【池上彰×上杉隆】『東京ディスカッション第2章』~第二部〜我々市民とメディアのあり方【その②】

(上杉氏)で、こういう間違いを全体として皆さんも全員、神でもない限り間違いをするわけです。だってNHKが間違えても、例えば日本だと一回一回反応が大きいんですね。「NHK間違えた!あー、もう信じられない!こんなけ信じていたのに!受信料だって一杯払ってたのに。何で間違えたんだ。もうNHK見ない」と極端に振れるんです。そして朝日新聞、「天声人語で受験出たのに、あんな一生懸命英訳のつまんない記事覚えたのに、もう信じられない」となってしまうわけです。それが不健全なんですよ。また逆に、インターネットでたまたま自由報道協会の記者が書いた記事が当たってたと。「これはすごい。これこそ真実がある」と、それもまた違う。私の記事も含めて。常に間違いがあるし、当たりもある。
つまり、NHKの記事、NHKだからっていうわけじゃなくて、見方で重要なのは、「NHKのこの記事はあってましたね。この記事はまちがえてましたね。」例えば同じ水野解説員が言ったことでも、「あ、水野解説員、この前は正しかったけど、今回は違うね」ということを自分で判断する。そのためには何が必要かというと、最初に申し上げたように、『多様な情報に触れることによってそういうリテラシーの能力を自分たちで養っていくしかない』わけですね。それは、お子さんだったら教育ですけど、ここまで大人になってしまったら、よく見えませんよね。皆さん、20台くらいですか、30台くらい?40台くらい?

(池上氏)多様な人たち。

(上杉氏)もう皆さん今インターネット含めていろんな情報のツールで情報チャネルは増えてるので、そういうのでクロスオーバーさせながら、情報をクロスチェックしながら、自分はここで合理的に正しいと思うことを追えばいいんですね。人の押し付けもいらないし、人がこう思ったからこうだって横並びも必要ないですね。そういう意味での多様性っていうのが、皆さんに必要なのかなと思いますね。

(池上氏)そこが難しいんだよね。いろんな情報が飛び交っていると、一体どれが正しいんだろう?って。

(上杉氏)例えば、池上さんの本を買ったら、私の本もセットで買うとかですね。そうすると、ほら白い本と黒い本が2冊あって、「あ、世の中には白と黒があるんだ」って思うんじゃないですか?

(池上氏)そうくるかー?例えばね、原子力発電所の今回の場合でいえば、それこそ、まあ大したこと無いだろうと思う人は、ネットでも「いや、たいしたことないよ、安全だよ」というものばっかり検索してね、「ほら、専門家も大丈夫だっていってるじゃないか」っと。一方で心配な人はひたすら心配なデータばかりを集めて「ほら、。これだから心配だ、どうなってるんだろう」って。なんとなく最初に「そんな心配しなくていいよ」っていう人はどんどんそっちのほうに、「心配だ」っていう人はひたすら心配だ心配だっていう、それぞれの思考の最初の思考によって、そういう情報ばっかり集めていくんじゃないかっていう、そういう気配があるんです。

(上杉氏)確かにネットの中、特に自分からインプットするようなインターネットの報道に関してその傾向はあると思うんですね。ただ、やはり、当然ながら、それを提供するほうが気をつけなければいけないのが、例えば安全なら安全側にかたよる、危険だったら危険側にかたよるという中に自分たちで、そうはいっても、逆の方向もあるんだよっていう意見を提供する。最初言ったように、メディアがいろんな多様な意見をいって、それを分散させる作業をやるしか方法がないと思う。一元化するのが一番危険なんで、これはファッショに繋がりますし、独裁になったり、或いは間違えた時に、国民や国家に対する毀損の度合いが大きいので、そういう意味では、多様な言論でセーフティネットじゃないですが、違った時にサッと「そうだね、この前そういう意見もあったね」というふうに変えられるような材料提供が必要だと思うんですね。全くないとそれが出来ないのと、何といってもそれ一つだと、国全体で間違えた時に、取り返しがつかないことになってしまうという、過去の大本営発表も含めた日本の負の教訓もあるので、その部分を繰り返さないということが、今回の原発事故で最も大事なのかなと思いますけどね。

(池上氏)今の話で言うと、中東のカタールの衛星テレビ局、アルジャジーラ。アルジャジーラのスローガンは「一つの意見があれば、もう一つの意見もあるとにかく多様な意見を出していこう。中東の中でもさまざまな意見のそれぞれを出していこう」と、或いは、アメリカ一本、アメリカから見たニュースばっかり出るんだったら、もう一つのニュースがあるんだよ、もう一つの見方があるんだよっという形でスタートした。最近のアルジャジーラはちょっと違うじゃないかという意見があるんですが、とりあえず、初期のアルジャジーラのいろんな多様な意見を伝えていこうという、こういうことは日本でもやっぱり考えなきゃいけないっていうことですね。

(上杉氏)そうですね。もう、ほんと多様性でいえば例えば、ここに出ている方々の人たち、上のまぁ特に5人のうちの真ん中を除いた方ですね。それから、下だと左側を除いた方々は、既存メディアではよく登場するんですが、今いった西山さん、堀江さん、ゆりやまさんじ、一式さん、小沢さんっていうのは、あまり既存メディアで取り上げられてないんですよ。これがやはりフェアな言論の場を提供するっていうメディアの役割からは、逸脱してるのかなっと、つまり自分にとってマイナスな情報でも、それを提供してちゃんと議論の場として出すことが、健全なメディアなんですが、日本の場合はその辺のフェアな感覚がちょっと抜け落ちてしまっている。やはりフェアに言論のスタート台に立ってやるというのは必要じゃないかなと。それは何といっても日本の独特の記者クラブ問題っていうのがあって、そこに行き着いてしまうんですが、それはいい本があるので、どこかで読んでください。

(池上氏)ただ逆に言うと、多様な情報を伝えていこうというメディアも見てくれなければいけなかったり、書いた記事が売れないといけないという部分があるから、それこそ受け手の側が「もっといろんな意見を出せ。いろんな意見を聞きたいんだ、見たいんだ」という行動を起こすことも大事だということですね。

(上杉氏)ですね。本当に、池上彰さんの番組が今、視聴率上がってますよね。もう辞めたんですね。ずっと上がってたんですよ。本当一回くらい黒い人を出すかな?と思ったんですけど、テレビ東京以外出してくれませんでしたからね。そういう対論の意見を出してくれれば・・・

(池上氏)なんだ、言ってくれれば、ちょっと出してって・・・。
<会場笑い>
(池上氏)だってあなたがほら、干されてるって話を聞いたから、私ラジオの番組であなたを呼んだでしょ?
(上杉氏)そうです。実は池上彰さんが最初に呼んでくれたんです。記者クラブ問題も、今嫌がってますけど、
(池上氏)嫌がってないよ。

(上杉氏)記者クラブ問題と、官房機密費を唯一大手メディアで取り上げてくれたのは池上さんで、しかも勇気のあることに、???ですかね、ラジオ番組で最初に記者クラブ問題しゃべっていいよって、もう4年、5年くらい前でしたっけ?それくらい前に最初に呼んでいただいたんです。好き勝手しゃべってしまって、「これはもう池上さんも終わったな。NHKでやっとフリーになって独立して、フリーランスの生活とか人生あるのに、なんでよりによって」と心の中で思ってて聞いたんですよ。
「池上さん、僕出したら干されますよ?」
って。言ったら、
「いや、NHKでも干されたようなもんだから」
って、本当のことを言ってしまって。

(池上氏)笑
(上杉氏)それも、あっという間に本は何十万部とか・・・
(池上氏)まぁまぁ、そういう話は・・・
<会場笑い>

(池上氏)単なる嫌味としか聞こえないので、やめておきましょう。
実は、今日のディスカッション、皆さん疑問に思いませんでした?『東京ディスカッション第2章』ってなってるんですよ。「何で『第2章』なんでしょう。第1章っていつだよ?」とこういう話なんですよ。
実は、そもそもこの東京青年会議所がですね、東京都知事選挙の時に、都知事選挙に出る候補者の人たちを、皆集めて討論し、そこでまさに誰に投票するかという多様な情報を提供しようと考えたんです。それが、第1章で、その司会をやってくださいっと最初に私が頼まれて、「よし。これを受けとけば、俺が都知事選挙に出るなんていうデマを抑えることが出来る」と思って受けたら、3月11日のあんな事態が起きて、予定がずずずとずれてしまって、結局私が出られなくて、上杉さんにお願いをして・・・

(上杉氏)コーディネーターは白が駄目なら黒というですね、JCの安易な考えがこういう結果をもたらしたんです。

(池上氏)で、それが第1章で、盛り上がったんですが、なんか一人出てこなかった人がいたんですよ。

(上杉氏)そう。現職の石原慎太郎さん、出てこなかったんですね。やはり、これも池上さんがおっしゃったように、やはり言論を戦わせないと、投票する800万の都民が、わからないわけですよね。自分たちの都のトップのリーダーを選ぶ選挙で現職が出てこない。結果としてその人が勝ってしまいますけど、その辺がちょっとフェアな公平な言論の部分で、ちょっとマイナスだったかなと。
(池上氏)はい。で、そこに果敢に取り組んだ吉田さん、吉田理事にちょっとその辺の話をお伺いしようと思います。

(吉田氏)はい。再び登場させていただきました。先ほど申し遅れましたが、本年度社団法人東京青年会議所で理事を務めます、吉田でございます。
本当にその節はお二人ありがとうございました。これがその時の様子なんですね。今回の都知事選挙については、震災の後の社会が大きく混乱した異常な中で行われたと思っています。他の区長選挙ですが、東京都では23区でいうと、14の区で選挙が行われました。実はそのうち13の区が現職が当選。世田谷区だけが新人のみの候補であったというところでした。そのあたりの結果も含めて、上杉さん、池上さんは、今回の統一地方選挙、どのように評価されてますか?

(池上氏)上杉さん、これやってみてどうでしたか?

(上杉氏)いや、この場でも最後に言ったんですが、今選挙やるべきじゃないんじゃないかと言ったんですね。というのも、。3月の11日震災直後の4月の8日投票かな。選挙期間中は完全に震災直後なんですよ。となると選挙勝つrどうというよりも震災対応で自治体含めて全部出てしまうと。さらに東京都はですね、東北への最大の後方支援基地なんですね。にも関わらずその中で選挙なんか出来るわけがないと。これは、他の法案も含めて総務大臣が残念ながらOKしてしまいましたが、半年とか3ヶ月延ばさないと、海外から復興だボランティアだと入ってるのに、日本に入ったら選挙やってるって言ったら、「何かんがえてんだ?」となりますよと言ったんですが、それは法律で決まったのでしょうがないんですが、やはり根本的にはやるべきじゃなかったと思いますね。

(吉田氏)そうですよね。実は私ども東京青年会議所も、同じ思いを持ちました。ちょうど法案が通った日ですね、私も東京都の選挙管理委員長と、また片山総務大臣のほうに今回の選挙は延期をすべきであると、そんな申し入れをさせていただきました。それが池上さんはどのように評価されてますか?

(池上氏)実は、その時に、とにかく候補者全員に出てきてほしい、そこで議論を戦わせてもらいたい、日本の公職選挙法って、非常に不思議なもので、公示後ですと、いわゆる立会い演説会ってできないんですよ。で、昔はやっていたんですけど、私も小学生のころ、立会演説会を聞きにいったことがあるんですけれど、今はそういうことができなくなっちゃって、公示の前にぎりぎりに日程を選択した。それがそもそも変な話なんですが、そこで全員に出て来てもらって、そして、当選した都知事と若者たちの意見交換会を7月6日にやってくださいと言われて私はそれをセットで受けて、だから今日実はここにいるんですよ。

(上杉氏)ってことは、私は都知事の代わりっていうことですか?
(池上氏)そういうことですね。
<会場笑い>

(池上氏)3月23日のこの司会が水際立っていたので、今日も呼ばれたということですよ。
(上杉氏)ついで感があって、いつもと同じで心地よい感じがしますけれども。
(池上氏)はい。
(上杉氏)じゃぁ都知事は来なかった?今回も?
(池上氏)今回もここに来てくださいというお知らせはしたんですか?
(吉田氏)はい。今回も当選が決まった4月の11日の翌日にはアプローチといいますが、ご依頼はしていたんですけれども、残念ながら、この場にはお越しはいただけなかったということなんです。
(上杉氏)本当はサプライズでその辺に座っているんじゃないですか?絶対暇なはずですからね。
(池上氏)出席しないという理由か何かは、知事公室から返事はありましたか?
(吉田氏)いえ、特にその辺の明確な回答はいただくことはできませんでした。
(池上氏)嫌われているんですか。
(吉田氏)どうなんでしょう?

(上杉氏)なんか99年の東京都知事選挙、私、鳩山邦夫さんの秘書で当時石原さんと戦う側に居たんですが、そのときも東京JC主催の公開討論会に出たんですよ。ただ2003年のときに何かもめて、2007年からは出てこないと。もめてはいないんです、何か一方的に石原さんがみえなくなったという、だから吉田さんのせいじゃないと思います。諸先輩方が悪いと思います。

(吉田氏)なるほど。ちょっと次のスライドを用意しています。
(上杉氏)しゃべっちゃいけなかったですね。

第二部【その③】へ続きます。

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