【編集部注・2026年3月更新】プログラマー・書評家の小飼弾氏とチームラボ代表の猪子寿之氏の対談(第1部)の書き起こしです。
同じ技術畑でも、「エンジニア」と「テクノクラート」は違う
技術の世界ではトップがフライングする勇気を持つのも大切と力説する猪子氏
猪子 昔は日本にも、「オレはこれがやりてーんだ」って突っ走っちゃうボスがたくさんいましたよね。本田宗一郎さんとか。どうしても飛行機が作りたい!って。ロボットだってそう。
小飼 そこで取り巻きが「ROI(投資収益率)はいくらなんでしょうか?」とか言い出しても、聞く耳を持たなかったでしょうし。
猪子 宗一郎さんには、取り巻きが何言ってても、「ウルセー!」みたいな感覚があったんだと思う。「今の時代はプロの経営者が必要だ。グーグルのエリック・シュミットを見ろ」とか言う人もいるけど、違うと思うんすよ、僕。シュミットだって、ファーストキャリアはサイエンティスト、しかもスーパーサイエンティストですよ、って。アップルを見たって、スティーブ・ジョブズが優秀なプロ経営者かというと、ちょっと違いますよね。だから、ビジネス側の人がリードする時代って、もうとっくに終わってんじゃん、って。
小飼 ジョブズの役割は2つある。1つは、自分よりも優秀な人を集めてくること。もう1つは、そういう人たちに対して「これ、オレは欲しくないね」と言うこと。
猪子 アートディレクターというか、クリエーターというか。
小飼 アップル製品の最初の客だね。
猪子 任天堂だってそうですよ。岩田(聡社長)さんはプログラマー出身だし、宮本(茂専務)さんはクリエーター。今、世界で突き抜けたものを作ってるところって、MBAを取った経営者が社長をしているような会社じゃない。グーグルにしても任天堂にしても、技術者とかクリエーター出身の人が決定権を持ってる。アップルも、ここに含めていいと思うし。
小飼 決定権を持つ人が技術畑の出身だとしても、エンジニアとテクノクラートは違うしね。
猪子 ん、てくのくらーと? 何ですか、それ。
小飼 「技術をやりたい人」がエンジニアで、「技術でやりたい人」がテクノクラート。
猪子 んんっ、ちょっと分かんないっす。もっと詳しく聞かせてください。
小飼 じゃあ、こう説明すれば分かるかな? ユーザーとか外部に直接接しているのがエンジニアで、組織の中間にいるのがテクノクラート。エンジニアはとにかく作りたがるけど、テクノクラートは「そんなの作れっこない」ってすぐに頭で考えちゃう"技術官僚"なんだな。
で、エンジニアが勢いで作ったものが大ヒットしたりすると、テクノクラートは「オレらが『ビジネス』にするからこっちによこせ」とか言い出す(笑)。『i-mode』なんかがそうだね。
猪子 へぇー、何となく分かったような......。
技術をベースにする人でも、テクノクラートは「革新を生まない」と小飼氏は言う
小飼 組織には、実はどちらも必要な人たちなんだけどね。特に、大きな組織はテクノクラートがいないと動かなくなったりする。
猪子 でも今は、イッちゃってるエンジニアが引っ張る会社が、すごいことやるケースが増えてんじゃないですか。Hondaとかソニーが伸びてた時代も、そうだったと思うし。井深(大)さんはもちろん、盛田(昭夫)さんだってエンジニアリングのバックグランドを持ってますからね。
マイクロソフトも、ビル・ゲイツがトップだったころの方がすごかった。みんな「それは時代が変わったから」とか言ってるけど、それだけが理由じゃない気がする。
小飼 僕も、ゲイツがいなくなったことがこれほど大きなことだったのかと、今さらながら思います。ただ、いろんな人に話を聞くと、マイクロソフト社内では前からスティーブ・バルマーの方が圧倒的に好かれていたし、リスペクトされていたらしい。あくまでも周辺情報だけど。
猪子 組織がオトナになった、ってことなんですかね。で、オトナになったら、アップルに抜かれた。さっきのエンジニアとテクノクラートの違いみたいな話だけど、会社とか集団には、「修復する力」と「ぶっ壊す力」の両方が必要なんすよ。で、今はどっちが先導すべきかと言えば、ぶっ壊す力を持った人だと思うんです。
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