきほどのアメリカの16トンというのを思い出していただきますと、あと1年ちょっと。もうすぐですね、アメリカと同じ一人当たりのセメントが中国に投入されます。

このことは驚くべきことでして、ほとんど同じ国土の大きさ、アメリカと中国ですね。に、人口が4.5倍いますから、中国にはアメリカの4.5倍のセメントが塗られる、ということで、この意味はいろいろ議論しておりますけど、わかりません。もしかすると既に、もう要らないものを作っているという可能性すら感じさせる。いずれにしても、いずれにしても、中国が、インフラの整備というような形で、世界の需要を引っ張っていくという時代が、そんなに長く続くとは思えない。というのがいろんな指標からの結論でございます。
次をお願いいたします。

2種類の需要の相乗化が戦略

そうすると私たちは、二種類に分けて、考えた方がいいんじゃないかと。需要をですね。一つは、普及型の需要。今、車の例を申し上げましたけど、家・車・新幹線・原子力発電所といったような、普及して飽和していく形の需要。これが今、20世紀にもの作り産業が行っていることです。これを私は20世紀の延長戦と言っております。ここを負けるわけにはいきません。というのは、これで今日本は食べているわけですから。従ってこれが、高度成長するに向かう、ここの競争に負けないように国が支援していくというのは、極めて重要な問題であります。

しかし大事なことは、今の産業をそうやって支援しているだけでは、21世紀の新しい戦いに遅れるよ、ということであります。ここがポイント。私の、今日の科学技術・イノベーションというところというのは、創造型の需要の方に力点があるのだろうと、思います。じゃあ、創造型の需要って一体何があるんだろう。これの一つがグリーンイノベーション。これはもう申し上げるまでのこともない。もう一つがシルバーイノベーション。今後、高齢社会が世界にやってまいります。中国でさえですね、2015年に、もうあと4年ですよ。あと4年で生産年齢人口、15歳以上64歳以下という年齢が、2015年でもって減り始めます。これは中国の明確な高齢化であります。高齢化というのは、世界が抱える課題ですので、これを、ここに膨大な産業がある。

ここを日本は率先して、開拓して、世界にリードした新しい産業を作っていく。これをシルバーイノベーション、今日はこの二つを申し上げますけども、もう一つ、ゴールドイノベーション。情報技術に基づくというのが極めて重要でありますが、こうした新しいところ、つまり日本の戦略というのは、経団連に代表されるような、20世紀の延長戦を負けないように勝ちつづけつつですね、同時に21世紀のイノベーションというのを、強力に推し進める。20世紀の延長戦が強すぎるものですから、この21世紀の新しい方がどうしても遅いんですよ、日本は。ここが最大の問題というふうに、私は考えます。
次お願いいたします。

「日本は乾いた雑巾」論は誤り

例えば、エネルギーの問題・CO2の問題、ここに関しても、日本は「乾いた雑巾であってもう減らせないよ」という議論もありますが、これは間違いです。なぜ間違いかというと、それは物づくりに関する話。日本の物づくりというのは、確かに、1973年のオイルショック以降ですね、強烈な効率化をやって、例えばセメントなんか1トン作るのに今、1960年代の半分しか使っておりません。あのう、これだけ効率化をした。ところがアメリカのセメントなんてのいうのは、もうあんまり進歩してないんですよ。中国は進歩してない技術を使っております。ですから先ほど言ったように、55%のセメントを作っている中国が、1トン当たり日本の1.7倍のエネルギーを使ってるんですから、中国は日本の技術入れればいいんですよ。その方が彼らにとっても得なんですよ。長期的に考えて。

そういう状況にありますので、物づくりで日本がこれ以上CO2を減らすというのは確かに経団連を中心におっしゃるようにですね、苦しいんです。しかしここで見ていただくように、エネルギー消費あるいはCO2の発生というのの、43%に過ぎません。物づくりは。これ2007年ですけどもっと減ってますよ。おそらく。43%。43%が減らせないけれども、左側、家庭・オフィス・輸送。この、これは右側で物を作って、左側で生活をするというふうな分類をしてございます。ですから、家庭・オフィス・輸送、こちらはだぶだぶです。これはもう本当に多く減る。

日々の暮らしがだぶだぶ。私の家はちなみに81%、CO2を減らして、快適でございまして、あと2年ぐらいでもって初期投資を回収いたします。つまり、経済的に成り立って、CO2が減って、しかも快適になるという道がいくらでもあるのが、家庭・オフィス・輸送。こっちでも良い物づくりでリードして、左側の日々の暮らしでCO2を削減していく。これが、これがグリーンイノベーションですし、これを世界に広めていくというのが、日本のグリーンイノベーション、日本がグリーングロースをしていくということであると思います。ですから、日本はCO2を減らせないというのは間違いで、日本の成長を阻害しているわけです。
次をお願いいたします。

冷暖房エネルギーは10分の1に

ごく普通の、二つだけ例を申しますが、冷暖房が一番、オフィス・家庭のエネルギーの使用の大きいところです。これの対策としては二つです。

一つは、家の断熱を良くすること。私の前の家、これ普通の家です。それと新しく造った家、これも今の普通の家です。これ建て替えるだけで大体断熱が3倍良くなります。これは、冷暖房のエネルギーが1/3になるということなんです。極めて重要。最大のエネルギー消費が1/3になっちゃうんですよ。しかも快適になるんです。ここが重要ですね。

それからもう一つが、機器ですね。エアコン。日本のエアコンというのは、世界の標準的なエアコンの半分しか電力を消費しません。これが、少ししか造ってないから、高くて日本の国内でしか売れてなくて、ウォルマートだ何かだっていうのは、まったく他の国に抑えられているというのが、ガラパゴス化ということですよ。日本の。ここが日本の弱いところであります。物は良いんです。1990年のエアコンと去年売られたエアコンとは、電力消費は60%減っております。

冷蔵庫に至っては、20年間の間に、電力消費が1/5に減っております。20年前のエアコンをお使いの先生方は是非ですね、買い換えていただくと電気代が1/5になります。私は13年間使った冷蔵庫を買い換えて、1/3に電力代がなりました。20,000円、1年に電気代が得しました。私の冷蔵庫は140,000円です。ですから7年で元が取れちゃうんです。これをやると、私の生活は快適になります。冷蔵庫の場合ですと大きさが同じだと、内容量が350リッターから430リッターに増えました。これは断熱材が今は、日本のは真空断熱材で薄くなってるからですよ。

だから、同じところに置いても、広くなるわけです。もちろんきれいになります。それで電力消費が1/3に減ってですね、私の製品は東芝から買いましたので、東芝が喜ぶと。これをもう少し大きく敷衍すると、生活が快適になって、電力消費が減って、お金は回収できて、日本の産業が強くなるわけです。これがグリーングロースということであると思います。
次お願いいたします。

給湯エネルギーは8割減

まだ、あまり普及していない極めて重要な日本の先端商品が、給湯です。給湯は、家庭で一番大きなエネルギー消費です。給湯のエネルギーというのは8割減る。あるいはほとんどなくなってしまいます。皆さん方が、家庭でお使いの瞬間ガス湯沸かし器、あそこで燃やしてるガスというのが、なくなっちゃうんです。

これが非常に大きな大変な商品で、一つはヒートポンプタイプ。これは電力系の会社がつくっているエコキュートという商品名で発売されているもの。それから燃料電池。これはエネファームという名前で発売、石油系・ガス系が発売している。どちらも素晴らしい商品であります。これを中で「どっちがいい」とかいう神学論争をやってるのが、日本の情けないところで、これは、ほとんど、世界でも一番大きな給湯のエネルギーがなくなっちゃうぐらいの、グリーングロー…、イノベーションの代表製品ですから。これを世界に早く売っていく。そのためには補助金つけたっていいんですよ。補助金つけるならこういうところにつけて、グリーングロースを引っ張っていくというのが必要だと思います。
次をお願いいたします。

省エネは回収できる投資

これは、省エネは、先ほど申し上げましたが、日本の産業がエネルギー効率を上げたというのは、人類のためにやったわけではございません。これはフリーマーケットで、初期投資が必要なわけですけど。エネルギー効率上げるためには。初期投資がエネルギーコストの削減で回収できるから、企業が投資をしていったわけであります。つまり回収できる投資が省エネルギーなんですね。私の冷蔵庫の例も、今、申し上げたのは同じようなんです。つまり、冷蔵庫からエアコンから、石炭火力発電所に至るまでですね、効率を上げるというのが、一番大きなエネルギー源なんです。

原子力を、太陽電池が補完できるかどうかというような議論にすぐ行きますけど、これは間違い。一番大きなエネルギー源というのは省エネルギーなんです。そしてここで日本は、イノベーションの種を山ほど持っているわけですよ。私は今ごく一部の例を、ご紹介したわけです。ここで日本は世界を引っ張るべきなんです。
そうすると、次お願いいたします。

2050年エネルギー自給率70%を目指せ

これが私が、2050年のビジョンとして提案しているエネルギーに関する絵で、今日は細かいことを申す時間がございません。ご質問いただけば是非お答えしたいと思いますけれども、省エネルギーでエネルギー消費を55%減らします。2050年までに。そうして現在18%、原子力が止まってて減ってきてますけれども、18%の純国産エネルギーを含めた国産エネルギーですね、これを32まで増やします。太陽電池・風力発電・バイオマスエネルギー・地熱・中小水力の総動員です。これによって、32まで増やす。そうすると日本は、70%のエネルギー自給国家になれるわけです。これが私の提案しているモデル。20年以上提案しておりますけど、なかなか聞いていただけません。最近ようやく、少し目を向けていただいて、ここに呼んでいただいたんですがね。
次お願いいたします。次お願いします。

2050年資源自給国家

私はこれが日本のイノベーション、グリーンイノベーションの今、議論をしました。グリーンイノベーションのビジョンの…、として、提案しているものです。資源自給国家。一次資源が安く買える時代というのは終わりました。私は学生の時代に1バーレル1ドルだった石油が、今100ドルしてて、この後300ドルになるんですよ。それを「日本は資源の輸入国家だから」と言っていて、次世代に日本を引き継ぐことはできません。食料だって間違いなく価格が上がっていくわけです。なくなるわけではありませんけど、価格が上がっていくわけですよ。

それを「日本は輸入国家だから」と言って、引き継ぐことはできません。一つ一つ、根拠もございます。エネルギー70%というのは、今ざっと申し上げた話。鉱物資源70%っていうのはリサイクルです。都市鉱山ですよ。リサイクルをきちんとやることで、鉱物資源の70%をリサイクル品。ま、本当は100%って言ったっていいんですけど、2050年に。30%はまあ、物事100%はいきませんので、30%ぐらい輸入してもいいか。それから食料70。今40ですね、カロリーベースで。木材は24%です、昨年。こんなものは世界に対する犯罪ですよ。70%の森林のある国でですね、24%しか自給していないと。それで世界のNGOから日本は、世界の森林資源を侵させる元凶だと言われてるんですから。これは事実ですよ。日本が、森林を開発して林業を開発して、このキーワードは、大規模化と機械化とサプライチェーンの構築、これの全体像を作ることですよ。

ここで社会的な条件を突破することですよ。様々な。これをやって、初めて、端材として出てくる膨大なバイオマスが、エネルギーの方にも効いてくるわけです。そうですね。今のこと結論を申しますと、水が最大限の資源に私はなってくるというふうに思っております。水があって、食べ物があって林産資源があって鉱物資源があってエネルギー資源がある。これが、一次資源ですよね、最低限必要な。これを70%供給できるようになったら、日本は本当に強いし、そこには十分、科学技術的な根拠がございます。そこを目指すべきだというのが、私のグリーンイノベーションでの提案です。
次お願いいたします。

機能的健康度の変化パターン

もう一つがシルバーイノベーションで、是非ですね、年金だとか介護だとかという議論を、このデータをベースに議論して下さい。これは、秋山弘子さんという、世界のジェロントロジーの分野のリーダーですが、彼女が60歳以上の人々を6,000人、20年間、150人のインタビューアを動員して、20年間フォローした結果です。これのそれの男性版ですが、どうやって人間のアクティビティが落ちてくるか。肉体的なアクティビティ。お風呂に入れるかとか、散歩ができるか階段が登れるかといったようなことを、それから知的なアクティビティ。電話を一人でかけられるか、買い物に一人で行けるか、一人で行って帰ってくるかですね、ちゃんと。もう一個ちょっと忘れちゃいましたけど、6項目。6項目で調べた。

そうすると、赤、70%の人は70代の後半ぐらいに、なんか脳溢血やるとかなんかで、どこか膝がおかしくなるとかなってきて、90ぐらいで亡くなられる。11%ぐらい、国会議員の先生方はこういう人がけっこういるんですけれども、11%ぐらいはですね、90になってもまだ落ちてこない。こっちはいいんですよ、はっきり言うと。左側ですよ。20%近い人はですね、60代の前半でやるんですよ。何か脳障害とかやるわけですよ。そしてここを見て下さい。そこ、その下這ってるでしょう、72ぐらいから90ぐらいまで。こういう人たちが長期の介護になるんですよ。ここをどうするかという議論をするのが、どうやって活気ある高齢社会を作っていくかという議論じゃないですか。

その、年寄りに金をもっと払わせるのか若い人が払うのか。そんな議論をいくらやっていたって答が出るわけはないんですよ。そこの答というのはここにあって、どうやって左側の20%の人を減らしていくか。これが個人にとっても幸せということですし、社会の負担も減っていくと。良い高齢社会ということになる。ここに膨大な産業がある。一つはやっぱり、良い家をつくることですよね。日本の8割の、脳溢血・脳障害の8割は11月から2月の間に起きています。これは、やっぱり、凍えるように寒い、お風呂の脱衣場とかトイレとかそういう所で倒れているわけですよ。そこを例えば断熱のいい家にすれば、そういうのはなくなりますから、それが減れば結局良い高齢社会にもつながっていくということですし、膝の筋肉が落ちちゃっただけだって、買い物に行けなくなるわけですよ。ここにサポーター型のロボット、膝にこう、ちょっとこうやればできるようなサポーター型のロボット、こういうものを…があれば、、外に出られるじゃないですか。そうすると左側にならずに右側になれるんですよ。

こういうような物づくり産業。例えばオンディマンド・バス。これは、「買い物弱者」こんなことを言っていて高齢社会が良くなるはずはない。外に出て人と接触しなければ、人は呆けるんです。これはもうこの要因分析でよくわかってきております。例えばオンディマンド・バスを走らせて、隣の若い人に車に乗っけてってもらわなくても、買い物に行けるようにするような社会システムを作る。オンディマンド・バスを入れて、この左側を右側に持っていく。そういうところにシルバーイノベーションという新しい産業が起きて、これが中国をはじめとする世界に膨大な輸出産業となるわけですよ。そのシステムが。ここを考えていかないと、日本のイノベーションの議論はできない。
次お願いいたします。

日本のビジョンはプラチナ社会

日本の、私は、ビジョンは何かというふうに今、議論をしております。これは結局ですね、三種の神器とか言って、皆が物を欲しがって成長していったのが高度成長社会ですよ。そのもう、欲しい物がないんです。車も持ってるし家も持ってる。5,800万世帯があって、日本には5,000万軒の家があります。家が余っているんです。だから数は充足してるんですよ、もう物は。その時にぼくらは何が欲しいんだという議論。これが今後の社会ですよ。この競争が先進国、日米欧がしている競争なんで、競争の本質なんですよ。

その一つとして「社会システムどうするんだ」と。「資本主義このままやっていけるのか」と。修正する必要があるんじゃないかという議論もその一つですよ。そこを我々は考える。今私たちはプラチナ社会というものを考える。一つはエコロジーだろうと。やっぱり中国に行って、昼間晴れてたって、この間北京でもって、太陽は赤黒くあるわけです。ああいうところに住みたいとは思わないんですよ。物をもった後で。我々はやっぱりエコロジー。資源の心配なんかも欲しくないというような、したくないという意味でのエコロジー。それから、世界が高齢化に向かうんですから、高齢者を含めて人々すべてが参加できる社会だと思うんです。それからやっぱり、60歳でですね、定年になってさようなら、という社会というのは成り立ちませんよ。この後。長すぎる、人生100年時代にとって。

ここで、やはり、一生人々がそれなりにですね、成長し続けられる社会、これは生命科学的な背景も出てきてます。平均すると死ぬ二年前まで、条件が揃うと人間の脳の可塑性というのは残るんです。成長できるってことなんです。そういう意味で人が成長し続けられる、そして雇用があると。これがおそらく、ぼくらが欲しい社会なんじゃないか、わかりません。ここが一番議論すべき点だと思います。一応その、物があるという社会で、次の社会というのを「プラチナ社会」というふうに定義いたしました。登録商標を取ってございますので、使う時には是非ひとこと。
次をお願いいたします。

市民と産官学との直接連携が節電に動いた!

そしてまあやっぱり、中央集権だけでは無理だろうと。先日道州制のシンポジウムも行われましたけれども、中央集権だけではやっぱり無理であると。やっぱり自治体をベースにですね、市民が自分でもって前に進むという体制を作らないと、今後日本はないだろうと。「国は何やってるんだ」という議論をしているだけでは前に進めないだろうと、思います。そうした思いにご賛同いただいて、100の自治体が、だいたい100、100ちょっとですね、現在参加してございます。
それから、その次をお願いいたします。

これは、こういうシステムを作っておりますので、今回の…なんでしょう、電力危機に、幸いにして東京電力は極めてゆうゆうと、電力危機をクリアできると思いますけれども、もちろん工場・オフィスも協力したんですけれども、市民も私は相当協力していると思います。これは今分析しております。それを動かした一つは「低炭素社会戦略センター」という、科学技術振興機構のセンターがございます。ここでの様々な研究を、プラチナ構想ネットワークを通じて自治体に広げていった。自治体はPTAのネットワークとか、様々なネットワークで市民に直接連絡するということを行いました。
次をお願いいたします。

Network of Networksが運動論の答だろう!

結局ですね、現在48の市・県・町が参加して、これ東京電力管内でございます。東京二十三区の多くを含めですね、栃木県も福田知事と宇都宮市長とが連携して全体に…、どこまで浸透したかこれはこれからやらなくちゃいけませんが、こうしたことが必要なんだと思うんです。今回の津波でも、警報を出しても聞いた人と聞かない人といるわけですよ。それで、うまく連携が取れる、人々の間に連携が取れるところと取れないところとあるわけですよ。これは、日頃からいろんな形でね、市民が参加するという民主主義を作っていかないと、その時だけに安全のために津波警報だとだけ言ってても、僕は駄目だと思います。こういうものを作っていって、例えば今の、ネットワーク・オブ・ネットワークス、これが多分、今後の民主主義の運動論ではないかというのが、私の考えです。
次をお願いいたします。

国内多数事例の構造化で見えてくる:林業の例

国内で、多数の事例を、これは先ほど申し上げた「林業100%の自給率を2050年に目指す」というのは極めて妥当だというふうな、結論に至った理由でございまして、プラチナ構想に参加している多くの自治体で調べます。そうすると一所懸命はやってるんですね。でも基本的に言うと、一点突破のパッチワーク。バイオマスでもって、ボイラー入れて、自然エネルギーですねと言っているというような、一点突破のパッチワークがあるだけです。全体像がまるでない。パッチワークと補助金の垂れ流しというのが、基本的な構造ですから、これを、うまく設計していくというのを、今始めているところでございます。
次をお願いいたします。

イノベーションは統合的な変化

イノベーション。イノベーションというのは、統合的な変化だと思います。科学技術というのは、局部の発見・発明であります。これを社会と結びつけるというのは、極めて大きな作業が必要なんです。これをやるところが今ないんです。あるとすると企業だけなんですが、これだけでは、駄目。ここに、国も関与することがあるんだと思います。

けれど私たちの関与の仕方というのは、今言ったようなやり方で調査した結果、林業を再生すればバイオマスも成立するし、林業再生の鍵というのは、大規模化と機械化とサプライチェーンの構築だと。これで21世紀林業の創生だと。これは、用材、木材ですね。それから紙、エネルギー、さらにはキシリトールとかいったような様々な高付加価値物、こうした物のサプライチェーンをトータルで設計すると。ここに様々な地域を当てはめていくと。そういうトップダウンとボトムアップの掛け算がないと、日本の林業は復興しないと思います。
次お願いいたします。

新しい産業・新しい雇用・日本の再創造

私は三つのイノベーションが必要だと思います。これはグリーンイノベーション、シルバーイノベーション。今日申し上げませんでしたけども、日本で一番遅れてるのは、科学技術の観点か言って、一番遅れてるのは情報技術です。情報技術自体はそんなに負けておりません。この間幸いスパコンでもって世界一取り返しました。こういう技術で負けているわけではありませんが、社会への導入、社会での活用というのは、もう途上国以下です。情報技術、これだけ進歩してきた情報技術というのが、社会でもって殆ど活用されていない。国際的に比べて。これが問題ですよ。逆に言うとここに膨大なイノベーションの種がある。
次をお願いいたします。

東北復興で「イノベーション=日本再生」

私は、東北だと思います。日本はもう、リスボン地震でもってポルトガルが二度と浮かび上がらなかったという、1755年でしたかね、事例を思い出すまでもなくですね、今度の東北というのは、ライジングサンからサンセッティングにかかっている日本にとって、強烈なダメージですよ。しかし、ここにチャンスもあるんだと思いますよ。というのは、20世紀型の、20世紀の社会が日本は非常に強いから、良いから、21世紀への移行ができないという構造があるんだけど、なくなっちゃったんですから。東北で。東北の一部でですね。あそこに新しい良いものを創りましょうよ。だから私は、それは港を復興するとかねセメントも重要ですよ。だけども、18兆円でしたっけ19兆円でしたっけ、そのうちの相当部分、できるだけそんなのコンクリートほど金はかかりません。の部分をプラチナ社会を構築する、私の言い方をすればね。言い方はいろいろいいです。

新しいイノベーションのための投資に向けるという決意が、僕は重要…日本にとって、今後の日本にとっても決定的に重要なんだろうというふうに、考えております。具体的には私は宮城の復興会議の、議長をお引き受けしてやってきました。例えば、あの地域にブロードバンドは光でもって全部張る。これ決めましょうよ。たいした金じゃないですよ、兆と比べたら。それができると、スマートグリッドの種にもなるインフラだし、それから医療ですよ。医療でもうカルテが全部流れちゃったんですから。その新しいカルテを作って、カルテを共有してね、東北大学のお医者さんでも、町のお医者さんでも、同じカルテを同時に見れると。MRIも一回撮ればですね、あっちでもこっちでも見れると。当たり前じゃないですか。今のクラウドでもって情報技術の時代で。それを、医師会の一部のですね、古い人たちが反対するからってやれないのが今の日本なんですよ。

それをやるんですよ、やっぱり東北で。それがイノベーションで、科学技術をいくらやってたってイノベーションは起きませんよ。ここが、私の申し上げたいところです。だから復興特区。やりましょうよ。総合的な復興特区。ここで、東北で新しいものを作って「なるほどああいう良いことができるんだ」というものが見えればね、見えれば他のところにも入りやすくなると思います。

最後のスライド…最後ですか?、先進国は、日本は今まで二番手。二番手…まあ明治の時代には百番手くらいだったんでしょうけれども、そこから一気に二番手かヘタをすると、一人当たりGDPが一位になったこともあるんだから、一番手まで来たわけです。だけども先進国というのは、二番手三番手では勝てないんですよ。イノベーションを最初にやらないと、勝てないんですよ。今イノベーションやる人たちが皆アメリカ行っちゃうんだから。アメリカ行っちゃうんですから、種もってる人たちが。それで科学技術イノベーションって言ってたって、できるわけがないじゃないですか。ここですよ。だから、これ一枚目のスライド、「科学技術と社会実験でイノベーションが起きる」んで、イノベーション、この、答は、規制緩和なんだけれども、僕は復興特区なんじゃないかと、具体的には今考えております。それで、下の現状で「ビジョンと移行プロセス」ここが欠落してるんですけど、ここが復興計画なんではないかと。

それを、日本でやるんではないだろうかと。本当に稀有なチャンスで、これが僕は二万の鎮魂だと思いますけどね、二万人の。

著書紹介

次をあの…、これが最後になりますが、こういう思いを私は書きました。だけど、僕は良い本だと思ってます。ところがね良い本が一万部しか売れないんですね。やっぱりねあのう、どうでもいい本が売れるんですよ。やっぱりね、180ページですから。是非先生方にはね。必要であればお送りします。お買いにならなくてもけっこうですよ。私、お送りしますので、お読みになる方は是非ご請求いただければ、お送りさせていただきたいと思います。

どうもご清聴ありがとうございました。

関連の書き起こし