たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

水野「京都大学原子炉実験所助教、小出裕章さんです。小出さんこんばんはー」

小出「こんばんは」

水野「よろしくお願いします」

小出「よろしくお願いします」

水野「そして東京には近藤さんがいらっしゃいます」

近藤「こんばんは、よろしくお願いします」

小出「はい。こんばんは、よろしくお願いします。」

水野「え…まず、5月5日の夜に北海道の泊原発が定期点検のために止まります。
    ということは日本の原発はすべて止まるという時を迎えるんですね。
    これについて小出先生のご感想はいかがでしょう」
 
小出「うん、嬉しいです」

水野「うん」

小出「ん…毎日電気というのはどんなに頑張っても使わざるをえない…わけですが、
    その一部分が原子力からきてると、いうことが
    私にと…私にとっては苦痛の1つ、でしたので。
    え…泊が止まって全て原子力の電気がなくなるというのであれば、
    大変嬉しく思います。」

水野「はい。ただですね、原発ゼロ、になったらどうなるかと、いうことを想像しますとね」

小出「はい」

水野「1つには節電…の要求は高まるでしょう。
    あるいは電気料金の値上げということも待ってるのではないでしょうか。
    そのあたりについては小出さんはどうお考えですか」

小出「はい。え…節電することはもともといいことです。
    なにかスイッチを入れれば電気がつくよ、なんでもその…
    思う通りに電気があるよと、いうような、
    そ、こと自身がおかしいとみなさん思わなければ、いけないと思いますし。
    え…私自身は常日頃から電気はなるべく使わないようにしてきましたので」

水野「ええ」

小出「せつげ…節電ということ自体はいいことだと思いますが。
    え、今現在国や電力会社は、私達が節電をしないとなにか…
    電気が足りなくなるという脅しをかけてきている、のですね。
    でもそれは全く…嘘なの…です。
    え…原子力が全部止まったとしても、
    火力発電所と水力発電所がきちんと運転できるのであれば、
    いついかなる時も電気は十分に足りますので。」

水野「はい」

小出「みなさんは節電なんてことをする必要もありませんし。
   脅かされる必要もないと、いうことをしっかりとあの
   心に留めておいて欲しいと思います」

水野「うん。ただですね、例えば今とまっている火力発電所」

小出「はい」

水野「こうしたものを再稼働させていかなきゃいけないって
   そういう必要性は出てくるんですよねえ」

小出「もちろんです。え…これまで電力会社は火力発電所の殆どを停止させてきたわけで。
   長期間にわたって動いていない火力発電所もある…のです。
   それをきちっとまた運転できるように電力会社がしなければ、いけません。」

水野「うん。ただそうした、長期間休ませていた火力発電所を再稼働させるには、
   また多額なお金が必要なんではないですか」

小出「そうですね。
   ですから電力会社…の経営が間違えていたということなのですね。
   ちゃんと火力発電所を運転して間に合うのであれば原子力発電なんて
   つくらなくてもすんだのに。火力…すでにある火力発電所を全部止めながら、
   原子力発電をやれば儲かるということで進めてきてしまった、
   え…電力会社の責任なのです」

水野「うん…。近藤さんはいかがですか?」

近藤「ん…ぼくはあのう…福島の原発の事故…直後、
   計画停電の区域に入ってたもんですから。」

水野「ええ」

小出「はい」

近藤「計画停電っちゅうのを体験してるんですが」

小出「はい」

近藤「え…なんちゅうんでしょう。わりに新鮮な時間やったですね」

小出「うん」

水野「うん」

近藤「うん、新鮮ちゅうのちょっとわかりにくいかわかりませんが。
   んーっとなんか1つ、こう、価値観というものを考えるときに、うーん、
   この、よく言いますけども、身の丈にあった日本っていうのは
   どういうことなんだろうと。そうとうあのムダな電気と無駄な時間を
   我々費やしてるんじゃないかっていう思いが、改めてその時感じましたですね。」

水野「うん」

近藤「ですから、やってみたらいいんじゃないかっていう、気持ちのほうが強いです。」

水野「はあ」

近藤「節電は。」

水野「ええ…。ただ、枝野さんはですね、
   経済産業大臣の枝野さんは、関電管内の電力不足が、社会的弱者にしわ寄せを与え、
   日本産業の屋台骨を揺るがす可能性が高い、こんなふうにもおっしゃってますよね」

近藤「あの…水野さんね」

水野「ええ」

近藤「うーん、そのへんの実態はどう捉えてるのかわかりませんが。」

水野「はい」

近藤「私は東京以上に大阪のほうが、そういう意味での節電対策っていうのは
   ショック度は大きいと思うんです」

水野「ほむ」

近藤「な、東京のほうが、規模も大きいから大きいと思う…でしょうけども。
   僕はそういうあの…電気を止めるとか計画的にそういうことに対して、
   大阪の方はもっとこう自由闊達にいろんなことをビジネス展開してきたような
   気がしましてね」

水野「うん…」

近藤「だからそういう意味であの…中小企業とかいろんなことを考えますと。
   あの、東京よりなんていうんだろう、大きいところは東京は抑えればいいんだけど
   大阪はそうでもないだろうなっていうことを思うと、ショック度は大きいと思うんです。
   うん、ですけど、まあいろんな価値判断、価値の基準をおいたときに、
   一度体験するっちゅうのも、ここは必要なんじゃないかなっていう、気がいたします」

水野「はあ…。この、節電とともに、電気料金の話も大きな課題かと思うんですね。
   え…小出さん、再稼働しない限り電気料金は上がるんだと、いう方向の話が
   政府や電力会社から聞こえてくるんですけど。これについてはどうお考えですか」

小出「ほんとにふざけた話だと思います。
   え…これまで、どの電源が1番高かったかといえば、電力会社の経営データ、
   有価証券報告書で調べる限りは、原子力発電が1番高かった、のです。
   原子力発電なんてもともと手を染めなければ、
   私達消費者はもっと安い電気で、これたはず、なのです。
   え…それを電力会社が経営判断、ま、自分がただただ儲かればいいという
   その判断でここまでやってきてしまった、のですね。
   んで、すでに建った原子力発電所が今動かせない。ということになれば
   火力発電の燃料費が必要になるという、そのこと自身は、まあ、当然そうだろうと」

水野「ええ」

小出「思います。でもそれは電力会社の、放漫経営のために生じていることなのであって。
   むしろ損害賠償を私は消費者が求めるべき、ことだと、
   そのぐらいに思ってしまい、ます。いずれにしても原子力なんて足を洗えば、
   これから長期的に見れば必ず電気料金は安くなります。」

水野「うん…ただ、そうしたあの、電力を新しい形にしていこうという、
   この、自然エネルギーですねえ」

小出「はい」

水野「この自然エネルギーを一定の価格で買い取る制度、これが7月に始まります」

小出「はい」

水野「で、自然エネルギーを増やしていこうという制度なんだろうと思うんですが。
   その買取の費用を誰が出すのかっていうと、
   これ家庭の電気料金に上乗せされるんですってね」

小出「そうです」

水野「はあ…」

小出「それは大変難しい問題、です」

水野「はぁ」

小出「私自身はもうずうっと前から発言していますが。
   火力発電所と水力発電所があればいついかなる時も電力供給に支障がないと、
   言い続けてきていますので。
   自然エネルギーを今すぐやらなければいけないという必然性はありません。
   ですから高い値段で買い取るということも、今すぐやらなければいけないかと言われると、
   私はそうではないと、思います。」

水野「ええ」

小出「ただし、いずれにしても最終的には自然エネルギーに移行せざるを得ないので。
   え…その、その間の、うーん投資と言うんでしょうか。
   え…未来への価値の移行ということで、何がしかのものをやはり
   私達が負わざるをえないということはあるかもしれないと思います。」

水野「うーん、ただこれ自然エネルギーが増えていけば行くほど
   電気料金がその分上がる、仕組みなんだそうで。」

小出「えーとそうではないと思います」

水野「へえーそうですか」

小出「はい。あの、自然エネルギーがちゃんと使えるような技術開発が進めば、」

水野「はい」

小出「え…自然エネルギーもきちっと市場で、
   え…価格競争ができるものになるだろうと私は思いますし。これまでに
   原子力に投資してきた膨大なお金をきちっと自然エネルギーに投資するのであれば、
   原子力などよりもはるかに有益な、エネルギー源にな…自然エネルギーが、
   有益なエネルギー源になると思います。」

水野「ただ、今小出さんがおっしゃったみたいに、あの、ちゃんとした公正な電力の、
   取引市場が自由に確立されるためには、もっともっと、こう、自由に電力…の、
   発送電分離など、改革が伴わないとそうはならないんじゃないですか」

小出「もちろんです。ですからこれまでは、とにかく電気事業法という法律で、
   電力会社がもう何重にも守られてきてしまって。
   ひたすら原子力さえやれば儲かるというしくみのまま来てしまい…ました。
   え…発電も送電も全部自分のものであって地域独占だという、
   たいへんその優遇された地位にいたがためにこうなってしまったんですね。
   え…もっともっと、それを自由化していって、ほんとうに必要な電気を必要なやり方で
   発電するという方向に持って行かなければいけないと思います」

水野「実は、あの家庭の電気料金に上乗せされてるのは
   原発を作るのにかかる費用も上乗せされてるんですってね」

小出「そうです。そうです。」

水野「実は」

小出「はい。」

水野「原発のある自治体などに配るお金の財源も、それも」

小出「そうです」

水野「そ、上乗せされてるんですね」

小出「そうです」

近藤「広告費なんかも入ってるんじゃないですか」

小出「そうです」

近藤「ねえ。うーん」

小出「それはマスコミを丸抱えにするため、のお金も、全部電気料金に入っています」

水野「うーん。電源開発促進税というものがあるんだそうです。」

小出「はい」

水野「これが毎月113円だと、いうことです。まあこうした仕組みが、
   今までの形のままで、結局原発ゼロの日を私たちは迎えると」

小出「はい」

水野「いうことになりそうですね」

小出「はい」

水野「はい。どうもありがとうございました」

小出「ありがとうございました」

近藤「どうも」

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